本日の本請け(2026.1月)
読んだものと飲んだものなど。
『星のうた』左右社編集部(左右社)
いろんな歌人が詠んだ「星」にまつわる短歌を100首集めたアンソロジー。このシリーズ他にもあって「雨」や「花」がテーマのものも。
短歌って装丁や本のつくりそのものが素敵で手にしたい本が多くてよいですよね!
全部欲しくなっちゃいそうだから手を出してなかったんですが、SNSで見かけた星の短歌が良かったので星だけ買おうかなと購入。
巻末に作者一覧もあるので、これいいな!と思った人のを追いかけられるのも良い!

好きだったもの。
この<済>のふせんは落ちたやつですか星に貼られてあるやつですか
意味もなく光ってる星 きみはよくその無根拠で助けてくれた
「あのほしが木星です」と理科教師 深夜職場を後にするとき
そうあれがこの世でいちばん明るい星 お寿司のパックの半額シール
冥王星みつけた天文学者からすこしさみしさをわけてもらおう
『巷説百物語』京極夏彦(角川文庫)
都市伝説解体センターとのコラボ表紙がある……ということで、この京極夏彦のシリーズ読んでなかったしと思って購入してみました。
昔ドラマになってた記憶がある。

江戸時代に、又市やおぎんという同情人物を中心に、妖怪のしわざに見立てて事件を煙に巻いてしまうという顛末が戯作者の百介の語りで語られていく連作短編集。ひとつひとつはそれだけでも読めます。
京極堂シリーズが、怪異を論理で解き明かすのに対し、人々の心の闇、みたいなものを妖怪で説明しちゃって解決するという、逆のものになっています。
最後の「帷子辻」で又市が語る目を覚ましてやった女、というのは彼の母親のことなんだろうか。
最後まで読んで、なんだか、都市伝説解体センターの親和性を感じてしまってなるほどとひとりで勝手になってしまった。
『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』五条紀夫(角川文庫)
SNSで見かけて買ってみた。
最近読んだヘンなミステリ、『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』めっちゃ面白かったな。『走れメロス』の名場面でいちいち殺人事件が起きて巻き込まれ、イマジナリー・セリヌンティウスと共に解決しながら先を急ぐ馬鹿みたいな話なんですけども……https://t.co/Mnli1A8L5H
— でるた (@delta0401) November 27, 2025

ネタバレなしの感想。
個人的にはあんまりハマりませんでした。ずっとノリきれなくて、時間かかっちゃいました。
最初の推理からの実は……と真実の推理が出てくるというパターンなのですが、その最初の推理と真実の推理の「本当っぽさ」が同じくらいに感じられるんです。なので、「実は……」感がない。舞台が舞台だけに、科学技術もないし。本当にこれが真実なの?ともやもやしっぱなしで、「読者への挑戦状」もまともに考える気が起きずに終わってしまった。
さくっと読めてくすっと笑えるし、最後の「人は見たいものだけを見る」とかも身につまされる感はある。あと、元ネタへの経緯と舞台になっている時代をよく調べて書いている誠実さも感じる。でもハマりきれませんでした。
『spring another season』恩田陸(筑摩書房)
以前出たバレエ小説『spring』の短編集。
『spring』のとき期間限定でしか見られなかった短編も収録されてよかったです!期間過ぎてから読めなかった人の絶望をどうしても考えてしまうので……。

「石の花」がよかった。春とフランツがふたりの関係性を表すことばを探すシーンが好きだった。春の晩年が読めるとは。
なんかでも、「選ばれる」人たちの話を読んで、今の自分は面白いかというと、あんまりそうでもないからなあ、という気持ちもあった。
今回は付録として、バレエの劇があったときに付いてそうなプログラムも付いていて。紙の本ならではの特典としてちょうどいい塩梅でした。

『英米文学のわからない言葉』金原瑞人(左右社)
SNSで見かけた本なのだけど、「アルコーヴ」という言葉に反応しました。
実は『クララとお日様』を英語で読もうとしていて、半分くらいまで行って未だ放置中なんですが、最初に「アルコーヴ」が出てきてわからなくて積みかけたんですよね(笑)。気になって購入しちゃいました。

金原さんが翻訳する中で出てきた、翻訳の話から個人的なエピソードまで。
「ターキッシュデライト」や「髪」、「ハート型の顔」「獅子鼻、鷲鼻」「ひよこ豆」っていうのは読んだときに出てきたことあるなあって思ってなるほどと膝を打ちました。
特に「そうだったのか〜」と思ったのはスコーンの章でした。
試し読みもここからできます。
『なぜ日本文学は英米で人気があるのか』鴻巣友季子(ハヤカワ新書)
『英米文学のわからない言葉』をちょうど読んでいたので、同じ「英米」がタイトルにあるこの本も時節柄いいかなと思って読んでみました。

『BUTTER』や『ババヤガの夜』がなぜ今世界でも人気なのか、解説しています。
いろいろ興味深かったです。
目下、日本小説で翻訳されやすいのは、犯罪・ミステリー、同時代の女性作家、古典的な男性作家、そして猫などの出てくる癒し系小説、ほぼこの 4カテゴリーに限られるというのだ。
翻訳書に関して英米の読者は読みやすさを最優先する傾向が強い。「訳文は読みやすいほうがいい」どころではなく、「翻訳だと気づかせないでくれ」なのである。トランスレーション・スタディーズでは、訳文の忠実性に対して訳文の自然さ・読みやすさを「透明性」と呼ぶ。つまり、読みやすければ読みやすいほど翻訳の介在を忘れるため、翻訳(者)が消えて透明不可視になるという理論である。 それは原作のもつ文化、言語、風習、歴史などの特徴を消し去って、訳文側のそれに同化もしくは馴化することでもある。強大な言語が弱小の言語にそれを行う場合、言語を通した一種の支配と抑圧にもなり得る。
しかしいくらイタリック体を使わなくても、読者は未知の単語が出てくるところで一々つっかえ、立ち止まる。このような翻訳法は、自国の文化や言語に引き寄せて訳す「同化翻訳」に対して、原作の文化や言語がもつ異質性を強調する「異化翻訳」と呼ばれる。イタリック体の不使用で字面は一見均されていても、異言語を翻訳せず、注釈も付けないというアプローチは、かなり大胆な異化翻訳の一種と言えるだろう。
わかりやすいことがイコールいいこととばかりは言えないところが考えさせられました。
以前読んでいて好きだった、『マーリ・アルメイダの七つの月』が話題になった仕組みも知れて面白かった。
ここに出てきた『心の灯り』を読んでみたい。
