新大久保でリアル「喫茶おじさん」
【 新大久保進化論 】
新大久保という街の週末は、鉄道も歩道もキャパオーバーしている。
第一義的に人間の数という物理的な要素だ。
JR駅の改札は1か所しかなく、そこは既に梗塞を起こしている。
歩道という毛細血管を行き交う人の流れは高粘度血症の様相だ。
軒を連ねる飲食店に群がり人気店の前にはうねった列ができ、
その道端で立ったまま、或いはしゃがみこんで、口の周りを汚し、
咀嚼し、屯している。
雑貨店にドラッグストア、八百屋に携帯ショップ、両替所に何らかの屋台。
歓声を上げながら小走りで通り過ぎる制服の女子高生のグループ。
携帯画面を凝視し俯きながら歩く2人組の中学生。小走りですれ違う首から
IDカードを下げた剃髪の男性。大きな荷物を肩にかけ子供を2人連れている
ヒジャブの女性。スーツケースを引っ張りながら先を急ぐ白人の旅行客。
病人の呼吸のように人を吐いては吸い込む古い雑居ビルの低い階段。
聞き取れない言語が十字砲火のように飛び交い、気を抜くとアッと言う間に
撃ちぬかれ引き裂かれる。「サラダボウル」と言えば聞こえはいい。しかし
現実世界はシンクの排水口にかけた水切りネットに溜まっている、滑った
ちりぢりの野菜クズのような様相だ。ルツボの中の溶融した金属のように
混ざり合ってはいない。東南アジアのどの国とも異なる、一種独特の沸々と
煮立っているようなエネルギーを持った街。それが「新大久保」の姿だ。
「Diversity」などと無機的な単語をスタイリッシュに口にして勘違いして
いると火傷をする。“多様性” とはそんな生易しいものではない。
少しでも生物世界を覗いてみれば解るはずだ。それはそれぞれの種が
命がけの生存競争の先に僅かに存在しうるものだということが。
つまりこの国の “多様性” の一つの進化の過程の途中段階の姿が、
今の「新大久保」なのだ・・・。
などと愚にもつかない思考に囚われてJR新大久保駅改札を通り抜け、
ガード下の人ごみに押されながら、横断歩道の人波にさらわれて
交差点を漂い渡って行く。
【 4 Seasons Christmas Cafe & Bar 】

「황영함니다」
ドアを開けて店内に入ると正面にカウンターがあった。
カウンター内に女性が2名。聞こえてきたのは韓国語。
(あぁ、韓国人経営のカフェなんだ)
“エスプレッソ” がメインのカフェという知識しかなく
入った店舗だったがいきなり韓国語の洗礼だ。
レジ前に立つと「ご注文の前にお好きな席をお決め下さい」
と席を先に取るように促された。
窓際のカウンター席をに行き、帽子とダウンを脱ぐ。
店内の客は皆女性だ。オッサン男子は私一人。
(予想はしていたが完全なアウェーだな… )

エスプレッソを注文しようとゆったりとレジへ向かう。
(私は焦ってなんかいませんよ。余裕ですよ… )
レジの女性ににっこり笑いかけながら注文をする。
「え~っと、このティラミスラテを… 」
「アイスですか?ホットですか?」
「ほ、ホットで」
(なんでラテにした?)
現金で支払ってレシートを貰い席に戻る。
(エスプレッソってなんで言わなかった?)
自分でもよく分からないがなぜか
メニューのティラミスラテを指さしていた。
(ま、いっか・・・)
なんかだいぶ予想と違うものが運ばれてきた

エスプレッソのラテにマスカルポーネチーズのムースにココアパウダーが
かかったティラミス風。ビスコッティ・サヴォイアルディが乗っていた。
こいつでムースを掬っていたらシュワシュワになってラテの中に沈んで
いってしまった。仕方ないのでストローを持ってきてラテと一緒に
なんとか食べることができた。こいつの正しい食べ方を教えて欲しい。
でもそれなりに美味しかった。エスプレッソは単体で頂くのベターかな。
30分ほどで退店。次の店へ。
【 シュベール since 1967 】

1967年創業の紛うことなき昭和の純喫茶だ。ショーケースの食品サンプルが
老舗の純喫茶感を否応なしに盛り上げている。入店してカウンターに座る。
ブレンド珈琲を注文したら1分ほどで出てきた。ある程度は落としてあるの
だろう。香りはそれなりに感じられ、味もやや渋みが立っているがさほど
劣化しているような違和感はない。回転は良さそうだ。

店内を見渡すと2〜4名の女性客が多い。子供連れも1組。奥の方に年配の
スーツ姿の3人客もいた。

駅に近いとはいえ、古い雑居ビルの2階の店だ。
抜けているテナントも多い。そんな昭和感満載の純喫茶に思いの外、
お客さんが入っているという事実に少し意外な感じを受けると同時に、
ふっと頬が緩むような嬉しさが込み上げてきたのは何故だろう。

地元民から長く支持されているのだろことは容易に想像がつく。
こういう店舗にはぜひこのまま頑張って営業し続けて貰いたい。
グランドメニューを置いておきます。

【 おまけ 】

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