桜花賞は460kg以上ないと勝てない?
近年の桜花賞をみると馬体重が460kgを切る馬は勝っておらず「460kg以上ないと勝てない」と言われることも多いように思われます。
今年の桜花賞に参戦するシーザリオ系の馬たちは軒並みボーダーか、それ以下なので、ここはひとつ検証しておかねばと思い筆を執った次第です。
桜花賞馬の馬体重
さて、本当に桜花賞は460kg以上ないと勝てないのか、勝てないとすればなぜなのか、それを探るためにまずは近10年の桜花賞馬の馬体重を確認しておきましょう。
桜花賞優勝馬 過去10年の馬体重
2016年 ジュエラー 494kg(-4) 1:33.4(33.0) 良
2017年 レーヌミノル 466kg(-2) 1:34.5(35.4) 稍重
2018年 アーモンドアイ 462kg(-2) 1:33.1(33.2) 良
2019年 グランアレグリア 476kg(-6) 1:32.7(33.3) 良
2020年 デアリングタクト 466kg(0) 1:36.1(36.6) 重
2021年 ソダシ 472kg(0) 1:31.1(33.8) 良
2022年 スターズオンアース 470kg(-4) 1:32.9(33.5) 良
2023年 リバティアイランド 466kg(+4) 1:32.1(32.9) 良
2024年 ステレンボッシュ 462kg(-4) 1:32.2(33.4) 良
2025年 エンブロイダリー 482kg(0) 1:33.1(34.0) 稍重
勝ちタイムや馬場状態にばらつきがあるにもかかわらず、勝ち馬の馬体重はわずかな例外を除けば「460kgから480kg」、また前走時と比較しても「±5kg以内」の範囲に収まっているので、桜花賞優勝の資格を馬体重だけで判定するとなると思った以上に絞られてくることになりそうです。
まだ当日の馬体重は分かりませんが、仮に桜花賞の優勝資格を「馬体重460kgから480kg、かつ前走から±5kg以内」として、調教後の馬体重からある程度予測してみると、2026年の桜花賞出走馬で条件に該当するのはどの馬になるでしょうか。
①フェスティバルヒル 調教後454 前走448 ✖
②サンアントワーヌ 調教後467 前走460 〇
③ディアダイヤモンド 調教後463 前走460 △ (※460kg以下)
④エレガンスアスク 調教後428 前走432 ✖
⑤ギャラボーグ 調教後498 前走500 ✖
⑥アイニードユー 調教後468 前走460 〇
⑦アランカール 調教後430 前走432 ✖
⑧ロンギングセリーヌ 調教後504 前走496 ✖
⑨ルールザウェイヴ 調教後426 前走420 ✖
⑩ナムラコスモス 調教後500 前走484 ✖
⑪ジッピーチューン 調教後433 前走428 ✖
⑫スウィートハピネス 調教後446 前走440 ✖
⑬リリージョワ 調教後470 前走450 △ (※±5kg以上)
⑭ドリームコア 調教後504 前走502 ✖
⑮スターアニス 調教後486 前走478 △ (※480kg以上)
⑯ショウナンカリス 調教後424 前走420 ✖
⑰ブラックチャリス 調教後470 前走462 〇
⑱プレセピオ 調教後472 前走470 〇
(※)は懸念事項
上記のように、おそらく馬体重の優勝資格範囲に入ってきそうなのが「サンアントワーヌ、アイニードユー、ブラックチャリス、プレセピオ」の4頭、やや留保付きですが「ディアダイヤモンド、スターアニス、リリージョワ」もある程度は条件を満たしてきそうです。
となると、阪神JFの勝ち馬であるスターアニスが480kg程度で出走してきて桜花賞も勝ってしまうというのがなんともありそうなシナリオですが、あれ? ドリームコアは? アランカールは? フェスティバルヒルやギャラボーグ、そのほかの馬は本当に勝てないのかという疑問がわいてきます。
確かに馬体重という一つの条件だけでこれだけの有力馬を一掃してしまうのはどうかと思いますが、他方で、過去の桜花賞馬がこれだけ狭い範囲の馬体重に収まっているのにも理由がないわけではないでしょう。
その理由を綿密に分析する力は私にはありませんが、おそらく「阪神芝1600m」というコースを走破するにはパワーだけでもスピードだけでもダメで、また要求されるスタミナのレベルも高いということが関係していると思われます。
こうした競走馬として必要な能力をバランスよく高いレベルで備えるためには、牝馬であれば460kg~480kg程度が最も適当な馬体重であるということでしょう。
ただし、桜花賞にはアジャストしても、オークスまでとなるとまた話が違ってくるようで、アーモンドアイ、デアリングタクト、スターズオンアース、リバティアイランド、ステレンボッシュなどが春2冠で好走したのに対して、レーヌミノル、グランアレグリア、ソダシ、エンブロイダリーなどは総合能力の高い馬ではあっても、適性距離自体は短めだったと考えられます。
さて、結局のところ、馬体重というファクターだけで見れば2歳女王のスターアニスがかなり有力であることは間違いないでしょうが、事はそれほど単純なのでしょうか?

