夏八木勲「白昼の死角」昭和の天才詐欺師、戦後ピカレスクの傑作
「悪に魅入られる」という体験を、これほど鮮烈にくれる映画はそうありません。
戦後まもない日本を舞台に、東大出身の頭脳犯が法の盲点(もうてん)を突き、巨額の詐欺を重ねていく。
正義の物語ではないのに、なぜか目が離せない。
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作品基本情報
製作年:1979年
製作国:日本
上映時間:154分
監督:村川透
主演:夏八木勲(公開当時は夏木勲名義)
出演:島田陽子、中尾彬、岸田森、竜崎勝、丘みつ子、夏樹陽子、丹波哲郎、千葉真一、天知茂
原作:高木彬光(光文社)
製作:角川春樹
音楽:宇崎竜童(ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)
こんな方におすすめ
戦後の混乱期や昭和の空気を体感できる映画を探している方
「悪」が主人公の物語、いわゆるピカレスク・ロマンに惹かれる方
夏八木勲という名優の若き日の代表作を観てみたい方
角川春樹が手がけた昭和の話題作に興味がある方
派手なアクションではなく、頭脳戦で魅せる犯罪映画が好きな方
この映画の見どころ
「狼は生きろ、豚は死ね」── 流行語になった、伝説のキャッチコピー
この映画を語るうえで欠かせないのが、当時、社会現象になったキャッチコピーです。
「狼は生きろ、豚は死ね。」
聞いた瞬間に背筋がぞわりとする、強烈な一行。
これは1960年の石原慎太郎の戯曲タイトルから引用されたもので、映画の世界観を見事に言い表しています。
法を逆手にとって食らいついていく「狼」と、騙される側に回ってしまう「豚」。
その対比が、戦後日本のむき出しの欲望と重なって、観る者の胸をざらつかせます。
実在の「光クラブ事件」をモチーフにした、戦後ピカレスクの金字塔
物語の出発点となるのは、戦後すぐに実際に起きた「光クラブ事件」です。
東大法学部の俊英たちが立ち上げた闇金融会社をめぐる、衝撃の実話。
高木彬光は、この事件をベースに、法の盲点を突き続ける天才的知能犯・鶴岡七郎の暗躍を描く長編推理小説を書き上げました。
原作者である高木自身が、「小説を書きだして31年位になりますが、『白昼の死角』程の悪党を書いたことはない」と語ったほどの、悪のカリスマ。
それを映画化したのが、本作です。
7億円の製作費が物語る、本気の昭和エンタテインメント
監督の村川透は、後に松田優作主演の「遊戯」シリーズで知られる存在になります。
記者会見の席で、村川監督は「今までは3000万円映画しか撮ったことがなかったので、今回の製作費7億円には、ケタが大きすぎるので実感がわきません」と語ったと伝えられています。
製作を手がけたのは、角川春樹。
東映の総力を結集した、まさに昭和の大作です。
主題歌「欲望の街」は宇崎竜童とダウン・タウン・ブギウギ・バンド。
夜の街に響くこのテーマ曲が、映画全体に独特の毒気を吹き込んでいます。
夏八木勲、悪役で輝く稀代の存在感
主人公・鶴岡七郎を演じるのは、若き日の夏八木勲(当時は夏木勲名義)。
冷たい笑みを浮かべ、上目遣いで相手を見据えるその目線が、観る者を捉えて離しません。
知性と狂気を同時に漂わせる、まさに「悪のカリスマ」。
これだけの脇役の名手たちを揃えながら、画面の中心には常に夏八木勲がいる。
その求心力こそが、本作の最大の見どころです。
豪華すぎる脇役陣
そして、この映画の楽しみのもうひとつは、信じられないほど豪華な共演陣です。
島田陽子、中尾彬、岸田森、竜崎勝、丘みつ子、夏樹陽子、丹波哲郎、千葉真一、そして天知茂。
特に天知茂が演じる検事・福永は、鶴岡を執拗に追い詰める存在として強い印象を残します。
岸田森の登場シーンも、開幕早々、忘れがたいインパクトをもたらします。
ひとりひとりの俳優が、わずかな出番でも昭和映画らしい濃密な存在感を放っているのです。
観た人の声
「タイトル、ポスター、コピー『狼は生きろ、豚は死ね』、予告、主題歌宇崎『欲望の街』──これぞ、ザ・角川映画」
「ピカレスクの感じが、とてもいい。夏八木さんの芝居が、ギラギラしてハマっていた」
「公開時は高一で観ました。インパクトあるコピーと宇崎竜童の不良っぽい主題歌、夏八木勲の東大法学部出のインテリ詐欺師の上目遣いに痺れた」
理屈ぬきで、観終わったあとに何かが残る。
そんな昭和映画ならではの濃さが、この作品にはあります。
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まとめ
戦後の闇を生き抜いた、悪に魅入られた男の物語。
154分という長尺ながら、観終わったあとには「昭和を一本まるごと観た」という確かな手応えが残ります。
「狼は生きろ、豚は死ね」── この言葉の意味を、ぜひあなた自身の目で確かめてみてください。
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