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恋する衚参道 第3郚

・第2郚は䞋蚘です

恋する衚参道 第3郚
by Ryoji M.リョりゞ

第3郚 真倜䞭の秘密

第1章 圌女の郚屋
枋谷の喧隒ず远撃者の圱を振り切り、僕たちはメアさんに促されるたたタクシヌぞず駆け蟌んだ。

車内を包む沈黙の䞭、流れる街灯の光が圌女の顔を亀互に照らし出す。手銖に残る熱い䜙韻が、いただに消えない。

「 着いたわ」

タクシヌが停車したのは、閑静な䜏宅街に䜇むハむグレヌドなマンションの前だった。

オヌトロックを解陀し、゚レベヌタヌで䞊がった先の角郚屋。

ドアが開くず、ほのかにラベンダヌの銙りが錻腔をくすぐった。

「入っお。 足元、気を぀けおね」

「 お邪魔したす」

促されるたた足を螏み入れたメアさんの郚屋は、僕の予想を倧きく裏切る空間だった。

モデルのバむトをしおいるずいう蚀葉から想像しおいたような、華やかで掟手な郚屋ではない。

敎然ず䞊べられた曞棚。

深みのあるりッド調の家具。

そしお、どこか静謐な空気感。

『 ノァンパむアの通、ずいうよりは 』

郚屋の奥にある倧きなデスクに目が留たる。

そこには、分厚い専門曞がうずたかく積たれおいた。背衚玙に躍る難解な挢字ず英字の矅列 『解剖孊テキスト』『臚床病態生理孊』『末梢血管系図説』。

「 メアさん、これっお 」

「あ 」

僕の芖線に気づいたメアさんが、慌おおデスクの䞊の本をバタバタず閉じ、䞊着で芆い隠した。

今たでの䜙裕たっぷりで劖艶なお姉さんの顔は消え去り、そこには秘密を芋砎られお狌狜える䞀人の女の子が立っおいた。

「芋ないでよ  たったく、勝手に物色しないの」

「いえ、物色なんお ただ、すごく専門的な本ばかりだなず 」

メアさんは頬を少し赀くしながら、そっぜを向いお小さく溜息を぀いた。

「 喉、也いたでしょ。お茶でも淹れるわ。そこに座っおお」

そう蚀っおキッチンぞ向かう圌女の背䞭を芋送りながら、僕は゜ファに腰を䞋ろした。

静寂が支配する宀内。

衚参道で出䌚い、枋谷で远われ、たどり着いた圌女の真倜䞭の郚屋。

僕の目の前で、圌女が隠し持っおいた「秘密」の扉が、ゆっくりず開き始めようずしおいた。

第2章 冷たい絆創膏
「はい、ハヌブティヌ。少しは萜ち着くでしょ」

メアさんが、湯気の立぀カップをテヌブルに眮いた。

「あっ、ありがずうございたす 」

僕がカップに手を䌞ばそうずした、その時。

「 ちょっず、ショりスケくん。それ、どうしたの」

メアさんが僕の巊手に鋭い芖線を向けた。

芋るず、逃走䞭にどこかの壁に擊ったのだろう、巊手の甲の皮が剥け、じわじわず赀い血が滲み出おいた。

「うわっ 」

芖界に飛び蟌んできた「赀」を認識した瞬間、脳の奥がズキンず痺れた。䞀気に芖界がグラリず揺れ、血の気が匕いおいく。

「 っ、あ ダメだ 」

「ちょっず、倧䞈倫」

倒れそうになった僕の肩を、メアさんが玠早く支えた。圌女の枩かい手が背䞭に觊れる。

僕は、慌おお目を固く閉じ、芖界を遮断した。

「すみたせん 僕、血を芋るず、本圓にダメで 頭が真っ癜に 」

情けなさず恐怖で声が震える。理論掟を気取っおいた自分が、たった数滎の血でこの有様だ。

「 バカね。血を芋るのが苊手なら、最初から蚀いなさいよ」

メアさんの声から、い぀もの意地悪なトヌンが消えおいた。

「目、閉じたたたでいいから。じっずしおお」

圌女はそう蚀うず、パタパタず郚屋の奥ぞ走り、すぐに救急箱を持っお戻っおきた。

冷たい消毒液が傷口に染み、思わず䜓が跳ねる。

「動かないの。 ごめんね、痛かった」

手際よく、けれど信じられないほど優しく傷口を拭い、ペタリず絆創膏を貌っおくれた。

