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群馬県私立幼稚園・認定こども園協会 主任研修会アーカイブ ~子どもと向き合う時間を生み出すAIとの付き合い方~

7月8日に群馬県私立幼稚園・認定こども園協会主任研修会で、「AIと保育のこれから」というテーマでお話をさせていただきました。
限られた時間ではありましたが、AIの活用方法だけではなく、その背景にある考え方についてもお伝えしました。今回は、その内容を振り返りながら、特にお伝えしたかったことを書いてみたいと思います。
参加していただ先生方は振り返りとしてご活用いただければ幸いです。


本日のまとめノート

AIを使うことが目的ではない

講演の冒頭でもお伝えしたのは、「AIを使いましょう」という話をしに来たわけではないということです。

最近はAIという言葉だけが先行し、「とにかく導入しなければ」「何か使わなければ」という空気を感じることがあります。しかし、本来それは順番が逆です。

まず考えたいのは、自分たちの園にはどんな困りごとがあるのかということです。
保育者が忙しすぎることなのか、書類作成なのか、保護者への情報発信なのか、園内の情報共有なのか。それぞれの園によって課題は違います。

課題があって、その解決方法の一つとしてAIがある。この順番を間違えてしまうと、「AIを使うこと」が目的になり、かえって仕事が増えてしまうこともあります。

だから講演では、実践事例以上に「困りごとを見つける力」が大切だということをお話ししました。
AIは目的ではなく、課題を解決するための手段です。この考え方がすべての出発点だと思っています。

私たちが本当に欲しいものは「時間」

主任や管理職の先生方とお話をすると、多くの方が「時間が足りない」とおっしゃり、私も全く同じ状態であることに、ちょっとだけ安心します。
どの園でも、人手不足や保育の長時間化、さらに働き方改革を迫られる中で、時間をどのように確保するかは待ったなしの課題だと思います。

子どもともっと関わりたい。
職員とゆっくり話したい。
保護者とも丁寧に対話したい。
保育を振り返る時間も確保したい。

しかし現実には、急な対応や期限のある仕事に追われ、本当に大切な仕事ほど後回しになってしまいます。
職員育成や保育環境の見直し、保育者同士の対話や振り返りは、今日やらなくても園は回ります。しかし、その積み重ねこそが一年後、五年後の園をつくっていく仕事です。
この時間が足りない問題について、緊急性と重要性を4つに分類した図を使いながら説明をさせていただきました。
仕事は緊急度に引っ張られてしまう一方で、重要な部分を本当はやりたいと思っているので、時間が足りないと感じるのではないかと私は思っています。

今ある情報を活かすという発想

講演では、保育記録やおたより、保護者向けレポートなど、いくつかの実践例も紹介しました。ただ、一番お伝えしたかったのは、「新しい仕事を増やさず、今ある情報を活用する」という考え方です。

保育現場には、すでにたくさんの情報があります。
保育記録、写真、ドキュメンテーション、会議録、おたよりなど、私たちは毎日多くの情報を蓄積しています。

それらは作って終わりになってしまい、園で眠っているものも少なくありません。しかしこれらの情報は、本来は園の財産です。

AIが得意なのは、新しい情報を生み出すことだけではありません。今ある情報を整理し、別の形で活用することです。

講演では、音声入力から保育記録を作ったり、その記録をもとに保護者向けの文章へ展開したりする事例をご紹介しましたが、大切なのは手法ではありません。

「今ある情報を、もっと活かせないだろうか。」

この視点を持つだけでも、AIとの付き合い方は大きく変わってくると思います。

AIが便利だからこそ気をつけたいこと

今回の講演では、AIの可能性だけではなく、現場で起こり始めている課題についてもお話ししました。

AIやっつけ仕事

AIを使えば、文章や企画書、資料などを短時間で作ることができます。それ自体はとても便利なことです。しかし、その便利さゆえに、「AIが作ったからこれで完成」と、人の目を通さず、そのままチェックしてくださいと提出しようとするケースが増えてしまう危険があります。

