なぜ鹿島アントラーズのパートナーシップは長く続くのか?-「平均継続年数22年」のファクトと背景考察 -
こんにちは、セールスディビジョン企画グループの武政です。
日頃より鹿島アントラーズを熱く応援いただき、また日々の私たちの取り組みに関心をお寄せいただきありがとうございます。
私は現在、クラブのパートナーシップの価値をデータ・リサーチの側面から可視化し、クラブのセールス環境の土台を支える役割を担っています。日々さまざまなデータやマーケットの動向と向き合うなかで、これまで私たちクラブと共に歩んでくださる企業様との「パートナーシップ」というものが、実はスポーツビジネス界において極めてユニークな特徴を持っていることに気づかされました。
その事実や裏側にある背景を、鹿島アントラーズというクラブを好きでいてくださる皆様や、広くスポーツビジネスに興味関心を持ってくださる皆様とも共有したいと思い、このnoteを書くことに決めました。
不定期ではありますが、これから複数回に渡りさまざまなテーマで投稿していく予定ですので、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
今回のテーマは「パートナーシップの継続年数」です。
私自身、クラブに携わったのはここ数年の出来事ですので、クラブの歴史のすべてを語れるわけではありません。しかし、だからこそ客観的なリサーチャーの視点から感じるユニークさをフラットな目線で示しつつ、独自の集計から見えてきたリアルなデータも利用しながら、以下のような構成で紐解いていければと思います。
1. クラブ史上最高売上到達:成長を牽引するパートナー収入
鹿島アントラーズは2025年度、日々クラブを応援して下さるファン・サポーターやパートナー企業の皆様のお陰もありクラブ史上最高売上となる82億円に到達しました。ACLで優勝しクラブW杯でも4位となった2018年の73億円というこれまでの記録を更新した形です。

そして、コロナ禍を経てチケット収入やグッズ収入も伸長するなか、クラブ全体の成長を力強く牽引したのは各パートナー企業様とのパートナーシップ契約・協賛金に基づくパートナー収入です。
2025年には33億円の売上に到達し、これは全体収入の41%に相当します。2015年対比で179%(+14.6億円)の成長を実現、これまでの最高売上年度だった2018年との対比においても、内訳項目別でトップの成長率となる154%(+11.7億円)の成長を記録しています。

こうした数値を見ると、リサーチャーとして気になってくるのが「いかにしてパートナー収入の成長を続けることができたのか」という点です。
独自のデータ分析から、その成長を支える他クラブとの顕著な「構造の差」が浮かび上がってきました。
2. 成長を支える構造:驚異のオフィシャルパートナー平均継続年数
近年のプロスポーツビジネスにおいて、パートナーシップのあり方は劇的に変化しています。唯一の解があるわけではないという前提の元、かつてのような「一度結んだら数年間は自動更新」という固定的な長期契約一辺倒から、近年は明確なトレンドとして「契約期間の短期化」および「短期契約(スポット契約)の戦略的活用」が進んでいます。
企業側があえて期間を絞った契約を選択するようになった背景には、主に以下の4つのビジネス環境の変化があると考えます。
①「データ(ROI)重視」への転換と柔軟性の確保:
曖昧な認知向上から「顧客獲得への投資」へと変貌し、成果が出ない場合に即座に方向修正できるよう1〜2年の短期契約でテストするアプローチが増加。
② 企業のマーケティング・サイクルの高速化:
新サービス発表などに焦点を当てたスポット協賛のニーズが高まり、数カ月〜1年単位でアジリティ(俊敏性)を担保したスタイルが増加。
③ デジタルアクティベーションの台頭:
主戦場が物理的看板からSNSやアプリへ移行し、数週間単位でトレンドが変わる特定のキャンペーン期間だけ権利を求めるケースが増加。
④ 経済の不確実性とリスク回避:
市場予測が困難な現代において、業績悪化時に備えて契約期間を短く設定したり、毎年見直しができる状態にすることを重要視する企業が増加。
これらのビジネス環境の変化を受け、権利を売る側のプロスポーツ組織・クラブ側も、短中期のサイクルでパートナーを入れ替えながら、その時々の市場価値をリアルタイムに価格へ反映させ戦略的に契約金をアップセル(単価向上)させていく手法をとる組織が国内外増えてきたように思えます。
こうした「パートナーの回転数」を重視する手法は、現代的な正攻法の一つといえるかもしれません。
ですが、「入れ替えと見直し」によってクラブの価値を高める手法があるなかで、データを詳しく分析していくと鹿島アントラーズはそうした手法とは一線を画す、非常にユニークなパートナーシップ構造を持っていることが分かりました。
その構造というのが、本note冒頭でもテーマとして述べた、鹿島アントラーズを支えてくださるオフィシャルパートナー(クラブのトップパートナーの呼称)の継続年数についてです。
そしてリサーチの結果、クラブのオフィシャルパートナーにおける平均継続年数は、なんと「22年」に達することが分かりました。