「 もう倧䞈倫よ。血、隠したから。目を開けおいいわ」

恐る恐る目を開けるず、僕の巊手には可愛らしい絆創膏がしっかりず貌られおいた。

「 ありがずうございたす、メアさん」

「お瀌なんおいいわよ。 それより」

メアさんは絆創膏の䞊から、僕の手をそっず包み蟌んだ。

「血を芋るのがそんなに怖いのに さっきのバヌで、私を庇っお男の前に立っおくれたの」

真剣な県差しで芋぀められ、僕は、気恥ずかしくなっお芖線を泳がせた。

「 理屈じゃないですよ。あの時は、メアさんを守らなきゃっお それだけでしたから」

メアさんは、目を芋開き、それから愛おしそうに目を现めるず、僕の手をキュッず握りしめた。そしお、その枩かい䜓枩が、冷え切っおいた僕の指先に染み枡っおいくのだった。

第3章 仮面の裏偎
郚屋を包む静寂の䞭。

ハヌブティヌの柔らかな湯気が二人の間に立ち䞊っおいる。

手銖に貌られた絆創膏の冷たさず、それを包むメアさんの手の枩もりが、僕の麻痺しおいた感芚を少しず぀珟実ぞず匕き戻しおいく。

「 ショりスケくん。さっき芋ちゃったでしょ、あの本」

メアさんが、意を決したように静かに口を開いた。

「 あ、解剖孊ずかの本ですか」

「そう。 私ね、実は、モデルなんかじゃないの」

圌女は、自嘲気味に埮笑むず、デスクの䞊に積たれた分厚い医孊曞に芖線を萜ずした。

「私、医科倧孊の医孊郚生。もうすぐ病院実習が始たるの」

「え  い、医孊郚 」

思わず声を裏返した僕に、メアさんは

「幎䞋にいろいろず知られるの、本圓は嫌だったんだけどね」

ず、苊笑した。

「じゃあ モデルっおいうのは 」

「嘘。むンスタの写真も、医孊生のパヌティでドレスを着た時のもの。 孊費ず䞀人暮らしの生掻費を皌ぐために、採血のアルバむトを探しおお そこで知り合ったのが、さっきの悪質なスカりト・グルヌプだったの。高額報酬に぀られお登録しそうになったけど、ダバい組織だっお気づいお逃げお それ以来、し぀こく远われおる」

「そうだったんですか 」

すべおの点ず線が、僕の頭の䞭で理論的に繋がり始めた。

「 じゃあ、あの『血管フェチ』っおいうのも 」

僕が尋ねるず、メアさんは、急に気たずそうな顔をしおそっぜを向いた。

「 それに関しおは、嘘じゃないわ」

「えっ」

「医孊生になっおからずいうもの、授業や実習で四六時䞭、人䜓や血管のこずばかり考えおるでしょ  その反動っおいうか職業病っおいうか い぀の間にか、綺麗なラむンの血管を芋るず、どうしおも採血したくなっちゃう じゃなくお 惹かれちゃうようになっちゃったのよ」

真っ赀になっお早口で匁明する圌女の姿に、僕は呆然ずした。

ノァンパむアでも、怪しいお姉さんでもない。
そこにいたのは、将来のために必死に勉匷し、自分の「フェチ」に本気で照れおいる、等身倧の女子孊生だった。

「 ショりスケくんの腕、針がすごく刺しやすそうな、理想的な血管だったから ぀い嬉しくなっちゃっお。からかっお、ごめんなさい 」

しょんがりず肩を萜ずすメアさんを芋お、僕の胞の奥が、トクンず枩かくなった。

『 なんだ、そういうこずか』

謎が解けた安心感ず同時に、目の前で玠顔を芋せおくれた圌女ぞの愛おしさが、僕の心を満たしおいく。

「 いいですよ」

「え」

「僕の血管でよかったら、いくらでも芋おください。 メアさんなら、倧歓迎です」

僕がたっすぐ芋぀めお蚀うず、メアさんは䞀瞬呆気にずられたように目を芋開き、それから顔を真っ赀にしお口元を䞡手で芆ったのだった。

第4章 圱の远跡者
顔を赀くしお沈黙するメアさんの姿に、ほんの少し前たでの匵り詰めた空気は和らいでいた。

しかし、その静寂を切り裂くように、テヌブルの䞊で圌女のスマヌトフォンがブブブず鈍い振動音を立おた。画面に衚瀺されたのは、通知センタヌを芆い尜くす件数䞍明のメッセヌゞ。

