30年続く関係性を生む「勝利を願うコミュニティ」- 鈴木副社長に聞く鹿島アントラーズ流パートナーシップ論 -
こんにちは、セールスディビジョン企画グループの武政です。
日頃より鹿島アントラーズを熱く応援いただき、また日々の私たちの取り組みに関心をお寄せいただきありがとうございます。
前回の投稿では、独自に集計した「オフィシャルパートナー平均継続年数22年」「20年以上継続率64.3%」というデータをご紹介しました。
投稿後、予想をはるかに超える大きな反響をいただき、大変驚いているとともにうれしく思っています。記事を読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!
記事内では、アントラーズ独自のパートナーシップ構造や、地域社会と価値を共創するというクラブの姿勢についても考察しました。
ただ、どれだけデータを並べて考察を重ねても、30年という歴史の重み、そしてその場に立ち続けてきた当事者の生きた言葉がなければ、本当の答えには辿り着けないのではないかーー。そんな想いが当初よりありました。
なぜこれほどまでに深く、長く、パートナー企業様はともに歩んでくださるのか。その核心に迫るべく、今回はクラブの創設期から事業面を最前線で支え続けてきた、私の上司でもある副社長・鈴木秀樹へのインタビューを敢行しました。

同じクラブハウスにいるからこそ聞ける、数字やデータだけでは説明しきれない「鹿島の哲学」を紐解きます。
1. 既成概念への挑戦で貫いた「直接対話」

武政:
今日はよろしくお願いします!

鈴木:
よろしくお願いします。

武政:
今回データを分析して純粋に驚いたのですが、鹿島アントラーズのオフィシャルパートナーの平均継続年数が22年、20年以上継続している企業が6割を超えているという、他クラブと比較しても突出したデータが出ました。
率直にこの数字を見たとき、真っ先に思い浮かんだパートナー企業やエピソードはどのようなものでしたか?

鈴木:
やはりLIXILやイエローハット、サントリーなど、長年ご一緒しているパートナー企業の顔が浮かびますね。そして、なぜこれほど長く続くのかと考えた際に、それはシンプルに『人との付き合い・コミュニケーション』を何より大事にしてきたからです。それがアントラーズのパートナーシップの哲学の根底にあります。

武政:
なるほど。いずれの企業も30年近く続くお付き合いですね。
『人との付き合い』や『コミュニケーション』を大切にされてきたとのことですが、具体的にどのようなことにこだわってきたのでしょうか?

鈴木:
鹿島アントラーズは地方都市のクラブであり、マーケットが小さいという決定的に不利な状況からスタートしています。だからこそ、クラブの経営を安定させるためには、スポンサー収入の柱を、太く、深くしていくしかなかったんです。そして、そのために我々が下した最も大きな決断の一つが『代理店を介さない』ということでした。

武政:
代理店を介さない、ですか。
想像ですが、当時は今よりもさらに、代理店を通して契約するのが一般的だったのではないでしょうか?

鈴木:
その通り、30年前はスポーツビジネスにおいて代理店が入ることが今と比べて当たり前の時代でした。しかし、間に代理店が入ると、どうしてもクラブとパートナー企業でお互いの顔が見えにくくなり、フィルターがかかってしまいます。
勘違いしてほしくないのは、代理店が悪いという話ではないということ。良い部分、悪い部分があるということです。
私たちが何のためにこの地域でプロスポーツを始めたのか、将来どんなクラブを目指しているのか。そうした『クラブの想い』を真っ直ぐにパートナー企業へ伝えるためには、お互いの顔を見て直接対話することが不可欠だったのです。
だからこそ、代理店をなくしたかった。もしくは、ファミリーの一員として巻き込みたかったんですよね。

2. 「なぜ勝てないんだ!」企業に呼び出され告げられた予想外の言葉

武政:
代理店というフィルターをなくして直接対話にこだわったことで、パートナー企業との日々のコミュニケーションにはどのような変化が生まれたのでしょうか?

鈴木:
担当者同士の顔が見えない状態では、企業同士を繋ぐことも難しくなります。しかし我々は、クラブがハブとなって直接対話を重ねることで、A社とB社、さらに異業種のC社、D社とが繋がる『アントラーズファミリー』というコミュニティを時間をかけて少しずつ作り上げてきました。

武政:
企業同士が繋がる異業種のコミュニティが形成されると、企業側のクラブに対する見方や期待も変わってくるものですか?

