【#創作大賞感想】秀逸な人物描写に唸る小説
私はいつも人物の心情描写に迷いがあります。書いていてなんとなくストーリーに薄っぺらさを感じてしまうのです。今年、一番力をいれたのは心情描写なのですが……まだまだだったと毎日のように生まれてくる反省と向き合っております。
そんな私が花丸恵さんの「日和見日和」を読んだら……興奮するのは当然の結果なんですよ!!!
読んでいる最中、私は忙しかったです。大きな困難が主人公に襲い掛かるとハラハラし、乗り越えるとホッとするを何度も繰り返しました……。物語自体は決して派手ではないのに、読む側の感情を激しく上下させるんです。
応援して心配して、解決して安心して
を何度繰り返したことか。もうこれで終わりだろうと思っていると次の困難が待っているんですよ。不穏な空気がすぐに流れちゃうんです。物語に山場は必要で、小説を書く方はみなさん、主人公に適切な困難を用意されるかと思うのですが、花さんはこれが非常にお上手。
なぜか。
心情描写がお見事だからです!出てくる人物全てが隣で生活をしている人間のようにリアルに感じるのは、細やかな感情の描き方ができているからだと私は感じました。
少しテンションの高い人もいるのですが、最初は「こんな感じで人と接触する人いるかな」と思うんです。実際、主人公もその距離の詰めかたに疑問を抱きますし。私が感じていることを思っていたのには驚きました。読者が考えるであろうことを先取りして文章に用意しておけるなんて、花さんって神様なのではないでしょうか👏
そしてその少しテンションが高い人物も花さんの心情描写によって共感を伴う人間へと変化させてしまいます。新幹線での熟睡度で普段は見せない疲労感をにじませ、テンション維持が非常に無理をしていることを自然に読者に感じさせ不自然さをなくしてしまうんです。すごかったなあ。
キャッチフレーズは「ほろ苦くも温かい、笑顔になれる大人の愛と再生の物語」となっており、大人の物語だと感じました。人間が持っているであろう黒い感情をしっかり描いていますし。ただそれだけで終わらず、それ以上に黒い感情に寄り添う花さんの筆致が本当にお見事でした。
「愛と再生」という言葉には「きれいな話でまとめたくなる危険性があると私は考えています。でも、花さんは黒い部分も痛々しいところもしっかりと描きます。そして、その黒い部分から幸せをしっかりと掬い取るんです。痛々しさからはやさしさを掬い取ります。そのためこの作品は純度の高い「愛と再生の物語」となり、読む側をとらえて離さないのだと思いました。
主人公に直接の関係はありませんが、物語では二つの店が出てきます。そして、主人公が変化する少し前にどちらも閉店をするのですが、主人公が新たな行動を起こすための道標のように私には感じられました。
令和にしては時代遅れの、でも味は確かな二つの店。なくなることでさみしさは募りますが、立ち止まってはいけないというサインにも感じました。物語はハッピーエンドで終わりますが、新しい道を歩み始めた主人公は今後も新しい感情の波に上下されるはずです。でも、必ず前へ進んでいけると安心感を抱いたのは、行間から未来に続く明るさを見つけられたからだと思います。
今後も突然浮かび上がる困難に主人公は心を乱されると思いますが、新たな道を見つけられるでしょう。新しい味もパートナーと見つけられるはずです。
バタークリームは私もぜひ食べてみたかったので残念に思いましたが、過去にとらわれず新たな味(道)を見つけないといけないですよね😉
感情の描き方もお見事でしたが、出てくる食べ物も非常に魅力的です。一昨年はワイン、去年はハンバーガーと花さんの小説を読むたびに食べ物を買いに走っておりますが、今年は仙台麩を買うと思います。
出汁で味付けして卵でとじて……絶対やります✨
TALESにも推薦レビューを投稿しています。
2つのお店の閉店は日和を未来へ誘う標かもしれない
花さんは心理描写が非常に上手いので、ドロリとした黒い感情をしっかり描きつつ、その中から幸せを掬い取り読者の前に提示してくれます。誰もが持つであろう黒い感情に優しく寄り添っているからなのではないでしょうか?これはもう唸るしかないです。 本作には閉店する2つの店があります。1店はひょんなことから主人公が振り回される店、もう1店は閉店しなければ新生活に深く関わっていたであろう店です。この2店舗はどちらも主人公と直接関わりがないのですが、直接ではないものの主人公の人生が新しくなろうとするときに登場しているように思いました。無くなることは寂しさを伴いますが、そこで足踏みし続けるのはよくありません。辛くても悲しくても前を向いてすすむのが人間だからです。主人公は自ら黒い感情から脱却し明るい未来を勝ち取ります。でも、これからも新しくマイナスな思考は生まれるでしょう。それでも辛さや悲しみを抱えつつ、乗り越えるのは人なのではないでしょうか? 第3章は猛進というタイトルなのに何度泣かされたことか。現実で起こり得そうな困難にわだかまりを持ちながら向き合う主人公が本当に素敵で。 読ませていただきありがとうございました!
花さんのエッセイは絶品なので紹介しておきます。読んで間違いなし!
《 創作大賞2026参加作品 》
お時間があればお読みください。「読んだよ」の一言で小躍りをします。
🐌恋愛小説部門(本当にタニシです)
👂お仕事小説部門(はそやmにしては真面目です)
👻ホラー小説部門(怖さアップ!)
🧶オールカテゴリ部門(おふざけに全力!)
