自分に求める人は、静かに強くなっていく
中国の思想家・孔子の言行を伝える『論語』衛霊公篇第十五には、次の言葉があります。
「君子は諸を己に求め、小人は諸を人に求む」
人格を磨こうとする人は、問題が起きたとき、まず自分の考え方や行動を振り返る。これに対して、心の狭い人は、原因や責任を他人にばかり求める、という意味です。
ここでいう「君子」と「小人」は、身分の高低ではなく、人間のあり方を対比した言葉です。『論語』の本文では、孔子の言葉として衛霊公篇に収められています。
もちろん、すべての責任を自分だけに負わせる必要はありません。理不尽な扱いや、相手に明らかな非がある場合まで、自分を責めることは正しくないと思います。
孔子の言葉が教えているのは、他人の過ちを見逃すことではなく、自分に改められる部分があるかを最初に確かめる姿勢です。相手を変えることは簡単ではありませんが、自分の言葉、準備、判断、伝え方なら、見直せる場合があります。
他人を責め続けるだけでは前へ進めないとき、「では、自分には何ができるだろう」と問い直す。その問いが、状況に働きかける力を取り戻してくれるのではないでしょうか。
『妙法蓮華経』常不軽菩薩品第二十には、次のように説かれています。
我は深く汝等を敬い、敢えて軽慢せず。
漢文原文は、「我深敬汝等、不敢軽慢」です。
常不軽菩薩は、相手からどのように扱われても、人の中にある成仏の可能性を軽んじませんでした。
孔子の言葉と法華経の教えは同一ではありませんが、自分の態度を省みながら、同時に相手の尊厳を失わないという点で、深く響き合います。自分に求めることは、自分を追い詰めることではありません。自らを整え、他者を軽んじず、よりよい関係を築く力へと変えていくことなのだと思います。

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