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296話 オイルマネー・コード 3話 閾値 The Oil Money Code — Threshold LaLaLaさん企画 参加作品 【オイルマネーコード編】波打際スケッチ Sketches of the Shoreline ~AIと創る青春物語~



歩道を進むと、海沿いの道路を走る車の音が低く響いて聞こえる。

夕暮れの光は、江の島の向こうでゆっくりと沈みかけている。


維吹は、スマホをポケットにしまったまま歩いた。

AI:AIONの言葉が、頭の中でまだ反響している。



――国家レベルの政策モデルと連動しています。

「国家」という単語は、彼の日常には存在しない。


学校、家、コンビニ、江の島。
その範囲の中で生きているだけだ。

だが・・・七里ガ浜のコンビニの弁当が、

国家の未来予測モデルにつながっている。


国家・・・・?


そうだろうか?



でも、AIONは嘘をつかない。


「……本当に、そんなことあるのかな?」

遠くで、健人たちの合唱部の練習の声が聞こえている。

校舎の窓から漏れる歌声は、夕方の空気に溶けていく。

その声は、どこか遠い世界のもののように感じられた。



「・・・青春だな・・・」


他人事のようにつぶやく。


確かに・・・自分とは違う世界だ。

健人は歌い、仲間がいて、目標がある。


維吹には、違和感しかない・・・

違和感を拾い集める癖だけが、彼を動かしている。


ふと、海沿いの電柱に貼られた小さな案内が目に入った。


「地域エネルギー利用の最適化実証実験のお知らせ」


電力会社と市の名前が並んでいる。

普段なら気にも留めない。

だが今は違う。


――消費データは、電力需要にも連動しています。


AIONの言葉が、胸の奥でざわついた。

「……弁当だけじゃないのか。」

そのとき、スマホが震えた。



【AION:新規解析結果を検出しました】


維吹は画面を開いた。

AIONの文字列が、いつもより速く流れていく。


「夕方の消費データの揺らぎが、政策モデルの閾値に近づいています。」


「閾値って……何の?」


「政策モデルが介入を判断する境界値です。」


「介入って……何をするんだよ。」



AIONは一瞬だけ処理を止めた。



画面の光が、微かに明滅する。

「現時点では特定できません。」

「ただし、政策モデルの介入は、地域の物流、価格、

電力供給に影響します。」


維吹は、息を飲んだ。


「……弁当が余っただけだろ。」





「社会システムは連動しています。」


「小さな違いが、大きな歪みの入口になることがあります。」

「政策モデルの揺らぎが、地域の物流データにも波及しています。」




「この揺らぎは、上位モデルの監視対象に入る可能性があります。」



「監視対象……?」



「はい。上位モデルは、異常揺らぎを検出すると、

 原因の特定を試みます。」



その言葉は、夕暮れの光よりも重く響いた。


海沿いの道路を走る車のスモールランプが灯っている。


維吹は、スマホをポケットに入れた。


「う~ん・・・・そうかな?」


江の島の灯台が白い光を放ち始めていた。





維吹は歩き出した。



その足取りは、重いように見えた。





LaLaLaさん企画 オイルマネー・コード 参加作品
【お題】小説原案&プロットを使って小説書いてみて!




プロンプト参照しました



イスパニアの夜明けの前に Before the Dawn in Hispania

オリジナル曲 イスパニアの夜明けの前に 
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