見出し画像

永谷園(炒飯の素)に勝負を挑む

永谷園のやつ、ちょっと調子に乗ってんのちゃう。

「チャーハンの素なら永谷園」というメロディが頭をよぎっている。
きっとキダ・タロー師匠だろう。

知らんけど。

それに勝負を挑む。

炒飯を極めつつある現在だ。昼食などにて、炒飯を星の数ほど作った。
うまいタイミングは知っている。タイミング、である。
卵を炒める、ご飯を入れる、ネギ、焼き豚、調味料を入れる。
炒飯にコツがあるとすれば、タイミングなのだと思っている。
量などは、レシピ本でなんとかなる。
料理のうまさは結局タイミング、というわけで。

永谷園に勝負を挑みたい。
僕は主夫として(違うけど)、培った技術を惜しみなく使ってやる。
出し惜しみはしない。
俺を幽閉した9年間。呪術廻戦であったよね、あれ、かっこいいよね。ロボのやつね、叶わなかったけど。

「挑んでやるよ、こいよ、おい、怖がってんのか、ああん?」

である。

正々堂々やってやる。
永谷園の説明通りの作り方でまず作ってみる。
なるほど、味は確かにうまい。これはみんなが好きな味である。
そうか敵は、時間と労力を惜しみ、そして資金も投じ、研究してここに到達したわけだ。
彼の30年ほどの歴史が、このチャーハンの素に凝縮されていたなんて。僕は今まで気づかなかった。

そして咀嚼してみる。永谷園のチャーハンをしっかりと咀嚼して、食べてみる。
これはこれで何も知らない人が、ただこの粉をふりかけご飯を食べたとしてもうまいようになっている。そういう潔さがあった。ここにどう挑むか、それはもう僕、つまり自分との戦いである。永谷園と僕との戦いではない。
永谷園は永谷園としての実力を発揮している。そこに勝負を挑む気は無い。
そうではなく、僕は僕自身のチャーハンを極めなければならないのだ。

そうだ、僕のチャーハンをここで出さなければ、永谷園のチャーハンにもろとも引き込まれ、飲み込まれて、永谷園のチャーハンになってしまう。
僕は永谷園のチャーハンの養分となって、この先にチャーハンとして過ごさなければならない。
チャーハンの一生など、たかが知れている。30分くらいなものだ。いや、もっと短いかもしれん。15分ぐらいの運命だ。

そうならないために、僕は自分のチャーハンをここで出さなければならないのだ。

そして、少なめに作った永谷園のチャーハンである。
ここから自分のチャーハンを披露し、家族に振る舞うわけである。
僕自身が比べるものではない。僕は必ず自分に肩入れしてしまう。
永谷園のチャーハンをリスペクトすることなく、「こんなもの所詮、市販さ」と切り捨てて、自分の手作りチャーハンを褒めてしまうに決まっている。

だから、客観的な視点が必要である。家族に判断してもらうのだ。
そう、永谷園のチャーハンの素で作った最初のチャーハン、それが永谷園であるということは彼らに伝えていない。
だから純粋に味を判断して、2種類のチャーハンを食べてもらう。それもごく自然に。
大丈夫だ、永谷園のチャーハンは少なめに作った。普段の半分の量である。
すぐになくなって、他の食べ物を欲している。
その間、もやしのナムルや卵スープを用意して、「もう一品チャーハンを作るから待っていてくれ」と言っておく。

そして、自分のチャーハンを作り出すのだ。
僕のチャーハンはシンプルである。ご飯、卵、ネギのみである。
そう、今回のチャーハンは肉も使わない。
卵と油、そしてもちろん醤油は加えるが、そのシンプルな味付けで勝負する。
これは長く食べる上で必要なシンプルさである。
ここでシンプルさを見誤ってしまうと、永谷園のチャーハンに持っていかれる。
「おまたがお留守ですよ」と、永谷園のチャーハンは急所めがけて蹴りを繰り出してくるだろう。
それを受けてはいけない。受けてしまえば、とんでもないダメージを食らってしまう。そうならないために、自分のチャーハンを追求する必要がある。

油を熱し、かき混ぜた卵を加え、すぐに固まってくるからそこにご飯を投入。
そしてちゃちゃっとかき回しながらネギを投入し、塩胡椒をしておく。
酒と醤油を半々で割ったものを用意する、これを最後に加えるのだ。
パラパラになってきたところで、その調味料を鍋肌に当てて香ばしい匂いを立ち上らせたら出来上がりである。
この醤油卵炒めご飯、これで勝負する。

さっと出すと、スプーンですくっては食っていく。潔い。
「まだ腹が減っていたのだな」と僕は安心する。
そしてジャッジである。どちらのチャーハンが美味かったのか。

答えは明白であった。
温かい、熱い方がうまいのだ。そして後に残る方が勝つのだ。
僕は永谷園に対してやや臆病になっていたから、僕のほうを後に出した。

明らかな戦略勝ち、果たして勝利と言えるのだろうか。

わからない。永谷園は別に僕に勝とうが負けようが関係なく売れ続けるのだから、ここで僕が勝利したところで影響がないじゃないか。

だとしたら、僕は永谷園に勝利したということ、で一旦収めてもらおう。

いいなと思ったら応援しよう!