もう1人のBチェアマン 堀井幹也理事長のB3リーグ、その「謎」?
二つの組織
今回は、お硬い話、あまり知られていない話題を。
日本のプロバスケットボールは、10年前のリーグ統合、再編を経て、一見すると整然としたピラミッド構造を持つリーグへと変身したように見えます。しかし、その足元には、いまだに「ねじれ」が存在します。そのひとつが、一般社団法人のB3リーグと、その理事長、すなわちチェアマンである堀井幹也氏の存在です。島田慎二チェアマンではありません。
見えにくい「もう一つの統治軸」
実は、B1、B2、B3は、ひとつの組織ではありません。B1・B2を運営する日本バスケットボール協会傘下の「公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」と、B3を運営する「一般社団法人ジャパン・バスケットボール・リーグ」という別法人がある事を、皆さんはご存知でしたか。
Bリーグ(B1とB2)は、公益社団法人の社会貢献(社会的意義)として、プロバスケ競技統治・普及とフランチャイズ制商業設計を一体的に担う、中央集権型モデルを構築してきました。地方自治体を巻き込んで「地域創生」を地道にしています。端的に言えば、少子化の地方自治体に、夢のアリーナを税金で作らせたりします。民間プロクラブにお金儲けをさせます。
理事会が、最高意思決定機関であり、事務局とチェアマンが次々と策を施して来ました。大企業を親会社やスポンサーに持つ各クラブと社員、選手らは、黙ってついて来ました。やっと最近になって、選手会・労働組合が誕生したぐらいです。成熟したJリーグとは、いろいろ違います。B1は26クラブ、B2は14クラブで、売上げ最高は、千葉ジェッツで50億円を越え、ホーム30試合で30万人を動員します。
一方で、B3リーグは、一般社団法人として別法人に置かれ、制度上は「外部」に位置付けられます。理事会があり、自由に公益の制限なく活動することができます。現在、大小15クラブが所属して、リーグ平均の売上げは、4億円弱。資金面での制約、大きな格差があり、コーチを含め補強が思うように進まないクラブが大半です。資金力のあるクラブは、昇格した。
現実には、この二つの分離は完全ではありません。B3の理事長・チェアマンである堀井幹也氏は、日本バスケットボール界の中で独立した存在ではなく、日本バスケットボール協会の副会長であり、むしろ“理事長”としてフル機能しています。つまり、法人は分かれていても、人的・政策的には、親のバスケ協会を介して繋がっています。
この点がまず第一の「謎」ですね。
なぜ、完全に分離しないのか。なぜ、B3だけ統合しないのか。

B3東京ユナイテッド
B3という「緩衝受け皿」
2016年にBリーグ発足と同時に始まったB3リーグは、Jリーグ発足20年後に出来たJ3とは違います。単なる3部リーグではありません。
むしろ、
・実業団リーグ(アマチュア)からプロへの移行段階クラブ
・経営基盤が未成熟なプロクラブ
・地域創生を謳う生まれたての地域のプロクラブ
といった、Bリーグ創設時の様々なクラブの救済の受け皿の役割を背負ってきました。
クラブの未熟さと多様性ゆえに、B3は「B1.B2制度の外」に置かれました。公益社団法人としての厳格な枠内では扱いきれない、経営の不安定性と不確実性を内包しているからです。
しかしその一方で、完全に外部化すると、統制と統一が取れない。
そこで必要とされたのが、「つながった人」だった。昇降格ルールで、B2と繋がるだけでは無く。
JBAの幹部という存在は、この“半独立領域”を維持するための、いわば調整役、統轄者と見ることができます。なぜか表に出てこないリーダーです。
ガバナンスの曖昧さ
ここで気になるのが、二つの組織のガバナンスです。
1.資金は、民間企業クラブ側が拠出する(アリーナは自治体拠出のケースがほとんど)
2.制度設計、ライセンスはリーグ側(協会)が主導する
3.経営責任は、フランチャイジーの民間企業クラブ側にある
B3リーグは、同じ構造で、その外にあります。
この構造では、責任と権限の所在が別で、曖昧になります。
特に、経営が小規模で、不安定なクラブが多いB3においては、本部に「支援を求めるクラブ側」と、フランチャイズの「統制管理するリーグ側」が、近接し過ぎているという状況が生まれ易い。
これは一般的な企業統治とは、明らかに異なるでしょう。むしろ、規制機関に規制されるクラブが、同一エコシステム内で、寄生しているような構造です。事実、売上げが1億円でも、このリーグではやっていけていました。

