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文系の私がAI基礎の資料を作るとき#14:コンニチワ、アツイデスネ

子どもの頃から、声を出して本を読むことが好きです。小学生のときはもちろん、高校生になっても、国語の授業中に先生に当ててもらって、みんなの前で教科書を音読することを楽しみにしているようなところがありました。上手だったかどうかはともかく、読めないのではないか、口が回らないのではないかという不安を抱いた記憶はありません。

今でも、毎年6回ほど、大学近隣のいくつかの図書館に出向き、絵本の読み聞かせの会を開いています。事前に練習はするのですが、会によっては、「先生、この本お願いします」と、突然、見たこともない、平仮名ばかりの絵本を渡されることもあります。そんなときも、少し集中力を上げる必要はありますが、大きく読み間違えることはありません。

同じことをAIにお願いしたら、どうなるでしょうか?

「AI基礎」第13回授業のテーマは「文章が音声になる過程を体験する」。言語を処理する技術、音声を生成する技術、そしてそれらを統合する技術は別物であることを体験的に理解することが目的です。学生は、第12回授業で、NotebookLMを使って生成した新商品紹介の原稿をWordの読み上げ機能を利用して音声化します。

TikTokなどでAIが「話す」ことに慣れている学生には、少し遠回りな音声化ですが、例えば、次のような例を用意しました。

・今日は暑いですね。
・今日は、暑いですね。
・今日は暑い、ですね。
・今日は・・・暑いですね。

Wordに貼り付けて音声読み上げを試してみると、最初の2つの文にはほとんど違いがありません。3番目の文は「キョウワアツイ/デスネ」と期待通りの読み上げが行われました。問題は4つめの文。期待通りといえば期待通りですが、「コンニチワ/アツイデスネ」と来ました。私は「・・・」をタメとして使いました。もっと気持ちを込めて読んでほしかったのですが、Wordはそう思わなかったようです。

私自身が作った、300字のピーチ・フール紹介文の読み上げも、資料に加えました。この文章には「伝統菓子」というフレーズが含まれています。私たちが期待する「デントウガシ」ではなく、「デントウ/カシ」と音声化されました。「菓子」の「カ」は「カ」のままだし、「伝統」と「菓子」は別々の2つの単語であるかのように、間を置いて読み上げられたのです。

これは単なる読み上げ方の違いではありません。連濁が起こらず「菓子」の「カ」が「ガ」に変化しなかったこと、そして「伝統」と「菓子」の間の切れ目がそのまま残っていたこと。この2つは、Wordが「伝統菓子」を一つの複合語として扱っているのではなく、独立した単語の並びとして扱っていることを示す手がかりです。

この「伝統菓子」は、鉤括弧に入れた平仮名「でんとうがし」に差し替えたところ、自然な音声になりました。このほかにも、句読点を足したり、改行を入れたりすると、聞こえ方が自然になる箇所がいくつもありました。

以前に比べれば、Office系ツールの読み上げ機能はずいぶん進化したと感じます。意外なほど自然に聞こえる部分も多いのです。それでも、狙って作られた不自然さではなく、素で「へん」なところが、まだ確かに残っている。今回の授業では、AIが自然な音声を出力できるように、人間の私たちの側が原稿を工夫することが、案外重要になりそうです。ワークシートにも、そう書きました。「AIが力を発揮できるように」。書きながら、AIを励ましているような、奇妙な感覚がありました。

そう考えると、学生には次のような問いを投げかけたくなります。

AIは本当に「話して」いるのか。

私は素人なので、図書館で読み聞かせをするとき、決して「演じて」はいません。どこで息継ぎをするかや、どこを強調するかを、ひとつひとつ考えながら読んでいるわけでもないと思います。それでも、読み終わった後、「先生のおばけの声、こわかった〜」などと小さなお友達から声をかけてもらえることがあります。

同じ商品説明の原稿を渡されても、Wordの読み上げ機能のように文字から音声を合成するまでの過程と、私たち人間が商品の魅力を伝えるために声に出すまでの過程とは異なります。AIは、文章を区切り、読み方を決め、それを音に変換するという手順を、着実にこなしています。声の高さも、間の長さも、強調も、計算によって決められたものです。一方、私が絵本を読むとき、そこにあるのは計算ではありません。むしろ、私自身が言葉に導かれて、その場面を思い浮かべてしまっているだけのような気がします。声色を変えていないのに子どもが怖がるのだとしたら、怖さを運んでいるのは、私の技術ではなく、私が文字から思い浮かべているものの方だという気がしてきます。

もしかしたら、私たち人間は、文字を見ているつもりでも、頭の中では声を思い浮かべながら読んでいるのかもしれません。資料を作りながらそんなことを考えていたとき、頭に浮かんだのが、酒井邦嘉氏の『心にいどむ認知脳科学』(岩波書店、1997年)です。人間の知覚、記憶、意識に関心を持ってくれた学生には、この本を勧めたいと思います。

第13回の授業計画については、以下の記事で紹介しています。よろしければご覧ください。


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