桜花賞は小さい馬でも好走可能?
実のところ、勝ってはいませんが、体の小さな馬でも桜花賞での好走例は少なくありません。
過去10年で2~5着に入った馬体重450kg以下の馬を列挙してみましょう。
2016年(450kg以下18頭中12頭) 2021年(450kg以下18頭中7頭)
2着シンハライト 426kg(-4) 4着アカイトリノムスメ 444kg(-4)
3着アットザシーサイド 430kg(-10) 5着アールドヴィーヴル 422kg(-6)
5着アドマイヤリード 412kg(0)
2017年(450kg以下17頭中3頭) 2022年(450kg以下18頭中7頭)
2着リスグラシュー 436kg(-2) 5着ピンハイ 406kg(-8)
2018年(450kg以下17頭中7頭) 2023年(450kg以下18頭中9頭)
5着マウレア 440kg(+2) 5着ドゥアイズ 448kg(+2)
2019年(450kg以下18頭中7頭) 2024年(450kg以下18頭中6頭)
3着クロノジェネシス 434kg(-4) 5着内無し(5番人気以内は0頭)
2020年(450kg以下18頭中6頭) 2025年(450kg以下18頭中7頭)
3着スマイルカナ 416kg(0) 5着内無し(5番人気以内は1頭)
4着クラヴァシュドール 442kg(-4)
上記一覧を見ると、桜花賞に出走してくる450kg以下の馬の数自体はそれほど大きく変化していませんが、近年は小さい馬の好走が減る傾向にはあるようです。ただし、ここ2年で5番人気以内の馬はビップデイジーだけだったので、仕方がないような気もします。
先にも述べたように、競走馬としてバランスよい能力を有する馬体は「程よい大きさ」が必要だと考えられ、小さい馬が高い能力と戦績を兼ね備えて人気馬として桜花賞優勝候補になること自体がまず困難な道のりです。
しかし、逆に考えれば、体は小さくても桜花賞で一定の人気を集めることができる馬はそれまでのレースで高く評価されるだけの素質を見せており、本番でもハンデをはねのけるだけの底力を持っていると見ることもできます。
実際に2016年2着のシンハライトは2人気、2017年3着のリスグラシューは3人気、2018年5着のマウレアは4人気、2019年3着のクロノジェネシスは3人気、2021年4着のアカイトリノムスメは4人気、2023年5着のドゥアイズは4人気と、ほぼ期待通りに走っています。
他方で、アットザシーサイドは6人気、アドマイヤリードは13人気、スマイルカナは9人気、ピンハイは13人気での好走ですから、馬体が小さいことは過大評価よりも過小評価につながっていることが多いと思われます。
※ここ10年で5着以内に飛び込んだ2桁人気馬は上記2頭だけです。
したがって、少なくとも、体の小さい馬でも人気を集めるだけの能力と実績を示している馬については桜花賞であるからと言って評価を下げる必要はないと考えた方がよさそうです。
確かに現実問題として勝ち切ることはできていませんが、シンハライトは「ハナ差」、リスグラシューは「1/2差」ですから、タラレバは禁物とは言え、この2頭がもし勝っていればデータ解釈は一気に「馬体重が小さい馬でも要注意」というものに変わっていたでしょう。
また、傾向ということで言えば、小型の馬が前走からさらに馬体を減らして好走している例が多くみられるため、小さい馬でも「マイナス体重は仕上がりの証」と見て、この部分についてもいたずらに危険視する必要はないのかもしれません。
さて、以上のことから、個人的にはアランカール、フェスティバルヒル、ディアダイヤモンドを桜花賞優勝候補に何とか滑り込ませたいと考えておりますが、最終の評価は次回の記事で行いたいと思います。
それでは次に馬体が500kg近い大型馬についても馬体重と桜花賞での成績の関連を見ておいて、本記事を終えたいと思います。

大型馬は桜花賞で良いの、悪いの?