B3東京ユナイテッド
なぜこのような構造が許容されたのか
答えはシンプルです。
「それでも、当時は必要だったから」。
日本のバスケットボール界は、協会の失態により、リーグ分裂、FIBA勧告という大失敗を経験しています。その反省から、完全な自由競争(資本主義的)でも、完全な統制(社会主義的)でもない「救済の中間領域」を制度的に、早期に確保する必要があった。国のお墨付きも必要だった。
切出された一般社団法人B3は、そのための最終安全弁であり、プロアマ混在の実験的な場であり、緩衝材的受け皿でした。
そして、協会から送り込まれた理事長は、その曖昧な領域を維持するための“使いの者”だったと言えます。
B3は、成功したのかの論議は、またの機会に。
この10年間で、実業団チーム 大塚商会(越谷アルファーズ)のように、B3、B2、B1,そしてB.ONEと言う事例もあります。元bjリーグ 東京サンレーヴスの早期撤退や、東京エクセレンスの横浜移転、実業団系のトヨタ合成は撤退しました。長崎のような地元新規クラブの成功事例もあります(B3からBプレミア)。元bjリーグ名門 さいたまブロンコスのdipによる買収もありました。
もはや外国人選手と、資金力次第の完全なプロリーグです。それが欠けているクラブは、B3を巣立っていけない。もう資金力のあるオーナーの経営力の時代です。

B1琉球ゴールデンキングス
B.革新へ その役割は終わりつつあるのか
秋のB.LEAGUE PREMIERのリーグ再編により、B3は、B.NEXTとして公益社団法人の内部に取り込まれるはずです。ここが第二の「謎」です。
JBA会長とBリーグチェアマンは、B3からB.ONEへ、すべてのクラブに、参入条件をクリアして、昇格して欲しかったが、三重をはじめ4クラブが、特別ルールでも未達で昇格参入を失敗しました。その結果、一般社団法人B3は、消滅出来ませんでしたが。
これは、
分離統治による管理 の限界から
内包による統制 の強化
新方針への転換を意味します。
なぜ、今なのか?
市場が成熟したからか。島田チェアマンから、B3取り込みの説明は無いと思います。
結局、B3という存在、そしてその理事長の役割もまた、過渡的なものだったのでしょう。
しかし、公益社団法人に吸収合併されれば、不安定、不確実性は、許されない。そこを、リーグ側はどうやって折り合いをつけて行くのでしょうか。
ライセンス制のもと、未熟な目標未達クラブに対して、勧告、そしてライセンス剥奪があるのか。はたまた、クラブ買収など、新たな投資家が運良く救済してくれますか。マネーゲーム、リーグ運営権を持てない魅力的では無いクラブ投資案件に。アリーナ不動産業には、B1は魅力的に映るはず。
未達の弱者が、規制を人質に取る構造にならないか心配です。

結語 Bの「謎」とは
B3リーグの謎とは、組織構造の不備ではありません。それはむしろ、未成熟な不安定市場をどう統治するかという問題に対する、協会の苦肉の解答でありました。
一般社団法人B3という存在は、その暫定解を現実の運営として成立させるための“暫定リーグ”だった。
明確に設計された制度ではなく、安定を要する公益社団法人B1.B2リーグがリスクを回避するため、現実に適応するための過渡期の分割運用であリました。
そこにこそ、公益社団法人Bリーグの本質的な第三の「Bの謎」があります。
ではなぜ、一般社団法人ではなく、公益社団法人なのか? なぜ、NBAのような民間の営利法人ではなく、独自の公益法人のままなのか? 答えは明白でしょう。
八村塁選手の言葉。そして、夢のアリーナ問題。
4月24日から、上位8チームによるB3プレイオフが始まります。出来たばかりの立派な県立アリーナを持つ香川ファイブアローズが圧倒的に強い。残り2試合。上位3チームでのホーム開催は決定です。最後のB3を盛り上げて下さい。
順位 チーム 勝 敗 勝率
1 香川ファイブアローズ 42 8 0.840
2 徳島ガンバロウズ 38 12 0.760
3 さいたまブロンコス 38 12 0.760
4 トライフープ岡山 33 17 0.660
5 新潟アルビレックスBB 31 19 0.620
6 立川ダイス 28 22 0.560
7 東京ユナイテッド 29 23 0.557
8 金沢武士団 26 24 0.520
さて、4クラブの新B.NEXTでは、プレイオフがあるのでしょうか。
投資を妨げる、権限と責任の「ねじれ」、不公平な対戦組み合わせ・カーディングの「ねじれ」など、NBAではあり得ない「ねじれ」が残っています。B.革新では、どうなるのでしょうか。
お読みいただきありがとうございます。
誰も書かないコトをnoteするをモットーに、書いています。
参考