Jリーグが開幕した1993年から約30年以上もの長きにわたり、クラブと共に歩み続けている企業だけでも、その割合は全体の約4割を占めています。
このデータを見て、私は「これほど長い間、パートナー企業に支えられてきたのか。」という驚きがあったことは勿論なのですが、それと同時に「他のクラブでも同じように長く続いているのか?それが普通なのか?」が気になり、調べてみることにしました。
ただし、情報を公開していないクラブが殆どだったため、オンライン上でトップパートナーの契約年数をリサーチ・確認できたごく少数のクラブをピックアップし、鹿島アントラーズを含むクラブ間で比較・分析を独自に試みました。

他クラブと比較した相対的な分析でも鹿島アントラーズのパートナー継続年数は長く、「20年以上継続している企業の割合」を算出するとその特異性は一目瞭然です。
鹿島アントラーズでは、オフィシャルパートナーシップを結んだ企業の3社に2社が、20年以上にわたって一度も「降りることなく」、共に歩み続けてくださっているのです。
スポーツビジネスにおいて、この「継続年数の長さ」はクラブ経営に計り知れない安定をもたらします。パートナーの入れ替わりが激しい場合、毎年のように新規営業へ多大なリソースを割く必要がありますが、基盤がこれほど強固であれば、クラブは目先の資金繰りに一喜一憂することなく、中長期的な強化や投資にリソースを集中させることができます。
3社に2社が20年以上残るというデータは、単なる「情」や「お付き合い」という言葉では片付けられない、ビジネスとしての圧倒的な信頼の積み重ねと、確かなメリットが双方にあることを意味しています。
3. なぜ鹿島アントラーズのパートナーシップは長く続くのか?
では、なぜ鹿島アントラーズのパートナーはこれほどまでに長く、深く、クラブと共に歩んでくださるのでしょうか。
リサーチャーとしてこの数字の背景を覗いたとき、その答えは、アントラーズのパートナーシップが単なる「露出(認知獲得のための広告)」の域を超え、地域の課題解決や価値創造にまで深く根を張っているからだと私は考えました。
クラブが大切にしているパートナーシップの価値観については、以前執筆したnote記事『パートナーアクティベーションのご紹介』の「1. 鹿島アントラーズの『パートナーシップ』について」というセクションでも触れました。
そこでも綴ったように、私たちはパートナー企業様を単なる「広告主」ではなく、共通の価値観を持って共に歩む「ファミリー」として捉えています。企業の業績や景気の波によって左右されやすい「看板広告」という表面的な関係ではなく、クラブと企業が手を取り合い、地域社会に対して本質的な価値を一緒に生み出していく。この価値観が土台にあるからこそ、これほど強固な関係が維持されるのです。
このパートナーシップのあり方を具現化している事例の一つが、オフィシャルパートナーの昭和産業様との取り組みです。
2014年から始まった「食育キャラバン」は、今年で13年目を迎えました。12年間に延べ140回の講義を通じて、11,400名以上の子どもたちに「食の大切さ」を伝えてきました。

一過性のプロモーションイベントではなく、10年以上の歳月をかけて地域の教育インフラの一部として定着させる。こうしたクラブと企業による共同の取り組みこそが、単なる広告主と媒体という関係性を超え、他では替えのきかない強固な絆をもたらしているのではないでしょうか。
企業のサステナビリティーやESG戦略、パーパス経営が重視される現代において、このように地域へ深く根を張り、社会的な価値を共創するアセットは、簡単に解約できるものではありません。昭和産業様をはじめとする長期パートナーの皆様とは、いわば「地域の未来を共に創る運命共同体」としての歴史を共有しているからこそ、長く、深く続いているのだと考察しています。
4. まとめ
では、なぜ「鹿嶋」という決して人口の多くない地方都市をホームタウンとする地で、これほど濃密な関係性を築き上げることが可能だったのか。単なる美談ではない、ビジネスとして成立させている要因は何なのか。
その問いの答えを探るべく、私はクラブの創設期からセールス・事業面を最前線で支え続けてきた、一人の当事者に話を聞くことにしました。同じクラブハウスで日常的に活動するなかで、あらためてその思考の源泉に直接触れてみたいと考えたのです。
話を聞くのは、私の上司でもあり、セールスディビジョンを管掌する鹿島アントラーズFC取締役副社長の鈴木秀樹。

今回の分析データが示した「パートナーシップの継続年数」というファクトの重みを、最前線に立ち続けてきた彼はどのように捉え、どんな信念を持ってパートナー企業と向き合ってきたのか。30年以上にわたり対話を続けてきた当事者の視点には、数字やデータだけでは説明しきれない「鹿島の哲学」が隠されているはずです。
次回の投稿では、鈴木副社長へのインタビューを通じ、年間売上82億円の経営基盤を支えるパートナーシップについて、そしてデータが示した「継続性」の核心に迫りたいと思います。
鹿島アントラーズは、協業型のパートナーシップに基づいた権益提供・アクティベーションを通じて、ステークホルダーの皆様に対して価値を提供してまいります。
鹿島アントラーズのパートナーシップやアクティベーションについてご質問やご興味がありましたら、下記のフォームからお気軽にお問い合わせください!
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
