【R18】メルレを始めた私が堕ちていった理由⑥
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~お酒と彼の言葉と、酔わされる私~
※18歳以上推奨です。登場人物は、すべて成人です。
この作品はフィクションです。実在の人物・出来事とは関係ありません。
☆
昼の居酒屋で佐伯と対面で話し合った結果、私は彼に完敗した。
もう、佐伯の言うとおりにするしかない。
彼にまた抱かれるしかない。
そんな風に思わされていた。
できることなら避けたい。
だけど、和也に知られるよりはいい。
そう思い直した私は、お酒に頼ることにした。
前回の時と同じように酩酊までとは言わない。
だけど、それなりに酔ってしまえば、抵抗感が薄まるかもしれない。
そんな、不確定な賭けではあったけど。
前回と同じように店員さんが勧めてくれたお酒を飲む。
(やっぱり美味しい)
追い詰められている状況だというのに、それでも味は分かった。
だけど、前回と違い、酔いは回ってこない。
「酒は飲んだ方が良い」
佐伯が口を開くと、ついついそれに集中させられる。
間の取り方とかなのかな。
人を惹きつける話し方だった。
「そうですか……」
でも、素っ気なく返した。
酔えないお酒を飲み、興味無さそうにする。
ただ、耳は傾けていた。
店員さんに、お酒を追加してもらう。
二杯頼んだ。
佐伯のためじゃない。
酔えない自分のためだ。
そんな私を見ながら佐伯が笑っていた。
何が可笑しいのかは分からない。
ただ、ニヤニヤと笑っていた。
でも、急に真顔になった。
「酔った方が大胆になる。そう、言われたことある?」
(ああ、言われてみれば……)
佐伯の言葉で、以前、和也に言われたことを思い出した。
『聡美は酔った時の方がエッチだね。なんか、大胆?』
そう言われて、もっと大胆になった。
それにとても気持ち良かった。
(感度も上がるのかもしれない)
そんな風にも思い、そこで、もしかしたらと考えた。
前回、佐伯とした時、感じてしまったのは酔っていたからかもしれない。
そんな都合の良いことを考えてしまったのだ。
(今の状況も、酔いさえすれば楽になるかもしれない)
そんな考えに流されそうになった。
ドン!!
お酒を流し込み、グラスをテーブルに強く置いた。
(違う違う)
私は否定した。
だけど、酔いさえすれば抵抗感も薄れると考えたのは私のはずだった。
たぶん、本当に否定したのは気持ち良くなってしまうことだった。
苦しむくらいなら、そっちを望んでいるかもしれない。
それを否定していた気がする。
また、店員さんにお酒を追加した。
酔って思考を曖昧にしたかったのかもしれない。
「本当の自分に近づくのかもね」
佐伯が言った。
「本当の自分……」
私は無意識に彼の言葉を繰り返した。
自分でも少し思っていたことだから。
私が仲の良い皆に隠していること。
性に対して好奇心が強いこと。
これは誰にも見せていない自分だった。
私はいつも、どこかで清純でいなければいけないと思っていた。
それは周囲がそういう目で私を見ていたから。
和也に対してだって、清純でいなければと思っていた。
でも酔ってさえいれば、そうしなくても済む。
和也にエッチだと言われたり、大胆になったり。
それはもしかしたら、本当の自分に近いかもしれない。
「まあ、あれだけ敏感体質だし……」
そう言って、佐伯は私をジッと見詰めた。
前回の私の反応を思い出してるぞって顔だった。
嫌悪感よりも羞恥心の方が強かった。
「酔ってる時としらふの時の違いは分からないだろうけど」
そう言って、茶化すように笑った。
そんな佐伯に怒りがこみ上げるよりも、また恥ずかしさを感じていた。
見透かされている感じがしたからかもしれない。
何かを誤魔化すように、グイッとお酒をあおった。
(……あれ?)
