『箱の中の羊』感想「難しくてよくわからん!きっと上質なんだろうな。」
今日は是枝裕和監督映画『箱の中の羊』の公開初日ということで、さっそく鑑賞してきたのである。
「公開初日に行くなんて是枝監督の大ファンか?!」と思われた読者の方もいるかもしれないが、そういうわけではない。
招待チケットを頂いていたのである。
ただ特にファンというわけではないと言っても、配信でそれなりに作品は観てきている。
『怪物』はかなり心にズシンと来る映画だったし、『海街diary』も目の保養になる映画であった。
今回の『箱の中の羊』は映画館で予告編を観る機会がとても多かった。
しかし…
完全に好みの問題だが、予告を観ても「うわぁ早く観たい」というテンションにはならなかった。
それでも是枝監督はやはり凄い監督だと思うし、せっかくチケットも頂いたたしということで足を運んできたのだが…
初日にも関わらず観客はカッチンを入れて4人程度であった。
映画館によってはきっと混んでいると思うので、きっとたまたまだったのであろう。
鑑賞後にロビーに出た時には、次の上映を待つお客がそれなりにいて安心した。
きっと夜の上映回はパンパンの満席であろう。
本格的に感想に入る前に記しておきたいことがある。
『箱の中の羊』の予告もそうだったのだが、なぜ公開前に映画のメイキングみたいな映像を予告で流すのだろうか。
キャストに撮影時の様子や作品への意気込みなどをインタビューしてるのだが、カッチンは鑑賞前にそんな映像は観たくないのである。
このインタビュー形式は『人はなぜラブレターを書くのか』の予告でも流れていた。
両方とも綾瀬はるかさんの主演映画だが、完全に偶然である。
ああいうのはブルーレイの特典に入れる映像で、余韻に浸りながら鑑賞後に観るのがいいのである。
完全に愚痴のようになってしまった…。
前置きが長くなってしまったが、そろそろ『箱の中の羊』の感想を記していくのである。
『箱の中の羊』あらすじ【ネタバレなし】
『建築家の妻と工務店の社長を務める夫は、2年前に息子のカケルを亡くしていた。
悲しみを抱えながら生活を営んでいる2人の元に、ヒューマノイドを作っている会社から案内が届く。
説明会に参加した夫婦はヒューマノイドのリアルな出来栄えに驚き、息子のカケルそっくりのヒューマノイドと共に暮らすことを決める。
妻はかなり乗り気であったが、夫は「あくまでも機械」という考えを持ち戸惑いながら生活していた。
ヒューマノイドのカケルは本当の家族のように時間を過ごすようになるが、ある出来事をきっかけに夫婦は息子の死と直面することになり…』
という感じのあらすじである。
『箱の中の羊』感想【ネタバレなし】
鑑賞後に調べてみたら、ヒューマノイドとは人間の身体の構造や動きを模倣して作られたロボットのことを言うらしい。
映画の中に登場するヒューマノイドのカケルは高性能のAIが搭載されていて、夫婦が事前に材料として用意した生前のカケルの映像や写真から、思い出をすべてインプットしているようであった。
最初にヒューマノイドを迎えた時には夫婦間に明らかな温度差があり、ルンルン状態の妻に対して夫は疑問を拭えない様子で、「妻が嬉しそうだから」という理由で賛成しているように見えた。
カケルの服を選んでいる妻の楽しそうな様子を見ながら安堵する夫の姿を見て、夫が妻を愛している様子が伝わってきた。
ヒューマノイドのカケルが家にやってきたばかりの時、あまりに過保護な妻を見て「これは…このまま狂っていくストーリーなのか?」と想像してしまったが、そういう展開ではなかった。
ヒューマノイドはご飯も食べないしお風呂にも入らないのだが、妻が旦那にご飯やお風呂の話しをしないように窘めた時は背中に冷たいものが走った。
夫は「僕は君の父親ではない」とヒューマノイドのカケルに伝え、自分を『パパ』ではなく『おじさん』と呼ぶように言うのだが、あまりにリアルなヒューマノイドを前にして本物のカケルと錯覚し始める。
狂っていくのかと心配になるほどヒューマノイドに対して過保護な妻と、「あいつはロボットだ」と自分に言い聞かせなければならなくなっている夫には共通点があって、それはカケルの死に対する後悔なのだと思った。
『箱の中の羊』感想【ネタバレあり】
この映画は「ヒューマノイドは悲しみや寂しさを紛らわす助けになるのか」というテーマなのかなと思っていたのだが、鑑賞してみたら全然違っていた。
