道真の漢詩
河出書房新社「日本文学全集 池澤夏樹=個人編集 30 日本語のために」
文学全集の最終巻タイトルが「日本語のために」ってなんだろうと思って図書館から借りてきました。
(池澤夏樹って個人編集で日本文学全集と世界文学全集を出してるんですね )
日本語の色々な文体について書かれた読み物的な一巻で、とても面白そうです。
目次から抜粋
1 古代の文体
祝詞
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2 漢詩と漢文
菅原道真
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3 仏教の文体
般若心経
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4キリスト教の文体
聖書
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5 琉球語
琉歌
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6 アイヌ語
アイヌ神謡集
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7 音韻と表記
いろはうた
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8 現代語の語彙と文体
ハムレット
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9 政治の言葉
日本国憲法 前文
…
10 日本語の性格
…
2 漢詩と漢文
まで読んだ時点でかなり衝撃でした。
それまで文字を持たなかった日本に、中国から漢字がやってきて、それを日本語を表記することに利用したということはわかっていましたが、それがこれほど大胆なやり方だったとは。
今の私たちは、漢字に音読み訓読みがあることをあたりまえのように受け入れていますが、それは漢文を書き下すというとんでもない飛躍があったからです。
たとえるなら、英語の「dog 」を「イヌ」と読んでしまおう、ということと同じです。漢字一つが文字であると同時に単語である、だからできたことでした。
もしも、日本に初めて伝来した文字が中国語ではなくラテン語だったら……どうなっていたでしょうね。
さて、ここで菅原道真の漢詩が紹介されています。
これがびっくりするほど艶めかしく、道真のイメージが覆りました。
王宮のパーティーが引けて、舞姫たちが戻っていくシーンです。
「菅家文草」
紈質何為不勝衣
謾言春色満腰囲
残粧自嬾開珠匣
寸歩還愁出粉闈
嬌眼會波風欲乱
舞身廻雪霽猶飛
花間日暮笙歌断
遥望微雲洞裏帰
中村真一郎 訳
舞姫たちのなめらかな肌はどうして薄衣にさえ耐えないように見えるのか。
春の気色が腰のまわりに満ちているからだと? 嘘をおっしゃい!
舞が終ってその化粧が崩れかかり、珠の手箱を持っているのも懶そう、
後宮へ通ずる白い小門までのわずか数歩さえ耐えられそうにない。
彼女たちの媚びの眼くばせは、繰り返し押しよせてくる波に風が乱れるよう
くるりと舞う身体からは、晴れたあともまだ飛び散る雪のようなものが……
花のあいだに日が暮れて、フルートの音が消えた。
仙人は微かな雲を遠く見て、遥かな洞穴に帰って行くだろう……
道真がこんな詩を書いていたこと、ほとんど知られていないのではないでしょうか。
知っていると思い込んでいる人物にも、語られていない一面があるものですね。
