さざなみ
静かな部屋で一人、目を閉じると、心の中に小さな波が寄せては返しては消えていく。

まるで記憶の岸辺をやさしく撫でる、
さざなみのように。時がいくら流れても、色褪せることなく胸の奥に漂い続ける懐かしい日々がある。
かつて過ごした、ハワイでの暮らし。
部屋の窓を開けると、いつも南国のやわらかな風とともに、
ほんのりと甘いパイナップルの香りが流れ込んできた。
市場で買ったばかりの果実を切り分けるときのみずみずしい香りや、
街角のスタンドから漂うフルーティーな気配。
あの甘く甘酸っぱい香りは、私にとってハワイという土地の体温そのものだった。
中でも、決して忘れることができない光景がある。
夜のダイヤモンドヘッドから見下ろした、あの街の姿だ。
昼間の青い海と空の鮮やかさとは対照的に、夜の頂から広がる景色は、どこか神秘的で温かかった。
眼下に広がる街のあかりは、やわらかなオレンジ色の光となって夜の闇に溶け込んでいた。
宝石をちりばめたようなその暖色の輝きを、揺れる風を感じながら、私はただ静かに見つめていた。
あのオレンジ色の夜景の中に、誰かの営みがあり、私のささやかな日常もあった。
世界は常に動いていて、時の流れは容赦なく季節を変えていく。
ハワイでの暮らしも、あの風も香りも、すべては過去へと移ろっていった。
形あるものは留まることなく、人の気持ちも、置かれた環境も、
少しずつ姿を変えていくのが世の常なのだろう。
けれど、すべてが消え去ってしまうわけではない。
どんなに時が過ぎ去ろうとも、どうしても忘れられない大切な想い出がある。
あの日観たオレンジ色の夜景、鼻腔をくすぐるパイナップルの香り、
そして心を満たしていた穏やかな時間。
それらは今も私の中で生き続け、一人静かに佇む夜、
さざなみのように優しく寄せては、私の心を温めてくれるのだ。

クリエイターさまの記事紹介
ここからは、素敵な作品を届けてくれるクリエイターの記事をご紹介します。
①まるもりはっぱさん。
②ふらりんさん。
③RYOさん。
④きずなさん。
⑤千住まいかさん。
⑥AI女子大生さん。
⑦のんえもんさん。
⑧迷いのさん。
⑨あいさん。
⑩yasuさん。

🍀Photo & philosophy donchan🍀
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