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【R18】メルレを始めた私が堕ちていった理由⑥

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~お酒と彼の言葉と、酔わされる私~

※18歳以上推奨です。登場人物は、すべて成人です。
 この作品はフィクションです。実在の人物・出来事とは関係ありません。

 昼の居酒屋で佐伯と対面で話し合った結果、私は彼に完敗した。

 もう、佐伯の言うとおりにするしかない。
 彼にまた抱かれるしかない。
 そんな風に思わされていた。

 できることなら避けたい。
 だけど、和也に知られるよりはいい。

 そう思い直した私は、お酒に頼ることにした。
 前回の時と同じように酩酊までとは言わない。
 だけど、それなりに酔ってしまえば、抵抗感が薄まるかもしれない。
 そんな、不確定な賭けではあったけど。

 前回と同じように店員さんが勧めてくれたお酒を飲む。

(やっぱり美味しい)

 追い詰められている状況だというのに、それでも味は分かった。
 だけど、前回と違い、酔いは回ってこない。

「酒は飲んだ方が良い」

 佐伯が口を開くと、ついついそれに集中させられる。
 間の取り方とかなのかな。
 人を惹きつける話し方だった。

「そうですか……」

 でも、素っ気なく返した。
 酔えないお酒を飲み、興味無さそうにする。
 ただ、耳は傾けていた。

 店員さんに、お酒を追加してもらう。
 二杯頼んだ。
 佐伯のためじゃない。
 酔えない自分のためだ。

 そんな私を見ながら佐伯が笑っていた。
 何が可笑しいのかは分からない。
 ただ、ニヤニヤと笑っていた。
 でも、急に真顔になった。

「酔った方が大胆になる。そう、言われたことある?」

(ああ、言われてみれば……)

 佐伯の言葉で、以前、和也に言われたことを思い出した。

『聡美は酔った時の方がエッチだね。なんか、大胆?』

 そう言われて、もっと大胆になった。
 それにとても気持ち良かった。

(感度も上がるのかもしれない)

 そんな風にも思い、そこで、もしかしたらと考えた。
 前回、佐伯とした時、感じてしまったのは酔っていたからかもしれない。
 そんな都合の良いことを考えてしまったのだ。

(今の状況も、酔いさえすれば楽になるかもしれない)

 そんな考えに流されそうになった。

 ドン!!

 お酒を流し込み、グラスをテーブルに強く置いた。

(違う違う)

 私は否定した。
 だけど、酔いさえすれば抵抗感も薄れると考えたのは私のはずだった。
 たぶん、本当に否定したのは気持ち良くなってしまうことだった。
 苦しむくらいなら、そっちを望んでいるかもしれない。
 それを否定していた気がする。

 また、店員さんにお酒を追加した。
 酔って思考を曖昧にしたかったのかもしれない。

「本当の自分に近づくのかもね」

 佐伯が言った。

「本当の自分……」

 私は無意識に彼の言葉を繰り返した。
 自分でも少し思っていたことだから。

 私が仲の良い皆に隠していること。
 性に対して好奇心が強いこと。
 これは誰にも見せていない自分だった。

 私はいつも、どこかで清純でいなければいけないと思っていた。
 それは周囲がそういう目で私を見ていたから。
 和也に対してだって、清純でいなければと思っていた。

 でも酔ってさえいれば、そうしなくても済む。
 和也にエッチだと言われたり、大胆になったり。
 それはもしかしたら、本当の自分に近いかもしれない。

「まあ、あれだけ敏感体質だし……」

 そう言って、佐伯は私をジッと見詰めた。
 前回の私の反応を思い出してるぞって顔だった。
 嫌悪感よりも羞恥心の方が強かった。

「酔ってる時としらふの時の違いは分からないだろうけど」

 そう言って、茶化すように笑った。
 そんな佐伯に怒りがこみ上げるよりも、また恥ずかしさを感じていた。
 見透かされている感じがしたからかもしれない。
 何かを誤魔化すように、グイッとお酒をあおった。

(……あれ?)

