フランス人が絶対に言わない、日本人がよく使うあの口癖
こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
在仏14年超、8人の子を育てる日本人ワーキングマザー、トレオレル美智子さんによると、私たち日本人が、良かれと思って、相手をいたわったり、寄り添ったり、共感するつもりで使っている、ある1つの言葉が、フランス人は絶対使わないと言います。
その意図や意味を知ると、私たち日本人も意識してみたら、雰囲気や毎日が変わっていいかも、と思えてきます。
トレオレル美智子さんの新刊『フランス人の気楽な働き方、全力の休み方』の中で、日本人がよく使うが、フランス人が絶対に使わない、ある1つの言葉と、その意図や意味について詳しく解説しています。そこで今回は、同書の中からその該当箇所を一部編集して公開します。

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優しい言葉なのに、疲れてしまう言葉
日本人の多くが一日に最低でも1回、平均5回、多いときには10回は言っている言葉をご存じだろうか。
それは、「大変」である。
この言葉は、良い意味にも悪い意味にも、使うことができる。私の印象では決して、いつもネガティブというわけではなく、むしろその逆で、相手をいたわるために使われている場面が多いと思う。そう、皆さん優しいのだ。相手を思いやって使われる、日本人が使う「大変」は悪い意味ではない。
例えばこんなシーンを想像してみてほしい。
ショッピングモールで偶然会った、顔見知りの女性。彼女はベビーカーですやすや眠る赤ちゃんを連れている。
そこで、こう声をかける。
「こんにちは、お久しぶり。わぁ、赤ちゃん何カ月? かわいいね」
お決まりの質問である。ママである女性は答える。
「2カ月になったところなのよ」
生後2カ月の赤ちゃんを育てている女性。ここでよくかけられる言葉と言えば、
「そうなの、大変なときね。夜は眠れている?」
日本では多くの人が、このようにママをいたわる言葉をかける。そこでよく使われる言葉が、「大変ね」である。
ここでは、「大変さ」についての質問をされたため、答える側は、「大変さ」について説明をすることになる。
「もう毎日寝不足よ。2時間おきに泣くから、夜中に何度も授乳しているのよ。しかも、昼にまとめて寝てくれるというわけでもないから、本当に大変!」
こうして会話は、「大変」という言葉をきっかけに、「大変」を中心とした会話となっていく。
実は私自身も、日本で育児をしていた頃に、この経験を何度もした。
育児は大変なものであると思っていたし、実際に寝不足で、孤独を感じ、気分も落ち込んでいた。
そんなとき、「大変ね」と声をかけていただくたび、本当にどれほど大変なのかとその人相手に一生懸命説明をした。
今思えば、その人に必死に訴えたところで、赤ちゃんがよく寝るようになるわけでも、私の疲れが取れるわけでもなかった。むしろ「大変だ」と表現するたびに、改めてその困難を見聞きし、疲れが倍増するような気さえした。
かける言葉が変われば、人も空気も変わる
相手をいたわるつもりで言っているのに、その相手がもっと疲れてしまう言葉。私たち日本人は、あらゆる場面でこの「大変」という言葉を使っている。
「それは、大変だったね」
「本当に、大変だ」
「大変だけど、頑張ろう」
私自身、この「大変」という言葉を口にした後、元気になったり、楽しい気分になったことはなかった。それなのに、以前の私は、これ以外の話し方を知らなかったため、「大変だ」と言い続けていた。
しかし、フランスに来てから困ったことになった。誰も「大変」という言葉を使わないのだ。
では、フランス人たちは、「大変」ではなく、どんな言葉を使っているのか。
先ほどと同じく、赤ちゃんを連れたママに出会うシーンで解説しよう。
「わぁ、赤ちゃん、かわいすぎる~! 何カ月?」
「2カ月よ」
「2カ月!? もうかわいくてたまらないでしょ~! ほんと、ものすごい美人さんね!」
他には、
「赤ちゃん、何カ月?」
「8カ月よ」
「ふふふ、8カ月かぁ~。ちゃんとママに、優しくしてるかなー?」
「いやいやー、ほんとなんでも口に入れる、すでにいたずらっ子よ」
「あら、もうすでにいたずらっ子なの? このいたずらっ子ちゃんったら、かわいいわ~」
赤ちゃんと出会ったときの会話は、どれも笑顔の絶えない幸せで楽しいものとなる。
出会ったその人と、赤ちゃんを囲んで
「カワイイ~!」「カワイイ~!」
と、ひたすらはしゃぐ。
スーパーで買い物中に偶然出会った人、役所の待合室で一緒になった人、老若男女とたんに表情が柔らかくなり、顔をくしゃくしゃにして、変顔にまでなったりして、赤ちゃん相手にはしゃぎ出す。その場に一人赤ちゃんがいるだけで、瞬く間に笑顔の連鎖が起きて、明るくなる。一緒に笑い合える楽しい時間だ。
