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がんは将来、制御性T細胞で治療できる?! 

前回はノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文特任教授の著書『免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか』の要約記事を書きました。

ノーベル賞受賞の大きな理由の一つとして「がん治療への応用可能性」が挙げられています。

坂口氏は「免疫応答を抑制する仕組みの発見」が、自己免疫疾患やがんなど免疫が関わる病気の予防や治療につながると評価された。

科学技術振興機構サイエンスポータル2025.10.15より引用

坂口氏本人も「がんは治せる時代に必ずなる」と受賞後の会見で語っていました。

がんは単に免疫力が低いから進行する病気でないのです。

本来、体内では毎日、がん化する細胞が生まれていますが、免疫によって多くは排除されています。
T細胞ナチュラルキラー細胞(NK細胞)が異常細胞を攻撃しているのです。

それでもがんが進行するのは、免疫が働いていないからではなく、免疫が抑え込まれている場合があるからです。
その抑制の中心にいるのが制御性T細胞です。

がんは将来、制御性T細胞で治療できる?!→
とても分かりやすい制御性T細胞とがんとの関係の解説動画がありましたので、紹介します。→
坂口氏でなく、国立がん研究センターの動画です。


A.がんは将来、制御性T細胞で治療できる?!

1.免疫とがんの関係

免疫は本来、がん細胞非自己に近い異常細胞として認識し、排除しようとします。
これを免疫監視と呼びます。
しかし、がん細胞は生き残る過程でさまざまな工夫を獲得します。
抗原を目立たなくしたり、免疫抑制物質を分泌したりして、攻撃を逃れます。
その結果、免疫とがんは攻撃と回避を繰り返す関係になります。

がんが臨床的に問題となる段階では、すでに免疫が十分に機能できない環境が形成されています。
その重要な要素の一つが、がん内で増加する制御性T細胞です。

2.がん組織に集まる制御性T細胞

がんの内部や周囲に制御性T細胞が多数存在しています。
制御性T細胞は本来、免疫の過剰反応を抑える細胞ですが、がん内では次のように作用します。

  • がんを攻撃するT細胞の増殖を抑制

  • 抑制性サイトカインを分泌(炎症を弱める)

  • 抗原提示細胞の活性を低下

その結果、がんは免疫が働きにくい環境となります。
がん内の制御性T細胞が多い患者ほど予後が悪いという報告もあり、制御性T細胞はがんの免疫回避に深く関与しています。

3.制御性T細胞のブレーキを緩める治療戦略

がん免疫療法では、免疫のブレーキをどのように外すかが重要です。

 a.CD25など制御性T細胞の表面分子を標的にした抗体療法

制御性T細胞はCD25という細胞表面の分子を多く持っています。
この分子を標的とする抗体を用いることで、制御性T細胞を選択的に減少させる、あるいは機能を弱めることが可能になります。

ただし、CD25は通常のT細胞にも存在するため、がんを攻撃するT細胞まで抑えてしまう危険があります。
そのため、投与量やタイミングの最適化が重要になります。

 b.PD-1やCTLA-4を阻害する免疫チェックポイント阻害薬との併用

PD-1CTLA-4は、T細胞の抑制分子です。
これらを阻害すると、T細胞の攻撃力が回復します。

制御性T細胞もCTLA-4を多く持っているため、チェックポイント阻害薬制御性T細胞の抑制機能を弱める効果も持ちます。
結果として、抗がん免疫が強化されます。

しかし、同時に自己免疫性の副作用が起こりやすくなるため、免疫の過剰活性化とのバランスが課題となります。

 c.がん局所に限定して制御性T細胞を抑える方法

全身の制御性T細胞を減らすと、自己免疫の危険が高まります。
そこで、がん局所に限定して制御性T細胞を抑制する戦略が検討されています。

例えば、がん内に直接薬剤を投与する方法や、がんに特異的な分子を利用して制御性T細胞を選択的に標的化する方法です。
これにより、全身の免疫バランスを保ちながら、がんのみでブレーキを緩めることが可能になると期待されています。

4.抑えすぎの危険性

制御性T細胞は、がんにとっては都合のよい存在になることがありますが、全身にとっては不可欠な守護者です。
過度に抑制すると、自己免疫疾患重篤な炎症が生じる可能性があります。

実際、免疫チェックポイント阻害薬では自己免疫性の副作用が問題となっています。
したがって、治療では「どこまで抑えるか」という精密な調整が極めて重要です。

5.がん免疫療法の未来

今後の方向性は、制御性T細胞を完全に排除するのではなく、一時的・局所的に排除することです。
さらに、がんの種類や進行度によって制御性T細胞の役割は異なるため、患者ごとの免疫状態に応じた個別化治療が鍵となります。

制御性T細胞は「免疫の守護者」であると同時に、「がんの味方」にもなり得ます。
がん治療の進歩は、制御性T細胞の二面性をいかに精密に制御できるかにかかっているのです。

B.制御性T細胞とがんの関係についての解説動画

制御性T細胞とがんの関係についてやさしく解説した動画がありましたので、紹介します。(解説者は坂口教授ではありません)

国立がん研究センター公式チャンネル
がんと免疫の仕組み:制御性T細胞の役割をやさしく解説【国立がん研究センター 研究所】

本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断、治療、予防を目的とするものではありません。
体調に不安がある場合は、医師等の専門家にご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は3月5日(木)午前10時です。
免疫チェックポイント阻害薬についての記事です。
少しでもご参考になれば、スキを押して下さい。

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