見出し画像

【朝だけ足りていない】たんぱく質は「量」より配分だった|ずるい栄養学 #3

「たんぱく質は足りていますか?」

そう聞かれると、多くの人は「足りていないかも」と思うかもしれません。

でも実は、日本人の問題は、一日を通して極端に不足していることではありません。

本当に不足しやすいのは、「朝」です。

近年の研究では、たんぱく質は「どれだけ食べるか」だけでなく、「いつ食べるか」も大切だと考えられるようになってきました。

今日は、朝のたんぱく質について、現在のエビデンスをもとに整理してみます。

実は「量」より「配分」が問題だった

一厚生労働省の「令和5年 国民健康・栄養調査」を見ると、女性のたんぱく質摂取量は、40〜49歳で1日平均63.8g、50〜59歳で66.1gです。

一見すると、決して少ない量ではありません。

ところが、食事ごとに分けてみると、たんぱく質は夕食に偏り、朝食が少なくなりやすいことが、国内外の研究で報告されています。

つまり、

「一日で足りているか」だけを見ていては、見えない問題がある。

それが、たんぱく質の「配分」です。

実際、健康な成人を対象にした研究では、1日のたんぱく質量が同じでも、朝・昼・夕に約30gずつ均等に摂った場合のほうが、夕食に大きく偏らせた場合より、24時間の筋たんぱく質合成が25%高くなりました。

ただし、この研究は8人を対象とした小規模な実験です。

だから、「朝は必ず30g食べればいい」という単純な話ではありません。

一日のたんぱく質を、夜だけに偏らせない。

まずは、そこがポイントです。

朝のたんぱく質が大切な理由

① 筋肉を守るために

たんぱく質を摂ると、筋肉ではたんぱく質の合成が促されます。

一方で、1日に必要なたんぱく質を摂っていても、それが夕食に大きく偏っていれば、食事ごとにたんぱく質を利用する機会を逃してしまう可能性があります。

特に40代以降は、年齢とともに筋肉量を維持することが重要になります。

2025年のレビューでも、朝にたんぱく質を多く摂ることと、筋肉量との間には一定の関連が報告されています。

ただし、筋力についてはまだ結論がはっきりしておらず、今後の研究が必要とされています。

だからこそ、

「朝にも、たんぱく質を置いておく」

くらいの考え方がちょうどいい。

② 空腹感を抑えやすい

たんぱく質は、満腹感にも関係しています。

複数の研究をまとめた分析では、たんぱく質を多く含む食事によって、空腹感が低下し、満腹感が高まることが報告されています。また、GLP-1など食欲に関わるホルモンにも影響することが示されています。

「10時頃になると、甘いものが欲しくなる」

そんな人なら、朝食の内容を見直してみる価値はあります。

ただし、これは「朝のたんぱく質不足が甘いもの欲しさの原因」とまで言えるものではありません。

朝食にたんぱく質を足すことで、午前中の満腹感を保ちやすくなる可能性がある。

そのくらいに捉えておくのがよさそうです。

③ 血糖値が乱れにくい

朝食にたんぱく質を加えることは、血糖値にも関係します。

健康な成人12人を対象にした研究では、高たんぱくの朝食を食べたとき、通常の朝食に比べて、朝食後の血糖値の上昇が抑えられました。

さらに、昼食後の血糖値にも影響がみられています。

また、2024年の複数の研究をまとめた分析でも、糖質を含む食事にたんぱく質を加えると、食後血糖値の上昇が小さくなることが示されています。

つまり、朝のたんぱく質は、筋肉だけの話ではありません。

その後の血糖値にも影響する可能性があります。

もちろん、「朝にたんぱく質を摂れば血糖値が安定する」とまで言い切れるわけではありません。

でも、朝食をパンやご飯だけで終わらせず、卵や納豆、ヨーグルトなどを組み合わせる。

そんな小さな工夫には、意味がありそうです。

20gは、意外と難しい

「朝にたんぱく質を摂る」といっても、実際にはどのくらいなのでしょう。

たとえば、

・卵1個:約6g
・納豆1パック:約8g
・ヨーグルト1個:約4g

これだけでは、20gには届きません。

だからといって、朝食を大きく変える必要はありません。

私なら、こう足します

和食なら、納豆や豆腐を一品追加する。

洋食なら、ゆで卵やギリシャヨーグルトをプラスする。

いつもの朝食に、たんぱく質を一品足すくらいから始めます。

私がおすすめしたいのは、そのまま食べられるたんぱく質食品を冷蔵庫に常備しておくこと。

「朝は忙しくて用意する時間がない」という人なら、プロテインドリンクを朝食の一部として活用するのも一つの方法です。

大切なのは、朝食を完璧にすることではありません。

夜に偏っているたんぱく質を、少し朝に回す。

それだけでも、たんぱく質の「配分」は変えられます。

ずるい栄養学としての結論

たんぱく質は、一日に何g食べるかだけではありません。

「いつ、どれくらい摂るか」

も大切です。

一日の総量が足りている人でも、朝のたんぱく質が少なく、夜に偏っていることがあります。

だから、いきなり食事を大きく変える必要はない。

まずは、

卵を1個足す。
納豆をつける。
ヨーグルトを選ぶ。

そんな小さな一品から。

たんぱく質を増やすのではなく、少し朝に配分する。

それが、私の考える「ずるい栄養学」です。

もう少し、朝食のお話


参考文献
厚生労働省『令和5年国民健康・栄養調査』
Mamerow MM, Mettler JA, English KL, et al. Dietary protein distribution positively influences 24-h muscle protein synthesis in healthy adults. Journal of Nutrition. 2014.
Khaing IK, et al. Effect of breakfast protein intake on muscle mass and strength in adults: a scoping review. Nutrition Reviews. 2025.
Kohanmoo A, Faghih S, Akhlaghi M. Effect of short- and long-term protein consumption on appetite and appetite-regulating gastrointestinal hormones: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Physiol Behav. 2020;226:113123.

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集