AIは下書きを作ることは得意です。しかし、その文章に子どもの姿は本当に映っているのか、その保育者の思いは伝わっているのか、企画との整合性はあるのか、最後に確認し、磨き上げるのは人にしかできません。
主任の先生をはじめとする管理職は、このAIやっつけ仕事の餌食になる危険性が日に日に高まってきています。
AIに丸投げできるほど、AIは進化していませんし、そもそもそこまで行くような情報を与えていないことが多々あります。
だからこそ、人間が思いを持ち、AIが作り、人間がチェックするという流れを組織の中で徹底する必要があると思っています。

AIによるエコーチェンバーやフィルターバブル

AIは、使う人の考え方や質問の傾向に合わせて答えを返すようになります。そのため、使い続けるほど、自分が聞きたい答えばかりが返ってくる可能性があります。

保育には正解が一つではありません。
だからこそ、多様な考え方に触れ、職員同士で議論し、子どもの姿を見ながら考え続けることが何よりも大切です。
AIは相談相手にはなりますが、考え方を決める存在ではありません。

また、明らかにおかしなかかわりをAIに聞いてみる実験をしましたが、AIはその保育を素晴らしい!と肯定してしまいます。
同じような情報ばかりにさらされて、それが世界の総意だと勘違いしてしまったり、多様な意見に触れない泡の中に閉じ込められてしまうといったSNS特有の問題といわれてきたこと、今はAIとユーザーの2者の間で起き始めていると私は危惧しています。
自分の思い増幅させているだけの相手から聞いたアドバイスを真に受けて行動してしまうと大変なことが起こります。

便利な時代だからこそ、「AIに考えてもらう」のではなく、「AIと一緒に考える」という姿勢を忘れないことが大切だと思っています。
また、どうしてもAIに相談したいという職員には、あらかじめ指示文を入れてあるMyGPTを作ってあるので、こちらを使ってみることを向山ではおすすめしています。

保育者の想いを広げる存在

講演では、AIを使ってオリジナルの歌やイラストを作った実践についてもご紹介しました。

こうした話をすると、「AIが全部作っている」と思われることがありますが、実際はまったく逆です。

最初にあるのは、「子どもたちとこんなことをやってみたい」という保育者の願いや発想です。その想いがあるからこそ、AIが形にするお手伝いをしてくれます。

私は講演の中で、「作るのは人、広げるのはAI」という言葉をお伝えしました。
保育の中で生まれる発想や願い、子どもの姿から感じ取ることは、人にしかできません。
AIは保育者の代わりではなく、保育者の可能性を少し広げてくれる存在なのだと思っています。

AI時代だからこそ、人が考え続ける

AIは急速に進化しています。これからできることは、さらに増えていくことが予想されています。

だからこそ、大切になるのは技術そのものではなく、それをどう使うかという人の姿勢です。

保育は、子ども一人ひとりと向き合い、その瞬間の表情やつぶやき、遊びの変化を感じ取りながら営まれる仕事です。そこには数値化できない価値があり、人と人との関わりがあります。AIが進化しても、その本質は変わりません。

今回の講演では、さまざまな実践をご紹介しましたが、本当にお伝えしたかったのは技術ではなく、「子どもたちのために、私たちはどんな時間を生み出したいのか」ということでした。AIは万能ではありませんし、すべての園に同じ答えがあるわけでもありません。

それでも、子どもと向き合う時間、保育者同士が語り合う時間、保護者との対話の時間を少しでも増やせるのであれば、AIは保育を支える大きな力になるはずです。

今回の講演が、AIを導入するためではなく、それぞれの園が「自分たちにとって本当に大切なものは何か」を改めて考えるきっかけになっていたら、とてもうれしく思います。

これからも試行錯誤を重ねながら、保育の本質を大切にし、AIとよりよい関係を築いていきたいと思います。

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