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die Freundschaft ──友情──|はじめに


◇帯文

その頃のわたしは、心の内に、大きな怪物を、持て余し気味に飼っていた。


◇かいせつ

十代の頃に書いた小説が見つかって、ひとしきり悶絶した。ということは既に書いた。
あの時分だけの不器用な熱は、恥ずかしくもあり、羨ましくもある。
いまではもう絶対に書けない、とも思った。

だが、わたしはひねくれ者ゆえに、こうも考えるのだ。
近頃は漱石だの太宰だのと文体模写なる遊戯に耽っているのだから、
その末裔に、苟も若かりし頃の自分を加えればよいだけのことではないか。

あの時分の自分をしれっと模倣し、当時は書けなかった技巧を散りばめてみては如何。小っ恥ずかしくていまでは書けない独白も、当時の自分に責任転嫁してしまえばよろしい。

今回は、核心の物語を、構成を変えずに最低限の言の葉だけで整えてみた。
つまり、行動は十代の筆、感情が現在の加筆という、キメラ小説である。
ただの仄かな百合物語が、自我の膨張と破裂、そして再生の物語になったではないか。
──清潔な群青の影に滲出し、仄香る紫紺を帯びた情念。
どんなに控えめに言っても、最高の倒錯であり伽樂である。あやしうほどに、ものぐるほし。

もちろん、すべてを書き直せば、青い影を今様に染め上げることはできる。
しかし、それをやっても、この小説は完成しない。
なぜなら、あの頃の思いを乗せて書いた筆こそ、ほんものだからだ。
時代の積層が目立てばこそ、キメラはなほうつくし。


◇ 登場する面々

  • 村瀬沙智子:内向的な性格の大学2年生。コーヒーとシャワーが好き。

  • 荒井麻紀:外交的な性格の大学2年生。経営学が苦手な経済学部。


◇ あらすじ

星を見るたびに、今でもわたしは思い出す。
これは、四半世紀も前、わたしがまだほんの子どもだった頃の話だ。
大学生活の片隅で、わたしは、大きな怪物を持て余し気味に飼っていた。
鳥籠のような部屋に入り込んだ黒猫との友情は、その影を少しずつ変えていく。
旧式電話のベル、コーヒーの香り、ブラームスの交響曲。歓喜の歌。
日常の音が、心の輪郭を静かに整えていった。
わたしは、あの冬に芽生えた、ふたりの物語を回想する。
影と友情が交差する、音楽的散文の一篇。
サンショウウオの携帯ストラップが、微かに揺れた。

わたくさす謹製、セルフパスティーシュの最新作──「die Freundschaft」
その冬の影が、いま、静かに幕を開ける。


◇ 目次

  • はじめに

  • Prolog

  • Generalpause

  • Satz I 黒猫が入り込んだ鳥籠

  • Intermezzo im Wasser

  • Satz II Pathétique

  • Satz III ふたり

  • Satz IV Freude

  • Epilog

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