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goma_cheese
日記 こころを読む
先日、夏の文庫フェアが始まったことを聞きつけた私は、自宅にあるタワーのような積読に申し訳なさを感じつつ、本屋に足を運んでいた。
本屋の入り口には、例年の如く山のように文庫が積まれていた。我が家のデスクの積読よりも高く広く積まれていた。
無数の文庫のタイトルを眺めて、ひとり心躍らせたが、今日は買わないと決めている。
そもそも、フェアの時にしか本が買えないわけではないではないか。
そうやって割り切って家を出た私を苦しませるのは、新潮文庫だ。文庫フェア限定のプレミアムカバー。光沢のある紙に箔押しのタイトルが判断を鈍らせる。
これまでに、赤色の江戸川乱歩とオレンジ色の星新一を購入したことがある。
その2冊すら、まだ読み切っていないのに、またこのプレミアムカバーのシリーズを買ってしまったら、それは流石に新潮文庫の思う壺すぎる。
しかし、抵抗も虚しく、すっぽりと壺にハマってしまった。
その日、私は、白色の『こころ』と紫色の『悲しみよ、こんにちは』を購入した。
いつかは買いたいと思っていた2冊だが、まさかそれが今日とは思わなかった。
ただ、どちらも書店で一際輝いていた。
特に、白くて光沢があるのはずるい。
それからしばらくしたある日、実家に帰った私は、キッチンに立つ母の後ろに張り付いて、おしゃべりをしていた。
「私、いま『こころ』を読んでるんだ。
なんか頭良さそうでかっこいいでしょ。」
というと、
「え、心を読んでるの?
なんて言ってると思う?」
と聞かれた。
私が改めて夏目漱石の『こころ』を読んでいることを伝えると、「夏休みの話だっけ?」と言われた。
あながち間違いではないが、間違いではある。
母の心はいつになっても読めなさそうだ。
せめて、『こころ』は最後まで読み切ろうと思う。