 急にクラっと酔いが回ってくる感じがした。
 もしかしたら、佐伯が茶化したことが関係してるかも。
 身構えていたのに、緩んだ? だけど、リラックスとは違う。
 上手く説明できないけど……
 倒れないように抵抗していたら、違う方に力を向けられて倒された感じ。

 ただ、飲んだ量も多かった。
 ふと、テーブルの上に目を向けた時……
 店員さんが片付けきれない空いたグラスがいくつもあったから。

「そろそろ酒は終わり」

 まるで私の酔っている度合いを分かっているみたいだった。
 佐伯はそう言うと、少し間を開けて言葉を続けた。

「今度はホテルまでしっかり歩いてもらわないとね」

 そして意地悪く笑う。
 前回は酔い潰れてフラフラだった。
 ホテルまで、どう行ったかも覚えていない。
 辱められていると思ったけど、事実だから言い返せない。
 それに、「前回と違って今回は自分の意志で行くんだよね?」と遠回しに言われてる気がした。
 なんだか負けん気を刺激された。
 だから――

「そんなに酔ってませんっ」

 そう言って、勢いよく立った。
 そしたらフラッとした。
 でも、倒れなかった。
 そこは意地だった。

 ――ラブホテル。

 部屋に入ると、私はベッドに腰かけた。
 その部屋はソファが無かったから。
 それに、多少酔っているから立っているのは怠かった。

 佐伯が隣に座った。
 距離が近かった。
 かと言って、離れるのも面倒だった。

 彼は気軽に声を掛けてきた。
 緊張感のかけらもない。

「シャワー浴びる?」
「来る前に浴びてきました」
「へぇ」

 私の返事に佐伯はそう言って、人をからかうような笑みを浮かべる。

「最初からその気だった?」

 彼の言葉に顔が熱くなるのを感じた。
 そういうつもりでシャワーを浴びて来たわけじゃない。
 だけど、佐伯がそう言ったことで、それが事実みたいに思わされた。

(違うのにっ)

 そう思ったけど、口には出さなかった。
 出せなかったのかもしれない。
 余計に事実になりそうな気がしてたから。

「今日はちゃんとキスから始めようか」

 そう言うと、なんでもないことのようにあっさりと顔を近付けてきた。
 逃げたいけど、逃げるわけにはいかなかった。
 そして重なる唇。
 優しいキスだった。
 和也に似ていた。
 私には比べる人は和也しかいなかった。
 だからこそ、和也に似ていると、どこか安心してしまう。

 それでも、そもそも嫌なのは確かだった。
 それに、似ているからこそ和也に対して余計に罪悪感を抱いた。

 だけど、その優しいキスが少しずつ卑猥なものに変わっていくと――
 私は少しずつ、引き返せない感覚に堕ちていった。

 佐伯のキスは和也よりも女をその気にさせるキスだった。
 和也のキスは安心をくれるけど、佐伯は女のスイッチを入れる。
 欲情させるキスだった。

 酔っているせいもあった。
 それは断言できる。
 普通なら嫌悪するはずの夫以外の男の舌が、心地良いものに思えた。
 たぶん、心では嫌がりながらも、私からも舌を絡めたんじゃないかな。
 酔っているというのが私の免罪符だったから。

 ――キスは続いた。

(長い……でも……)

 佐伯のキスは長かった。
 そのうち、「長い」ってことと「なんか気持ち良い」だけになった。

「んっはぁ」

 唇が離れると、足りなくなった酸素を吸い込んだ。
 そんな私を佐伯は面白そうに見ていた。

「こないだの媚薬」
「――っ」

 騙されたことを思い出し、屈辱感が蘇った。

「完全な偽物ってわけじゃない」
「どういうことですか?」

 だけど、佐伯の言葉で希望を感じた。
 今の私なら、彼の言葉を鵜呑みにしない。
 当時の私も佐伯の言葉を真っ直ぐ信じてはいなかったと思う。

「まがい物だけど、人によっては興奮する」
「……」
「敏感体質なら効果も出やすいかもね」

(もしかしたら、自分の意志じゃなくて薬と酔ったせいでああなった?)

 だけど、そう思ってしまった。
 そう思いたくなる言葉だったから。

「まだあるよ」

 そう言うと、佐伯はポケットから錠剤を出し、口に含んだ。
 そして、キスをしてきた。

 私は、自分から彼の舌を求めるように、舌を差し込む。
 錠剤は佐伯の口の中から私の口の中へと移動し――
 彼の唾液と私の唾液と合わさって喉奥へと消えた。

 それが、酔い以外の免罪符を求めていたからなのか――
 もう、興奮してしまえばいいという開き直りなのか――
 苦しみを和らげるための選択肢だと思ったのか。

 今の私には分からないし、当時の私も分かっていなかったと思う。

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