急にクラっと酔いが回ってくる感じがした。
もしかしたら、佐伯が茶化したことが関係してるかも。
身構えていたのに、緩んだ? だけど、リラックスとは違う。
上手く説明できないけど……
倒れないように抵抗していたら、違う方に力を向けられて倒された感じ。
ただ、飲んだ量も多かった。
ふと、テーブルの上に目を向けた時……
店員さんが片付けきれない空いたグラスがいくつもあったから。
「そろそろ酒は終わり」
まるで私の酔っている度合いを分かっているみたいだった。
佐伯はそう言うと、少し間を開けて言葉を続けた。
「今度はホテルまでしっかり歩いてもらわないとね」
そして意地悪く笑う。
前回は酔い潰れてフラフラだった。
ホテルまで、どう行ったかも覚えていない。
辱められていると思ったけど、事実だから言い返せない。
それに、「前回と違って今回は自分の意志で行くんだよね?」と遠回しに言われてる気がした。
なんだか負けん気を刺激された。
だから――
「そんなに酔ってませんっ」
そう言って、勢いよく立った。
そしたらフラッとした。
でも、倒れなかった。
そこは意地だった。
――ラブホテル。
部屋に入ると、私はベッドに腰かけた。
その部屋はソファが無かったから。
それに、多少酔っているから立っているのは怠かった。
佐伯が隣に座った。
距離が近かった。
かと言って、離れるのも面倒だった。
彼は気軽に声を掛けてきた。
緊張感のかけらもない。
「シャワー浴びる?」
「来る前に浴びてきました」
「へぇ」
私の返事に佐伯はそう言って、人をからかうような笑みを浮かべる。
「最初からその気だった?」
彼の言葉に顔が熱くなるのを感じた。
そういうつもりでシャワーを浴びて来たわけじゃない。
だけど、佐伯がそう言ったことで、それが事実みたいに思わされた。
(違うのにっ)
そう思ったけど、口には出さなかった。
出せなかったのかもしれない。
余計に事実になりそうな気がしてたから。
「今日はちゃんとキスから始めようか」
そう言うと、なんでもないことのようにあっさりと顔を近付けてきた。
逃げたいけど、逃げるわけにはいかなかった。
そして重なる唇。
優しいキスだった。
和也に似ていた。
私には比べる人は和也しかいなかった。
だからこそ、和也に似ていると、どこか安心してしまう。
それでも、そもそも嫌なのは確かだった。
それに、似ているからこそ和也に対して余計に罪悪感を抱いた。
だけど、その優しいキスが少しずつ卑猥なものに変わっていくと――
私は少しずつ、引き返せない感覚に堕ちていった。
佐伯のキスは和也よりも女をその気にさせるキスだった。
和也のキスは安心をくれるけど、佐伯は女のスイッチを入れる。
欲情させるキスだった。
酔っているせいもあった。
それは断言できる。
普通なら嫌悪するはずの夫以外の男の舌が、心地良いものに思えた。
たぶん、心では嫌がりながらも、私からも舌を絡めたんじゃないかな。
酔っているというのが私の免罪符だったから。
――キスは続いた。
(長い……でも……)
佐伯のキスは長かった。
そのうち、「長い」ってことと「なんか気持ち良い」だけになった。
「んっはぁ」
唇が離れると、足りなくなった酸素を吸い込んだ。
そんな私を佐伯は面白そうに見ていた。
「こないだの媚薬」
「――っ」
騙されたことを思い出し、屈辱感が蘇った。
「完全な偽物ってわけじゃない」
「どういうことですか?」
だけど、佐伯の言葉で希望を感じた。
今の私なら、彼の言葉を鵜呑みにしない。
当時の私も佐伯の言葉を真っ直ぐ信じてはいなかったと思う。
「まがい物だけど、人によっては興奮する」
「……」
「敏感体質なら効果も出やすいかもね」
(もしかしたら、自分の意志じゃなくて薬と酔ったせいでああなった?)
だけど、そう思ってしまった。
そう思いたくなる言葉だったから。
「まだあるよ」
そう言うと、佐伯はポケットから錠剤を出し、口に含んだ。
そして、キスをしてきた。
私は、自分から彼の舌を求めるように、舌を差し込む。
錠剤は佐伯の口の中から私の口の中へと移動し――
彼の唾液と私の唾液と合わさって喉奥へと消えた。
それが、酔い以外の免罪符を求めていたからなのか――
もう、興奮してしまえばいいという開き直りなのか――
苦しみを和らげるための選択肢だと思ったのか。
今の私には分からないし、当時の私も分かっていなかったと思う。
☆
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