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【勝手に読書感想部】人間標本:湊かなえ

[作品紹介]

榊史朗は幼少期に移住した山奥で蝶の魅力にとりつかれ、蝶の採集と標本作りに夢中になる。
そして、現在は蝶の研究者として名を馳せていた。
そんなある日、幼馴染で色彩の魔術師の異名を持つアーティストの留美から、自分の後継者を決める合宿に息子のいたるとともに招待される。
そこには息子と同い年の、美しい5人の少年たちも招かれていた。

"人間も一番美しい時に標本にできれば・・・"
史郎の中に眠っていた黒い欲望は開花し、『人間標本』という禁断の扉を開いてしまう。


[感想]

蝶の標本ってなんか独特な怖さがありますよね。
好きな人にとってはそこもまた魅力のひとつなのでしょうか。
美しい命を一番美しい状態で保存し続ける。
生きてるものの命をいただいて飾るという背徳感とか罪悪感も相まってより美しく感じられるのでしょうか?

人間標本までいくと、もうそんなレベルではないですけどね。
それぞれの少年の個性を蝶の特性に見立てて、その特徴や色を落とし込んだような展示方法をデザインしていくというのはかなり不気味で胸くそが悪く、読むのが嫌になりましたが、それでも変にそそられて読み入ってしまいました。

どんなに老いても朽ちても、生きている方が絶対美しいって信じていますが、そんな自分の価値観が揺さぶられるくらい、この物語に没入しました。
そしてがっつりトラウマを植え付けられました。笑

最近、山女日記とか落日とかを読んで忘れかけていましたが、この方イヤミスの女王でしたね。笑
表紙の『湊かなえ』の文字が背景の蝶のデザインと相まって、ものすごく崇高で気高く映りました。
まさに女王!
あぁ、なんかすごい作品を読んでしまったんだな・・・と。


*以下、ネタバレ含みますので、まだ読まれてない方はご注意ください



読み進めるごとに展開が二転三転して、真実がどんどん塗り替えられていきました。
序盤の史郎の手記でかなり気分が悪くなりましたが、そこから章をまたぐごとに父と息子の愛の物語へと様相が変化していきます。
史郎がただの猟奇殺人者だったらどんなに良かっただろう・・・。

湊かなえ先生といえば母と娘のいびつな関係が印象的です。
ものすごく支配的で歪んだ母親の愛情が呪いとなり、悲劇につながりがち。
『母性』とか『豆の上で眠る』、『ポイズンドーターホーリーマザー』とか、そんな感じですよね。

一方で悲劇的な結末にはなったものの、史郎の父子愛はどこか爽やかで、互いを想い、気遣い合っている優しい空気が漂っていました。
南米でのカイビリーニャをシェアするやり取りや、2人ですき焼きをはさんでの何気ない会話が微笑ましく、こんな穏やかな日々が永遠に失われてしまったことが苦しくてたまりませんでした。

史郎も殺人鬼じゃなかったことが逆に辛かったです。
せめて2人のどっちかが殺人鬼だった方がまだ気が楽でしたよ。
ホントにこの辛さはあとを引きます。

蝶々大好きな警察落第犬のジョンくんのドヤ顔を想像して心をリカバリーすることにしましょう。笑


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