Photo by
mokohan_kojika
Intermezzo im Wasser|シロクマ文芸部《水の音》
行動は十代の筆、感情が現在の加筆という、キメラ小説。というセルフパスティーシュの第二段、はじめます。まずはその鍵になるピースをひとつ。
水の音の調性が、ふと変わる。
ユニットバスのシャワーの下で。
まるで、メジャーの和音が湯船の底へ沈み、そのまま押し潰されてマイナーに変質するように。
水粒は、湯気の向こうで、下へ落ちているはずなのに、なぜか水底から湧き上がる泡の揺らぎにも似ていた。
そのくぐもった泡の一粒一粒が、心の奥底の、さらにその奥の、触れてはならぬ層に、ぷつぷつと触れていく。
その禁忌の刺激が、心の底でずっと蠢いていた影を、満たしていく。ああ、わたしは、心の暗くて深いところに、水の記憶そのものを持っているのかもしれない。
◇
水底の暗い岩屋の奥で深い眠りについていた吾は、そのとき、ゆっくり覚醒した。
吾の空蝉が、水粒のようなものを全身に纏わらせておる。
実によい心持ちだ。
曖昧であった自我が浮上する。どれほど眠っておったのだろうか。
この岩屋を満たす液体は、音を鈍らせ、曖昧にする。
空蝉の鼻歌が、いささか調子っ外れであるな。
吾は、その液体の粘度を、ほんのわずかだけ重くした。
それだけで、空蝉の外れた音に、短調の規律が生まれた。
#黒いかいぶつ #少し変わった友情 #チャイコフスキー #ブラームス #井伏鱒二 #回想 #女性主人公 #ガールズラブ #音楽的散文 #セルフパスティーシュ #黒歴史 #原初 #わたくさす節
▼セルフパスティーシュのスゝメ|青にさり気なく赤を混ぜ込む試み
いいなと思ったら応援しよう!
最後までお付き合いいただきありがとうございました。皆様からのサポートは、登山の際の安全装備の調達に使わせていただきます。登山はわたしの創作の源──応援よろしくお願いいたします。