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『君のクイズ』 小川哲 著 #読書感想文

小川哲『君のクイズ』を読み終えた。

クイズ番組の決勝で、対戦相手の本庄絆が問題が一文字も読まれないうちに正解し優勝する——そんな「ゼロ文字正答」という不可解な謎を、主人公・三島が解き明かしていく物語だ。

第76回日本推理作家協会賞を受賞し、2025年には漫画化、そして今年は映画化もされている。

映画の予告を何度か目にして気になっていたところに、Easakiさんのnote記事「【読書記録】こうやって作家は言葉を紡ぐ/小川哲」を読んで小川哲さんに興味を持ったことが決め手となり、購入に至った。


小川哲さんの作品を読むのはこれが初めてだったが、この設定を考える作者の着想にまず驚く。

クイズ大会決勝、最終問題で勝負が決まるその瞬間、問題文が一文字も読まれる前に対戦相手が正解してしまう。

それがなぜ可能だったのか——ヤラセ疑惑が渦巻く中でも、実際に本庄と戦った三島だけは本能的に単純なヤラセではないと感じ取り、ゼロ文字正答の謎を追い求めていく。

面白いのは、著者自身もこのトリックを書き始めた段階では、その答えを持っていなかったという点だ。

クイズを題材にした小説を書くと決めたとき、読者へのインパクトを考えて「ゼロ文字で問題に答える」という設定だけを先に決め、その理由は三島と一緒に小説を書きながら解き明かしていったのだという。

小説家ってすごいなと素直に思った。

それを知ったとき、三島の葛藤や内面のリアリティが文章から伝わってくる理由が少し見えた気がした。

主人公と同じように、作者自身もまた葛藤しながら書いていたのだ。

「ゼロ文字正答」には、それを実現可能にする理由がちゃんと用意されていた。

大会参加者は誰しもクイズに答え、相手に勝つことを目的に挑んでいると考えるものだが、本庄の真の目的はそこにはなかった。

大会が録画ではなく生放送だったこと、最終問題だけでなくそこに至るまでのすべての問題——それらを紐解き、重ね合わせることで、ひとつの答えが紡ぎ出されていく。

テーマをまず決め、そこから逆算してロジックを組み立て、ストーリーを作り上げる。

小説家って本当にすごい。

もっとも、これも考えようだとも思う。

書き始めの段階でトリックがすべて解明されている謎をテーマに据えたとしても、そのテーマ自体に引きがなければ作品を手に取ってはくれない。

最終的にきれいに収束するかどうかは別として、読者が読みたいと思える「テーマ」ありきで物語を書くというのは、実は合理的な発想でもある。これは仕事にも活かせそうだ。

そして『君のクイズ』は、物語として面白いだけでなく、クイズ番組やクイズプレイヤーの裏側・実態を描いた作品でもある。

クイズプレイヤーが日々何を考えてクイズに向き合っているのか、番組制作サイドが出題する問題一つひとつにどんなメッセージを込めているのか——そんなことに思いを馳せられるようになった気がする。

これからクイズ番組を見るときの見え方はまるで違うだろう。行間を読みながら、これまでより深い楽しみに辿り着けそうだ。

『君のクイズ』を読破した勢いのまま、小川哲さんの作品をもっと読みたくなり、直木賞受賞作『地図と拳』を衝動買いしてしまった。

ただし上下巻でなかなかのボリューム……いつになるか分からないが、また感想文を投稿できるよう頑張りたい。

ようこそ、我が家の積ん読へ!

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