【R18】夫を差し出した妻の独白①
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※こちらの記事も併せて読むと楽しんでいただけると思います。
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~太ももの「指痕」と私の偽証~
※18歳以上推奨です。登場人物は、すべて成人です。
この作品はフィクションです。実在の人物・出来事とは関係ありません。
☆
愛する夫、和也(かずや)に知られれば、捨てられるかもしれない。
だというのに、私は夫以外の男から逃げることができないでいた。
和也の上司である佐伯という男と、半年前から関係が続いていた。
「どうしてこんなことをしたんですか!?」
その日、珍しく佐伯は私の太ももを強く触った。
最初は力加減を間違えたのかと思ったけど、きっと違う。
彼の悪びれない顔を見たら、故意に指痕をつけたとしか思えなかった。
「大丈夫。もし、旦那に見つかっても、前に教えたとおりに言えば良い」
「そんなの言ったって、駄目に決まってます!!」
かつて佐伯が語ったのは、無理がある言い訳だった。
そんなものに頼るわけにはいかない。
この時はそう思っていた。
太ももについた指痕を消そうと擦ってみた。
だけど、無理だった。
それに、もう帰らないといけない時間だった。
「旦那が動画を見るより、指痕を見つける方がマシじゃない?」
「もう帰ります!!」
佐伯の質問には答えなかった。
彼は私とセックスをした時の動画を持っている。
その動画があるから、私は佐伯から逃げられずにいた。
夫には決して見られたくなかったから。
(この指痕を見られなければいい)
風呂上りは、バスタオルで隠せば大丈夫だろう。
夜、和也に求められたとしても、寝室の電気を消してもらえばいい。
そんな風に誤魔化すことばかり考えていた。
だけどそれは、あまりにも安直で、楽観的な考えだったと思う。
だからなのかもしれない。
お風呂上りに、あっさりと和也に指痕を見つけられてしまった。
バスタオルを巻いて、寝室に入った。
隠せているつもりだった。
だけどどこかで、私には抜けているところがあったんだと思う。
半年間、佐伯との関係を隠せていたことの慢心だったのかも。
「聡美、それ……どうしたんだ?」
和也は抑えようとしているみたいだったけど、その声は少し震えていた。
その声を聞いて分かってしまった。
彼は信じたくないけど、疑ってもいると。
「――っ!?」
悲鳴を上げたかった。
だけど声にならなかった。
ただ、膝の力が抜けて立っていられなかった。
床の上に座り込む。
そのまま倒れて気絶してしまいたいとすら思った。
だけど、それは耐えた。
それでも、全身から血の気が引いていく気がした。
瞳からは勝手に涙が溢れ出した。
そんな状態でも、どうすれば和也に捨てられずに済むか考えていた。
それは冷静な私、なんかじゃない。
この時の私は、愛する夫に捨てられるかもしれないと怯えていた。
だからこそ、そうならないためにどうすればいいか必死だった。
そして、そんな私に聞こえたのは佐伯という悪魔のささやきだった。
「ごめんなさい、和也……っ。ごめんなさい……」
そう言って泣き崩れる。
演技なんかじゃない。
だけど私は、この時に嘘をつく覚悟を決めた。
「実は……」
私は、最初に佐伯のことを知っているか聞いた。
和也は、どうして彼の話が出てくるのか不思議そうだった。
だけど、佐伯が二か月前に家に訪ねて来た……
その嘘を切り出すと、表情が変わった。
和也の会社の上司――佐伯響也(さえききょうや)。
彼から、和也が仕事で大きなミスをして賠償金の支払い義務を負った。
そう聞いたと和也に伝えた。
「そんな事実は……ない」
和也は私を怖がらせないためか、感情を抑えながらそう言った。
そんな事実がないことは、もちろん分かっていた。
だけど嘘をつく。
私は佐伯の影響で嘘をつくのが上手くなっていた。
「ごめんなさい。だけど、その嘘を信じてしまったの」
私の言葉に、和也はグッと次の言葉を飲み込んだ。
そして、佐伯が和也をかばうことができると聞いて――
彼の望むままに、一度だけという約束で抱かれてしまった。
そう、話した。
もちろん、そんな事実はない。
そういう流れで関係を持ったわけじゃない。
だけど、どうやって佐伯と関係を持ったか、和也には言えなかった。
だから、嘘を重ねる。
「その後は、バラされたくなければ言うことを聞けって脅されて……」
最初は、一度だけの約束だと断った。
だけど、決定的な証拠を見せられて観念してしまった。
これには少しの本当も混ざっている。
私は望んで佐伯と関係を持ったわけじゃない。
「佐伯は、私とのことを動画に撮っていたの……だから、今日……」
抱かれてしまったと言った。
動画で脅された後は、この一度だけとも。
本当は半年間で十回以上抱かれてる。
だけど、嘘をついた。
これは、佐伯に言われたからじゃない。
そう言った方が、和也が許してくれるかもしれないと思ったから。
それに……
「和也に知られたら、絶対に離婚されると思って……」
これは、本当のこと。
心の底から思っていたことだった。
だから私は、和也の足元にしがみつきながら、泣いた。
捨てられたくないという思いが、そうさせたんだと思う。
私の話を聞いて、和也は身体を震わせていた。
ただ、顔をあげて彼の表情を確認することはできなかった。
とても怖かったから。
じっと、和也が何かを言うまで待っているしかなかった。
判決を待つ被告人みたいだった。
「あ、あ……」
だけど和也は、喉に何か詰まっているみたいに、そう言うだけだった。
とても大きなショックで、そうなってしまったのかもしれない。
あまりにも怒りが大きくて、そうなっているかもしれない。
そう考えると怖くて仕方なかった。
何かを言わないといけないと心が追い詰められて……
「和也……怒ってるよね……? 私のこと、汚いと思うよね……?」
そう言うのが、やっとだった。
和也の顔を見るのが怖かった。
だけど、彼の顔を見ないといけない。
意を決して、顔を上げて、和也の表情をうかがう。
「……聡美」
和也は私の名前を呟くと、床から抱き起こして、ベッドに座らせた。
少しだけ許しを期待した。
彼は、私の太ももに優しく手を置いた。
その手は、佐伯の指痕を隠しているように見えた。
駄目かもしれないと不安になった。
「大丈夫だ。俺が守るから」
(え?)
和也は、そう言った。
一瞬、意味が分からなかった。
ただ、それよりも彼が私を責めないことに安心した。
どうやら、和也に捨てられないで済んだと。
そして、一息ついたことで――
(ああ、そういうことか……)
佐伯から守ってくれるという意味だとようやく理解した。
☆
※次話はこちらからどうぞ。
※2026/08/12に加筆修正しました。
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