不服従の精神または抗命権 ~竹中半兵衛とドイツ軍~
磯田道史先生の言葉
◆「盲導犬の本を読んでいて不服従の精神を知った。信号が赤信号ならば、叩かれてつつかれても道路を渡らない。視覚障がい者の命を守るために。軍隊や会社組織も同じ。上が言うことを唯々諾々と従うだけなら階級も役職も要らない。全員ヒラでいい。いざと言うときにノーと言えること。組織に階級や役職があることの意味を考えてみたい」
◆竹中半兵衛をテーマにしたNHKの歴史番組「英雄たちの選択」で、磯田先生が語った言葉だ。いつも様々な教訓や問いを与えてくれるが、今回は特に心に残る。荒木村重が造反し、黒田官兵衛の裏切りも疑われた時、竹中半兵衛は主命に反して人質であった官兵衛の息子・松寿丸を救って匿った。半兵衛の死後に官兵衛の潔白は証明される。かつて主君の斎藤龍興に背いたことがある半兵衛のアイデンティティは不服従の精神だった。
◆松寿丸はのちの黒田長政で、関ヶ原の戦いにおいて徳川家康方の勝利に大貢献する。これにて豊臣から徳川へ主導権が移るわけで、半兵衛としては複雑なところだ。
抗命権
◆時代も国も変わるが、現代のドイツ軍には抗命権があると言われる。命令が目的外に行われる場合、または相手の人権を侵し犯罪に該当すると考えた場合は、たとえ上官の命令であっても従わなくてもいい、とされている。結局はこれは憲法遵守に繋がるが、上意下達、絶対服従が原則である軍隊組織を考えた時、兵士たちが抗命権を行使すれば何もできなくなる。にもかかわらず権利が保障されている。奇跡と言える。
◆戦前、合法を盾に台頭・躍進したナチスと、拡大主義やユダヤ人迫害といった負の歴史への猛烈な反省から生み出された概念だと言う。過ちは繰り返さないという強い決意が伺われる。
◆アメリカとイランは和平合意し、19日に双方が覚書に署名する予定となった。約100日前に戦闘が始まってからというもの、誰かが核兵器のボタンを押すのではないか、そんな懸念を密かに持っていた。薄氷の合意とも思えるから、戦闘が再開されれば懸念が再燃する。また、領土を広げながらもウクライナから強い抵抗を受け、4年が経過したロシアによる軍事侵攻。いつかロシア側が自暴自棄になって核兵器を使用しないとも限らない。実際にプーチン政権は使用をちらつかせてきた。
◆いつどこで「破壊的な出来事」が起きても不思議でないほど核兵器は拡散している。「3度目の使用」を決断した国のトップがいた時、良心に基づき不服従を貫ける者はいるだろうか。世界の滅亡を最終的に防ぐことができるのは、抗命権を行使する末端の兵士かもしれない。こう考えると、不服従の精神は人類最後の砦と言える。
☆映画『関心領域 The Zone of Interest』(2023年)は、アウシュヴィッツ収容所のすぐ隣で暮らす所長一家を描いた。実話を基にしている。人生を変えるかもしれない傑作。自分はかなり感化された。