もちろん一緒に住みだしてしばらくは、間違いなく寂しさを紛らわす役割を果たしていた。
ただカッチンはこの状況を少し冷めた目で見てしまった。
寂しさを紛らわせられるのは短期間だけで、結果的にもっと大きい寂しさに襲われるのでは?と思えて仕方なかったのである。
近所の他の子供たちが成長していくのに、自分の子供だけ成長しないことに物足りなさを感じ始めるかもしれない。
人間が幸せに慣れてもっともっととなってしまうのは、よく言われていることである。
カッチンは『箱の中の羊』を鑑賞しながら、映画『レンタルファミリー』を思い出していた。
『レンタルファミリー』を観た時も「これは後先考えずに今だけ良ければいいっていう考えだよなぁ」と思ったのである。
別にそれが悪いことと言っているわけではない。
ただ後々もっとキツイ思いをするのでは?とどうしても思ってしまうのだ。
しかし『箱の中の羊』は違った。
『箱の中の羊』はヒューマノイドと一緒に過ごすことで、過去を乗り越えるきっかけが生まれる話しなのである。
ヒューマノイドのカケルと接している中で、夫婦は『息子の死の原因』を無意識に誰かのせいにしようとしていたことに気が付く。
大悟さん演じる夫は息子の保育園の迎えに行くのが遅れ、その直後に息子を亡くしたため、ずっと後悔の念にとらわれていた。
夫がヒューマノイドのカケルに謝るシーンがあり、その後の夫婦の会話の中で「わしはもうカケルに謝れたから」と話しているのが印象的であった。
妻は息子を亡くした日、母親が約束もなく自宅にやってきたことで迎えに行けなくなり、夫に迎えを頼んでいた。
そういう経緯から「あの時に母親さえ来なければ」と心の奥底で憎むようになっていた。
子供を失うという大きすぎる悲しみの中で、こういう思考になってしまうのは仕方ないとも思う。
夫婦はヒューマノイドのカケルを迎えたことで、息子の死に正面から向き合うことができたのである。
映画の中ではヒューマノイドたちが捨てられたり、ひどい扱いを受ける描写もあり、人間の身勝手さを表わしているシーンは胸が痛くなった。
綾瀬はるかさん演じる妻も、自分の仕事が思うようにいかない時期に、ヒューマノイドのカケルに当たってしまい、ヒューマノイド契約を終了すると口に出してしまう。
ヒューマノイドたちは自分たちで暮らすことを考え出し、カケルもヒューマノイド集団に入って人間から自立しようとする。
結果的に夫婦はヒューマノイド軍団に協力する展開になるのだが、このあたりからクライマックスまでのシーンは個人的に刺さらなかった。
ヒューマノイドが意思を持つようになり、山奥に家を作って自分たちだけで暮らしていく感じになるのだが、人間の子供も混ざっていたりしてカッチン的にはよくわからない感じであった。
正直「さすがに無理なのでは?」と思ってしまった。
そういえばカケルは1度故障した時にヒューマノイドを提供している施設で修理を受けているのだが、その時に修理を行う人間がカケルのGPSが抜かれた形跡に気付くシーンがあった。
明らかに「おや?」という顔をしていたので、カッチンはてっきり新しいGPSを入れ直したと思っていたのだが、結果的にGPSは取り出されたままだった。
この一連のシーンはまったく理解できていない…
※Amazonのアソシエイトとして[カッチンの映画で喋らないと。]は適格販売により収入を得ています。
『箱の中の羊』はヒューマノイドを通して家族が悲しみを乗り越えて再生していく映画とまとめたいところだが、ヒューマノイドたちの物語の要素もかなりあったように思える。
カッチン的には「家族が前を向き、ヒューマノイドが役割を終えて帰っていく」という結末がわかりやすかった気がするが、そんな単純な話しではなかった。
きっとカッチンがわかっていないメッセージであったり意味があるのであろう。
上質な映画という印象の作品だった。
『箱の中の羊』は大悟さんの出演が話題になった映画でもあったが、とっても素敵な演技を見せてくれていた。
木材の競りをやっているシーンがあるのだが、その時に見せている笑顔がとても素敵だった。
正直そこまで刺さらない映画だったのだが、きっと理解しきれていないカッチンに問題があるのであろう。
感じ方は人それぞれなので、気になった人はぜひ鑑賞してみてほしい。
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