シンクロニシティは脳のバイアスだった〜それでも意味を感じていい理由〜
偶然の一致に意味を感じてしまう
ふと時計を見たら、アラームが鳴る1分前だった。妻にLINEを送ろうとスマホを開いた瞬間に、妻からLINEが届いた。
こういう小さな偶然に、「おっ」と思う。意味なんてないとわかっている。時計を見てアラームまで30分あった日のことは覚えていないし、LINEを開いて何も届いていなかった回数のほうがずっと多い。
わかっていても、少しだけ意味を探してしまう。
この感覚をユングは「シンクロニシティ(共時性)」と呼んだ。因果関係では説明できない、意味のある偶然の一致。1950年代に生まれた概念で、いまでもオカルトっぽい印象がつきまとう。
ただ、この現象を心理学が扱い始めている。超常現象としてではなく、人間の認知と幸福感の問題として。
研究が示していること
2023年、Russo-Netzerらの研究チームが学術誌『Frontiers in Psychology』に論文を出した。600人以上の成人を対象に、シンクロニシティ体験の頻度と、そこに意味を見出す傾向を測定した調査だ。
結果から二つだけ拾う。
一つ目。調査対象者の全員が、少なくとも一度はシンクロニシティ的な体験を報告した。先行研究でも人口の22〜84%が同様の体験を持つとされている。珍しい体験ではない。
二つ目。偶然の一致に気づきやすく、そこに意味を見出す傾向が強い人ほど、人生満足度が高かった。 楽観性や「自分の人生には意味がある」という感覚が、その間を媒介していた。
偶然を意味として拾える人のほうが、幸せに近い。データはそう言っている。
ただし留保がいる。これは相関研究だ。「偶然に意味を感じるから幸せになる」のか、「幸せな人がそもそも偶然に気づきやすい」のか、因果の向きはわからない。どちらが先かは、この研究では決められない。それでも、偶然への感度と幸福感が結びついているという事実は残る。
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