ケルベロスの涙
地獄の番犬、ケルベロス。
よくは聞くけど、詳しく知らない。
とにかく、恐ろしい存在らしい。
プロ野球選手へなる夢に挫折した、保険の営業マンが話してた。
大学の名門野球部で、途轍もなく規律に厳しい、怖い先輩がいたという。
階級の違いや決まり事を絶対順守して、少しの乱れでも怒鳴り散らす。
体育会系の上下関係キッチリなケルベロス。
この怖い先輩が、引退時に涙を流したという。
どうやら、みんなの為に、あえてやり過ぎなほど、厳しくしていたらしい。
実は私も、実際に、生でケルベロスの涙を見たことがある。
やはり、とてもルールに厳格で、がなり声の威圧感が凄い。
細かいところまで、キッチリ指示を出す几帳面さもある。
先輩には絶対服従で、同僚以下には口調粗くハッキリ指摘する。
ちょっと、やんちゃな感じの人だった。
少人数でお酒を飲んでいた時に、ケルベロスの涙を見た。
「たぶん…みんなから嫌われてる。でも、仕方がない…
誰かが厳しくしないと…」
やっぱり、あえて、全体の為を想って厳しくしてたみたい。
嫌われ役を、自ら進んで買って出る。
ルールが緩くなりすぎて、だらけるのも、確かに、あんまりよくない。
時には言いづらい事でも、指摘すべきかもしれない。
ただ、少し、ご指導ご鞭撻が強すぎる感じ。
私が見た実物のケルベロスの口調は、
「っってんだ、おめぇぇ!!」
みたいな感じだったから、相当に柄が悪かった。
言わないと自分から動かない、自分勝手な人に対して、特に容赦が無かった。
寡黙で優しそう、でもよく見ると、自分のことしか考えられなくて、何も動けない人がいた。
その人へ厳しい指導をいれることが多くて、(パワハラに近いのでは?)と内心思っていた。
でも、付き合いが長くなって、どちらのことも分かると、(どっちもどっちかも)という感覚になった。
酒の席で、涙ぐんだケルベロスは続けざまに「でも、どんな人にだって良い所はある…」と呟いていた。
やはり、ケルベロスは架空の生き物かもしれない。
因みに私は、冗談ばかり話すけど、そこまでケルベロスに怒られた事はなかった。
ある程度、真面目だったし、仕事は最低限には出来ていたからかもしれない。
上下関係が希薄な性格だから、そこを厳しく取り締まられそうだけど…
遊びに誘われる事が多かった。
自覚は無かったけど、猛獣使いの素質でもあったのだろうか?
いや…人を獣扱いなんてしたら、よろしくない。
噛まれてしまうかもしれない。
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ケルベロスからの、厳しい指導を受ける常習犯だった人。
他人に興味が無いから、気付けず動けない人。
この人でも、ご指導ご鞭撻出来る相手がいた。
それが、猛獣使いである私。
…?
これは一体どういう事だ?
じゃんけん大会の話?
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