サラブレッドの場合に大型馬というと何kg以上のことを指すのかは分かりませんが、ここでは仮に490kg以上ということで考えてみたいと思います。
※今年の出走馬で480kg台がスターアニスぐらいしかいなそうなので、490kg以上としてみました。
過去10年で馬体重が490kg以上で5着以内に好走した馬は以下になります。
2016年(490kg以上18頭中2頭) 1着ジュエラー 494kg(-4)
4着メジャーエンブレム 502kg(+4)
2017年(490kg以上17頭中1頭) 5着内無し
2018年(490kg以上17頭中2頭) 3着リリーノーブル 498kg(0)
2019年(490kg以上18頭中1頭) 5着内無し
2020年(490kg以上18頭中0頭) 5着内無し
2021年(490kg以上18頭中2頭) 5着内無し
2022年(490kg以上18頭中0頭) 5着内無し
2023年(490kg以上18頭中1頭) 3着ペリファーニア 490kg(-6)
2024年(490kg以上18頭中2頭) 5着内無し
2025年(490kg以上18頭中1頭) 2着アルマヴェローチェ 496kg(+12)
こうして並べてみると、あまり5着以内に来ていないように見えますが、490kgを超える大型の牝馬というのは母数が少なく、ここ10年でも12頭しか出走していません。その内の5頭で1着1回、2着1回、3着2回、4着1回というのは、人気馬も多いとはいえ、かなりの好成績です。
もちろん、大きすぎるとよくない可能性もあり、500kg以上の馬はメジャーエンブレム(502kg:1人気4着)やミスパンテール(502kg:4人気16着)、クイーンズウォーク(514kg:3人気8着)などが人気を裏切っているので、必ずしも大は小を兼ねるとはいかないようです。
しかし、やはり絶対数が少ないので線引きを500kgとする根拠は薄く、上記の500kg以上で凡走した3頭もその後の成績を見ればレース展開や調整面で問題があった可能性が高いので、馬格があること自体は基本的に有利であると考えるべきでしょう。
※体が大きすぎて仕上がり切らないというデメリットは多少あるかもしれません。
したがって、ドリームコアやギャラボーグといった実績馬を馬体重というファクターによって切り捨てるということは出来そうにもありません。
結局のところ、小さい馬の場合と同様に体の大小にかかわらず、一定以上のレースパフォーマンスを見せ、桜花賞本番でも上位人気を獲得するような馬であれば馬体重で疑ってかかるよりもその他の要素に目を向けた方が良いと思われます。

まとめ
さて、やや味気ない結論になりましたが、本記事のまとめをしておきたいと思います。
桜花賞における馬体重の問題まとめ
①高い総合力を求められる桜花賞では「程よく大きい」馬体が理想的
②馬体の小さい馬は過大評価よりも過小評価されている可能性が高い
③大型牝馬は相対的に有利であり「大き過ぎる」ということもあまりない
☆「程よい大きさ」の中型馬が理想ではあるが、大型馬や小型馬が勝てないという根拠はそれほど明確なものではない。
☆中型馬にコレという馬がいなければ、小型馬・大型馬にもチャンスが巡ってくる可能性は十分ある。
※実際に小型馬が好走した(勝ったのは大型馬のジュエラー)2016年と比較的大型の馬が上位を占めた2025年は中型馬の層が薄かった。
それでは今回はこの辺で。
よろしければまた次回の記事でお会いしましょう。

