📚96 今さらですが【15時間の花嫁】 1396
※ヘッダー画像は、婦人公論No.1594 2023 April表紙部分です
15時間の花嫁
緊急寄稿「文春砲」なるものへの反論
上野千鶴子(1948年富山県生まれ、社会学者、東京大学名誉教授、ウィメンズアクションネットワーク理事長)
婦人公論令和5年4月号(中央公論社)
2023.3.15発行•発売
本当に今さらなんだけど、先日ご紹介した「上野さん、主婦の私の当事者研究につきあってください」(上野千鶴子•森田さち 晶文社)の中で(少しだけ)触れられていたし(P210〜211)……
拙記事「死別なら相続ゼロ⁇」でも(少しだけ)触れたから。
日本の法律婚と事実婚の間には、不合理な格差が存在してるけど、当事者以外が認識する機会は少ない。
司法の専門家ですら、「不合理な格差はない」「格差を埋める手立てはある」と言い切ってる。
選択的夫婦別姓が実現していれば、法律婚(=別姓婚)を選んだのに、改姓したくなくてやむを得ず事実婚をした人が半数という調査もある。
事実婚を選ぶ理由が何であれ、法律婚ではできて、事実婚ではできないことが多々ある。
週刊文春に「おひとりさまの教祖 上野千鶴子が入籍していた」という記事が出た。(中略)
わたしは「おひとり様の教祖」などではない。おひとりさま教などというものを発案したことも広めたこともない。(中略)
「入籍」という用語がまちがいである。正確には「婚姻届を提出した」と書くべきだ。(中略)
婚姻届を出したその翌日の未明、午前3時前に色川さんは亡くなった。婚姻届を出してから正味15時間の婚姻関係である。
上野さんにはタイトルに「おひとりさま」と付く著書が何冊かあるけど、「ひとりで生きていく方法も死んでいく方法もあるから心配しなくて大丈夫」という内容。
婚姻を否定してるわけじゃない。
「入籍」って言葉、若い人でも使うよね。
婚家に嫁ぐ、(多くは)男性側の家(戸籍)に入るってことでしょ?
それこそ家父長制の名残り。
私も婚姻届を提出したことがあるけど、H(元夫)の戸籍に入ったんじゃない。
婚姻届を提出するというのは、2人で新しい戸籍を作るということ。
(色川さんが)要介護状態になってからは、わたしが介護に関わることはご家族も承知しておられた。
わたしは赤の他人、死亡届を出すこともできない。万一の時の入院や手術の同意書にサインすることもできない。(中略)
口座をひとつにまとめるなどの手続きをするたびに、窓口の担当者に「ご関係は?」と聞かれた。「友人です」と答えても通らない。(中略)
これは家族主義の日本の法律を逆手に取るしかないと思い至った。
手段はふたつあった。養子縁組か婚姻か。(中略)
後に残るわたしが不利益をこうむらないように、色川さんは自分の姓を変えることに同意してくれた。(後略)
死後に復氏(=元の姓に戻す)が可能だとあったが、その当時は無知だった。
上野さんが法律婚されたのは事実。
いくら彼のご家族が承知していらっしゃったとしても、資産管理や各種手続きなど法律婚でないと「できない」不合理な格差は現実にあった。
色川大吉さんは上野大吉さんになった。その名前の死亡届を見るたびに、憮然とする。選択的夫婦別姓制度が導入されていれば、こんな思いをしなくてもよかっただろう。わたしのほうはそのまま、改姓に伴う不利益は一切なく、なるほどこういうことなら、姓を変えないほうは姓を変えたほうの不便やつらさを理解できないだろうと感じた。
私は結婚時に進んでHの姓を選んだ。
旧姓を好きではなかったし、母のことが大嫌いだったから。
取引先に「名前が変わりまして……」と伝えるのが誇らしく嬉しくさえあった。
それでも、改姓に伴う手続きはとても煩雑でとても面倒でとても時間がかかった。
選択的夫婦別姓の実現を阻むものは何?
なぜ「改姓したくない」という希望が叶えられないの?
改姓の不利益はいくつでも思いつく。
逆に別姓で困ることって何?
家族の一体感がなくなるとか、子どもが可哀想とかって当事者の声?
自慢じゃないけど私、Hと同姓だったけどお別れしたわ。
感情的に選択的夫婦別姓に反対するなら、試しに改姓を体験してみればいいよ。
「15時間の花嫁」について書く気になったのには、もうひとつ理由がある。
「上野さん、主婦の私の当事者研究につきあってください」の中の発言が気になったから。
わたしも家族制度に屈服いたしました。「戸籍がキレイ」だったはずなのに、よぎない事情で親しい方を看取るために戸籍を汚しましたから。
わたしは3年半ある大切な方の在宅介護をしました。
最後まで「お友だち」で通そうと思ったのです。が、制度の壁はやはり高かったです。(中略)
ギリギリの状況だったこともあり、(婚姻は)悩みに悩んだ未のやむを得ない選択でした。とはいえ、制度への屈服でしたね。痛恨の極みでございます。
P210
「家族制度に屈服」
「戸籍がキレイだったのに」
「戸籍を汚した」
「痛恨の極み」
お看取りやその後の手続きを円滑にをするには、今も養子縁組か婚姻しかない。
法に則ってしたことは、汚くもないし、屈服でもない。
そうでなきゃ、違反者•犯罪者になってしまう。
日本の戸籍制度は明治時代から。
戸籍があるのは日本と中国と台湾だけ(韓国は2008年に廃止)。
「戸籍に傷がつく」なんて言い方もあるけど、「日本がそういうシステムを採用してる」ってだけで、戸籍にキレイも汚いも傷もない。
上野さんが「誤まった」「後悔した」とご自身を下げるのは、本音ではなく自虐(アンチの攻撃に対する予防線?)かもしれない。
「花嫁」というタイトルだって、自虐としか思えないもんね。
最後に素敵なエピソードをご紹介。
色川さんが第三者にわたしを紹介してくれるときのいちばんうれしい言い方はこうだった。
「このひとはボクの親友です」
「上野さん、主婦のわたしの当事者研究につきあってください」の中でも仰ってる。
私のことを人に紹介するときに「ボクの親友です」とおっしゃいました。「パートナー」と言われるのは、私がお断りしてまいりましたから。だって「パートナー」ならひとりだけど、「親友」だったら、新しくお友だちができて、何人になってもいいでしょう?
P210
周囲の方々もまた素敵。
山の家(八ヶ岳南麓)の近隣住民の多くは都会からの移住者で、適度な距離感を持ったオトナの関係をつくっている。「色川です」「上野です」とそれぞれ名乗っても、「どんなご関係ですか」というぶしつけな質問を一度も受けたことがない。
思いがけなく長くなってしまった。
最後までご高覧くださり、ありがとうございます。

通勤路にあるマンションの駐輪場
車道を挟んだ向かい側に植わっていたコキアが
強く冷たい風に吹き飛ばされて転がっていた
道路を渡ってくるところを見たかったなあ……
2026.1.29.木
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