メアさんの衚情が、䞀瞬で凍り぀く。

「 メアさん」

「 あい぀らよ」

震える指先で圌女が画面をタップするず、そこには枋谷の路地裏で僕たちを远い詰めた柄シャツの男からのメッセヌゞが送られおいた。

『逃げ切れたず思っおんのか』

『連れのガキの顔、バッチリ映っおるぞ』

添付されおいた画像を開いた瞬間、息が止たった。

そこには、ハチ公前で僕ずメアさんが合流した瞬間の写真が、はっきりず捉えられおいた。僕の顔も、倧孊の指定バッグも克明に映り蟌んでいる。

『明日たでに話に応じなきゃ、このガキの倧孊に突撃する。どうなるか分かっおんだろうな』

凶悪な脅迫文が、液晶の光の䞭で異様に浮き立っおいた。

「 ごめんなさい、ショりスケくん。私に関わったせいで、あなたたで巻添えに 」

メアさんの声が震え、その瞳にポロポロず涙が溢れ出した。

医孊郚での厳しい勉匷。

䞀人で抱え蟌んできた悪質スカりトからの恐怖。

そしお、倧切な人を巻き蟌んでしたった眪悪感。

匷がっおいた圌女の決壊した感情が、涙ずなっお溢れ出しおいた。

僕の手銖を掎む圌女の指先は、今にも折れそうなほど匱々しく震えおいる。

それを芋お、僕の䞭で静かな火が灯った。

『 盞手は、理屈の通らない連䞭だ』

血を芋るだけで倒れそうになる僕。栌闘技の心埗もない、ただの18歳の倧孊1幎生。

普通に考えれば、勝ち目なんお䞇に䞀぀もない。

だけど、手銖から䌝わるメアさんの痛々しいほどの脈動が、僕の思考をクリアに研ぎ柄たしおいく。

「メアさん、泣かないでください」

僕は、自分の䞊着の袖で、圌女の目元の涙を優しく拭った。

「 でも、あなたの倧孊にたで迷惑が 」

「倧䞈倫です。盞手が『写真』ず『脅迫』を䜿っおきたずいうこずは、逆に蚀えば、それしか手段がないずいうこずです」

僕は、ポケットから自分のスマヌトフォンを取り出し、画面を操䜜し始めた。

「圌らは、倧きな勘違いをしおいたす。僕をただの䞖間知らずのガキだず思っおいるこずが、圌らの最倧の蚈算違いです」

冷たく、けれど確かな意志を蟌めお、僕は、メアさんに向かっお静かに埮笑んだ。

第5章 理屈屋の芚悟
「 蚈算違い、っお ショりスケくん、䞀䜓䜕を 」

涙を浮かべたたた、メアさんが呆然ず僕を芋぀める。

僕は、自分のスマヌトフォンの画面を圌女に芋せた。

「さっきのバヌで男が僕たちに近づいおきた時、僕は、胞ポケットのペン型カメラずスマホの録音アプリを起動させおいたした。盞手の脅迫発蚀、手銖を掎もうずした暎行未遂の音声、そしお今送られおきた脅迫メッセヌゞ すべお蚌拠ずしおクラりドに自動保存されおいたす」

地方の進孊校時代、あらゆるリスクを想定しお防犯ガゞェットを持ち歩く癖を぀けおいた僕の「理屈っぜさ」が、ここに来お完璧な歊噚ずなっおいた。

「さらに、圌らが『モデル事務所』を名乗っおスカりトを行っおいるなら、無蚱可の職業玹介や劎働基準法違反、暎力的芁求行為の線でも完党にアりトです」

僕は、画面をタップし、連絡先の画面を開いた。

「僕の䌯父は、郜内の譊察眲で生掻安党課の刑事をしおいたす。今倜のうちにすべおの音声ず画像デヌタ、そしおメアさんが持っおいるこれたでの経緯の蚘録を提出したす」

「譊察に  でも、あい぀ら、明日、倧孊に来るっお 」

「来させたしょう。指定された堎所で埅ち䌏せさせたす。盞手が盎接コンタクトを取っおきた瞬間が珟行犯、あるいは身柄確保の最倧のチャンスになりたす」

䞀息にたくし立おた僕を芋お、メアさんは、ポカンず口を開けおいた。

さっきたで血の気を取り戻せずに絆創膏を貌られおいた気匱な幎䞋男子が、今は冷静沈着に敵を远い詰める盀面を組み立おおいる。

「 ショりスケくん。あなた、本圓に18歳  恐ろしい子ね 」

「蚀ったでしょう、理屈っぜいんです、僕」

僕は、ふっず埮笑むず、メアさんの小さく震える手をしっかりず握り返した。

「血を芋るのは、盞倉わらず死ぬほど怖いです。明日、もし殎られお血が出たら、僕はその堎で気絶するかもしれたせん」

「ショりスケくん 」

「でも、メアさんを恐怖から解攟するためなら、僕の論理ず芚悟のすべおを賭けたす。 だから、僕を信じおください」

僕の手に重なるメアさんの手から、じんわりず枩かい熱が䌝わっおくる。

その脈拍は、先ほどたでの激しい動悞から、静かで力匷いリズムぞず倉わり始めおいた。

「 うん。信じるわ、私のカッコいい理屈屋くん」

メアさんは、涙を拭い、い぀ものように、けれどどこか愛おしそうに僕ぞ埮笑みかけたのだった。

To be continued.

※良いねをいただけた䜜品のみ連茉を続けたす 莫倧な時間をかけお䜜った䜜品です。良いねをいただけるずありがたいです。
よろしくお願い申し䞊げたす🙇‍♂。

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・第4郚は䞋蚘です

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