鈴木:
大きく変わります。単なる『広告価値』への投資から、『純粋にアントラーズに勝ってほしい』『勝つことでみんなで喜びを分かち合いたい』という感情へと変わっていくのです。

武政:
それは大きな違いですね。コミュニティができると、広告価値ではなくクラブの『勝利』に焦点がいくようになると。

鈴木:
そう、大きな違いです。これはかなり昔の話になるけど、チームが数年間勝てない時期がありました。普通なら『費用対効果が合わない』と言われてもおかしくない。しかしそのとき、複数のパートナー企業が自発的に集まって我々を呼び出し、「なぜ勝てないんだ!我々に何かできることはないか?』と本気で心配してくれたんです。これこそが、長い時間をかけて築き上げてきた、アントラーズファミリーとしての強固な関係性だと思います。

武政:
単なる広告主・協賛企業という立場からではなく、ファミリーの一員としてクラブの状態を本気で心配してくださるのはすごいことですね。そういえば、以前noteでも紹介したパートナー企業向けのパートナーゴルフコンペやフットサル大会なども、数十年続いているアクティベーションだと聞きました。

鈴木:
そうなんです。例えば、宮崎キャンプへの激励ツアーは数名のパートナー企業担当者たちが自発的に集まったことから始まり、その後数十年続くアクティビティになっています。それは企業の担当者が異動になっても、後任者が参加できるコミュニティとして残り続けていて、アントラーズをハブとした独自のネットワークが形成されています。

3. 変わるパートナーシップの形と、変わらない鹿島の哲学

武政:
世の中の動きとして、短いサイクルでパートナーを切り替えて単価を上げていくという手法を取る組織も出てきています。
これからの時代、アントラーズのパートナーシップはどう変化していくべきだとお考えでしょうか?

鈴木:
正直なところ、クラブがアジアや世界で戦い、価値を上げていくためには、グローバルなフットボールのトレンドに合わせて我々も変化していく必要があります。クラブのリソースを考慮し、ときには契約を短期間で見直したり、単価の引き上げを要求していくことも求められるかもしれません。これまでの想いがある中でも、時代の変化に対応していかなければいけないというジレンマは間違いなくあります。

武政:
時代に合わせて、柔軟に舵を切る部分も必要になってくる、ということですね。

鈴木:
これまでと同様に『想い』は大事にしつつ、『変化』をしていくことも重要になると思っています。時代が違い、人が違えばアプローチが変わってくるのは当たり前のことですからね。

武政:
『想い』を大事にしつつ『変化』していく。でも、根底にある『人との付き合い』の歴史は、これからもクラブの確固たる基盤になりますね。

鈴木:
そうですね。Jリーグ発足当初、知名度もなかったアントラーズのセールスは、どこへ行っても断られる厳しい状況からのスタートでした。だからこそ、あえて『業界2番手』の企業様に飛び込みでアプローチし、一度お付き合いいただいた後にチームが強くなることで、共に成長し、確固たる信頼関係を築き上げてきた歴史があります。

武政:
なるほど。逆境から直接対話で切り拓いてきたパートナーシップの歴史ですね。では最後に、私も含めたクラブの若手セールス担当者に向けて、これからの時代も絶対に変わらない『鹿島アントラーズのセールス哲学の本質』を一言で伝えるとしたら何でしょうか?

鈴木:
『看板の価値ではなく、クラブの価値を語れ』ということです。
紙切れのカタログを持って、広告枠を売りに行くような営業はしてほしくない。クラブの歴史や、地域課題の解決といった地域との強い繋がりを含め、『アントラーズというクラブのポテンシャル・価値そのもの』を自分の言葉で語れるようになること。代理店を通してでは決して語ることのできない『想い』を自らの言葉で伝えられることこそが、鹿島アントラーズのセールスの真の強みだと考えます。
まとめ
「看板の価値ではなく、クラブの価値を語る」
インタビューを終えて、この言葉が強く印象に残りました。
スポーツビジネスにおいても「アジャイル」や「入れ替えによる見直し」といった手法がひとつの選択肢となるなかで、鹿島アントラーズとパートナー企業の歴史が証明したのは、それとは異なるアプローチでした。
多くのパートナー企業が長い歴史を超えてなお、アントラーズとともに歩み続けてくださる理由。それは、私たちが単にロゴを露出する媒体に留まらない、地域の課題解決や価値創造を実現できるクラブであること。
そのことは前回投稿時に推察していたものの、結局はそこに至るまでの過程において「直接対話」や「コミュニティ」がいかに大事かということ、そして何よりも「クラブの価値そのものを語れる」セールスパーソンになることが必要だということを学びました。
分析・リサーチという定量的なアプローチをおこなった前回の投稿、そして、インタビューという定性的なアプローチを試みた今回の投稿、その両方を通じて、私はパートナー企業とクラブスタッフの先輩方が30年以上かけて築いてきた「パートナーシップ」の本質に少し触れた気がしました。
鹿島アントラーズは、協業型のパートナーシップに基づいた権益提供・アクティベーションを通じて、ステークホルダーの皆様に対して価値を提供してまいります。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