実際に振り返ってみると、「大変」以外のほうが多い
このようにフランスでは、会話で「大変ね」と言わずに、ポジティブな言葉をかけ、言われた人も、まわりで聞いている人たちも、たちまちみんなを幸せにする。
だけど正直なところ、フランスに来たばかりの頃の私は、フランス人たちのノリがわからなかった。そのため、赤ちゃんを連れて外を歩いているときに声をかけられれば、「ツラい思いしているのを、わかってほしい」という思いが、何より勝っていた。
しかし、だんだんフランス生活に慣れていくうちに、気がついたことがある。
「赤ちゃんを育てる」ことは、寝不足だったり、自由がなかったり、孤独であったりと、ツラいことがたくさんある。
大きくなったわが子を前にして、「この子が赤ちゃんだったとき、どんな日々を過ごしていたかな」 と思い出そうとすると、一番に頭の中に浮かぶのは、「寝不足できつかったな~」ということだ。
だけど、その当時の写真を見返してみると、ハッとする。
赤ちゃんの笑顔の写真が何枚もある。笑顔以外の、ムスッとした表情の写真などを見ると、よくその顔を見ながら、「なんでそんな顔、してるのよ~」と笑ったなと、思い出し笑いをする。
たまに、自分が一緒に写っている写真が出てくる。その写真の中の私は笑顔だ。
「あれ? なんだ、私は笑っていたのか」
確かに、寝不足だったり、孤独だったり、たくさん泣かれて体力も気力も限界になっていたときが何度もあった。だけど、実際はそれ以上に、うれしかったり、幸せを感じたり、大笑いした時間が何倍もあったのだ。
私はそれからフランス風に、育児に関して話すとき、育児の幸せな面について話すようになった。そうして会話をするごとに幸せな気持ちになるほうが、また今日の育児を頑張るための力となることを知った。
「大変」をやめるだけで、毎日が変わる
「大変」という言葉を使うのをやめるだけで変わるのは、育児に関する会話だけではない。
日常のすべての会話において、フランスで「大変ね」「大変だ」が使用されていないことから、私も「大変」を使わない会話を練習するようになった。
「来月、引っ越しをするのよ」
には、
「わぁ、荷造りなど大変ね」
ではなく、
「へぇ、いいね! 次はどんな家に住むの?」
「週末は、娘の友人たちを招待して、お泊り会をするわ」
には、
「それは、準備が大変ね」
ではなく、
「いいね! みんな大喜びするだろうね」
「昨日は仕事が終わるのが遅くて、慌てて帰って夕食の支度をしたわ」
には、
「それは、大変だったね」
ではなく、
「すごい! よくやった! 天才!」
このように、一日に1回も「大変」を言わない話し方をしているうちに、誰とどんな会話をしても、疲れることがなくなった。
いつも笑顔で応えて、笑顔で会話を終えることができる。相手も笑顔になってくれる。
もしもあなたが昨日も今日も「大変」という言葉を一度でも口にしていたら、試しに一カ月間やめてみることをおすすめしたい。
この言葉を使わないだけで、きっと、あなたの返事も、考えも、生き方までも、変わってくるはずだから。
〈著者プロフィール〉
トレオレル美智子
フランス在住14年の8人子育てワーキングマザー。
1986年滋賀県生まれ。一度目の結婚で二児を設けるが、良き妻、良き母でいようと尽くした結果、夫がモラハラDV化し、親族らにより強制離婚。東京でシングルマザー生活を送る。後にフランス人と再婚して渡仏。5人を出産し、7人の母として暮らしていたところ、フランス語が話せないまま突然またもやシングルマザーとなる。職なし、貯金ゼロ、公共料金の払い方も知らないところから、日仏辞書を片手に訪ね歩き生活を立て直す。子どもには不自由な思いをさせないようにと、働きながらも家事の手を抜かず、自分のことを後回しにしていたが、それを知ったフランス人マダムから「どうして自分の人生を楽しまないの!」と怒られる。「休む」ことを目的に働くのではなく、「楽しむ」ことを目的に一日中行動するようになる。その結果、仕事もプライベートもペースを崩すことなく両方が充実し、フランス人と三度目の結婚。その中で出会ったフランス人たちの些細な一言や行動に対してインタビューを重ね、「フランス人の楽に幸せに成功し続ける生き方」をメソッド化。オンライン・リアル(日本)での講演やセミナーを多数実施している。
【著者の壮絶な半生を描いた記事はこちら】(文春オンライン)
https://bunshun.jp/articles/-/89388
https://bunshun.jp/articles/-/89389
https://bunshun.jp/articles/-/89390
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