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【連載小説】柿市くんとドクダミちゃん その2

だいたいまとまって、書ける気がするので書いていきます。
完結してから書こうと思ったのですが、なんとなく書いていたらまた連載でやってみたくなったので頑張ります。


人と人の縁について、書こうと思っている小説です。








「悪縁を切る方法?」
 柿市君とのことで、すぐに噂になり、すっかり学校の腫れ物になった私にできた友達である日和君が時々してくれた話だった。


 日和君は、変わり者で男子高校生のくせに男女の恋愛に興味がなく、私のことを良くも悪くも女扱いしなかった。
あまり性別の概念に囚われておらず、同性の友達が作りにくくなった私にとって、高校三年間、ずっと友達でいてくれた救世主のような人だった。


「中学の頃からちょくちょく手伝いに行ってるバイト先でさ」
「人の縁を専門にしている仕事をしている人がいて、どうしても縁を切りたい時に、みんなその人を頼るんだ。
芸能人とか、有名人、お忍びで来たりもする。中には死んだ人との縁を切る人も来ることもある。逆に結ぶこともできる。
ただ恋愛成就とかそういうのじゃなくて、完全に断ち切れてしまった人と一度だけ再会できるとか、そーいうもの。
 母親の親戚で、できるだけ身内だけを雇いたいから手伝いをしてたんだけど、ドクダミちゃんと話していると、紹介してあげたほーがいいのかなぁって悩むね」


 日和君は柿市君は対照的な、地味でぼんやりとしていて、目立たない男子だった。眼鏡をかけていて、日光が苦手で、外で会う時はいつも帽子か日傘を刺していた。いつも日陰で本を読んでいる子で、柿市君とできるだけ鉢合わせたくなかった私が、人目を避けて裏庭をうろうろしているときに出会った。

 柿市君のことも、学校で浮いていることも、私が女であることも意識せず、淡々といつも横にいてくれるのが居心地が良くて、高校時代はずっと彼と一緒に図書館の裏庭で本を読んだり、ぼんやりと話し込むことが多かった。


「俺の妹が元カレがしつこくてストーカーになりかけてた頃に、その人を頼ったら強烈なことがあったけど、しっかりと縁が切れてさ。妹はそのおかげで今、学校に通えてるんだ。ドクダミちゃんがどーしても辛いんだったら、紹介してもいいのかなーって」


 変なところで語尾を伸ばす、独特の喋り方が特徴的だった。
 柿市君と真面目に縁を切る。
 それは、その時初めて考えたことだった。縁を切る方法があるというのも、正直、その時初めて知ったことだったからだ。
 柿市君との思い出で良かったことはほとんどない。
 ただ、女性を取っ替え引っ替えする悪魔のくせに笑顔だけは、特別だった。笑顔だけは、子供の頃から変わっていない。容姿とか、色恋とか、そういうものに囚われていなかった頃、私は柿市君の笑顔が好きだった。曇り空の中から、微かにのぞく日光が、雪で反射してキラキラ光っていて、その中で、彼が笑っている顔が忘れられなかった。
 あんな奴になってしまったが、一緒に遊んでいて楽しかった、大事な幼馴染でもあるんだ。
「迷っているなら、頼まないほーがいいよ」
 日和君は冷静に言っていた。
「その人にお願いすると、本当に縁は切れてしまうんだ。多分、もう2度と会えないぐらい、バッサリと。そういう人をたくさん見てきた。それで不幸になった人や運命が変わってしまった人も見てきた。
その人は、人の縁というのは本来、人間が操作していいものじゃないと言っていた。うんめーってやつに組み込まれていて、どんな相手であれ、つながっている縁は自然に切れるまで本当は待ったほうがいい。このままだと殺されるとか、死んでしまうとか、そういうどうしようもない運命の人が、一回だけやっていい禁忌みたいなものなんだって、言っていたよ。
 もちろん、軽い依頼も受けてるみたいだけどさー。
 ドクダミちゃんの話を聞いてると、柿市君は、かなり縁が深いと思うんだよねー。
 そういう人と切れる時、反動も大きいらしいから。
 気をつけたほーがいいよ」
「その話がそもそも、うさんくさいって話はしてはいけない?」
 私は話を逸らすために彼に冗談を言った。

「あははー。でもまー、信じないほうがいいよー」
 彼は笑っていた。
 周りからは、日和君と付き合っているのか?とたまに聞かれることがあった。
 そういうのじゃないよ、というと、だよね~と返してくれる。それが私にとっては救いだった。
 柿市君の隣にいると、いつもいつも、そういうのじゃないよ、が通じない。
 もう2度と、彼とは友達に戻れない。
 柿市君は私のことを、恋愛対象として見ていない。彼だって、あの美しい容姿だ。相手は選びたい。私よりも派手で、もっと可愛い女の子と付き合っている姿は何回も見てきた。
 それでも、友達に戻りたいと思っている。子供の頃みたいに、遊びたい気持ちが残っている。それが叶わないから、駄々を捏ねている。
 ずっとそれはわかっていた。それが、すごく悔しくて、私はずっと彼を避けている。
 柿市君は、無意識に私を見下していることに気づいてない。ずっと私が彼の都合のいい友達で居続けてくれることを願っていて、それが当然だと思っている。
 悲しかった。
 友達に戻れないことが、悲しいのは、君だけじゃないのに。
 縁を切りたいのか、切りたくないのか、私にはまだこの時は、わからなかった。
 ただ、日和君とばかり過ごすようなった私を柿市君はいつも不満そうに見つめていた。その視線には気づいていた。
 その視線が、何か不穏な未来を案じていることは、今思えばわかっていた。
 気づきたくなかったのだ。
 子供の頃はあんなに純真だった友達が、もう違う存在になっていることに、私が気づきたくなかったのだ。

 




前作の「おもて帽子」のように1週間から2週間の間にあげられるように頑張ります。



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前作「おもて帽子」完結済み



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