思い出呼び覚ます、スープの果てに。
オリーブ・グリーンの絵画を見つめ、私はジャガイモを口の中に入れた。
隣の男性は目を閉じて、口を風船のように膨らませる。フオッォ、フォッォの不思議な音色を奏で、彼は対面の友人に笑顔を送った。友人は一口サイズのジャガイモをフォークで一突きする。ジャガイモを天へと導き、ランタンのアプリコットの光を重ねる。甘い香りがジャガイモを包み込み、彼はふぅーと囁きかけてから口の中で感触を確かめた。
彼の唇と潤んだ瞳が私に問い掛ける。ラピスラズリに輝く瞳の中に、星屑の空のもとで語り合った日々を私は思い出す。二つのジャガイモの呼吸は、一つしか聞こえない。チョコレート色の皮は、私の口の中で矛盾の香りを広げていく。
「もしよければ、お茶はいかがかしら。」
私の妹が彼にアールグレイの紅茶を手渡す。私たち双子は髪も性格も、趣味も特技も正反対だ。シルキーホワイトのボブヘアは金木犀の笑顔を彼に届ける。四人掛けのテーブルは砂色から新たな色彩に変化する。
「おかわり、ほしいです。」
彼の友人が笑顔を遮る。天然パーマのブロンズヘアを人差し指でクルクルいじりながら、妹を見つめていた。彼に渡すはずだった紅茶を、彼の友人に手渡す。指先が重なり、互いの体温を交換する。オリーブ・グリーンの部屋の壁紙のように洗練された、端正な顔立ちが新たな香りを作り出す。ペパーミントの爽やかな香りが金木犀をのみ込んでいく。
フォークを持つ指と、紅茶を持つ指は重ならない。
トポン……。トポン……。
カララン、ラン……。
五人目が扉を開く。ジャガイモと、我々の指先を見つめていた。
トポン……。トポン……。
カララン、ラン……。
そして、私はもう一度、絵画を見つめる。
フィンセント・ファン・ゴッホ作の『ジャガイモを食べる人々』に、二十年前の記憶を、心を重ねる……。目の前のポトフの一口すすり、忘れた感情を
一つ、また一つと取り戻していく。頬を伝う雫はポトフに溶け込み、カナリア・イエローの夕焼けを映し出す。私しかいない席に、あなたを見つめて……。
「最近、花が咲くだけで泣いちゃうよ。」
ジャガイモの香りは、感情のスープとなって。
