〜同級生の女子を丸刈りにせよ〜 徴兵くじの理髪係に任命された女性兵士の苦悩
今回の作品は、前回掲載したこちらの作品の番外編です。
購読してない方も理解できる内容にはなってますが、登場人物を理解するうえで一度読んでいただけると、より楽しめるかと思います。
今回の作品いつもより多くの断髪シーンのイラストを多く入れてます!
第1章:理髪係という指令
私、大島陽菜が陸軍高校へ編入し、軍の世界へ飛び込んでから3年が経った。
今、20歳という人生の節目を迎えている。
私は美来とバトミントンのペアを続けるため、自らの意志で軍に身を投じた。
陸軍高校卒業後も兵役についている。
すべては親友・美来とバドミントンを続け、世界の頂点を目指すための選択だった。
義務として課せられた兵役期間は5年間。
それは20歳の若者にとってはあまりに重く、長い歳月だ。
しかし、私は後悔していない。
泥にまみれ、銃を担ぐ過酷な演習の日々。
それでも、3年間、軍に属してきたなかで、私たちは逞しく成長し、階級の上がり、立派な兵士として歩み出している。

そして、訓練の合間を縫うようにして、私たちは体育館でラケットを振る。
私たちの頭は、あの日以来、ずっと短く刈られた坊主頭のままだ。
鏡に映る自分の姿には、もう何の違和感もない。
むしろ、アスリートとして、そして一人の兵士として、この短い髪は「覚悟」の象徴だった。
ここで、バトミントンをするようになってから急成長し、今では実業団の強豪選手とも対等に戦えるレベルになり、全日本選手権でも上位に食い込むようになった。
私たちの毎日は、充実感に満ちていた。
「陽菜、今日の練習メニューだけどさ、昨日の課題だったフットワーク重点的にやろうよ!」
訓練後、体育館に向かう途中、美来がいつもの快活な声で話しかけてきた。
「賛成。美来のスマッシュに繋げるために、私がもっと前で拾わないとね」
私たちは共に坊主頭をタオルで拭い、練習に向かう準備を整えていた。だが、その時だった。
「大島一士、加藤一士。練習前に上官室へ行きなさい。」
突然、上官に呼び止められ、上官室へ行くことになった。
「なんだろうね?何かの指令かな?」
お互い疑問をもちながら、ドアをノックし、私と美来は上官室に入った。
「練習前にすまない。今日呼んだのは、お前たちに指令だ。今月行われる『徴兵選考会』の運営係になってもらいたい。」
心臓がドクリと跳ねた。
『徴兵選考会』…通称・徴兵くじ。
20歳になる若者たちが、たった一回の抽選で「日常」か「兵役」かに振り分けられる、残酷な国家行事だ。
特に女子にとって、それは凄惨な儀式を意味する。
くじを引き、「徴兵」の二文字が現れた瞬間、彼女たちはその場で長く伸ばした髪を無残に切り落とされるのだ。
かつて私の母も、この「くじ」によって、徴兵され、日常を奪われ、髪を失い、兵役に就き、父と長く離れ離れになった。
「今回の選考会では、お前たちに『理髪係』に任命する。徴兵された新兵の頭髪を、軍規に基づき丸刈りにせよ」

上官の言葉に、美来が思わず声を漏らした。
「……私たちが、刈るんですか?」
「そうだ。特に徴兵され、ショックを受ける女性たちに対し、男性兵士が手を下すのは混乱を招く。同じ女性兵士である貴様らが担当することで、精神的な動揺を最小限に抑え、フォローせよ。これは国家の配慮だ」
配慮。その言葉がひどく空虚に響いた。
どれほど髪が大切か、それを失うことがどれほど残酷か。
それを知っている私たちが、あの子たちの絶望にバリカンを当てるというのか。
「……承知いたしました」
拒否権はない。
私は複雑な感情を押し殺し、敬礼を捧げた。
だが、次に上官が口にした担当地区を聞いた瞬間、私の冷静さは完全に崩れ去った。
「加藤一士は西海市。……大島一士は『東山市』だ」
「……東山、ですか?」
声が震えた。東山市は、私の地元。
そこに行けば、同級生たちがいる。
小中学校を共に過ごし、一緒に笑い、将来の夢を語り合った友人たちが。
もしかしたら、あの子たちの髪を、この手で切り落とすことになるのかもしれない。
「……やりづらいのは承知の上だ。だが大島、私情に振り回されるな。兵士として、毅然と冷静な対応で淡々と任務を遂行せよ。以上だ。下がれ」
司令部を出た後、廊下で美来が不安そうに私を見た。
「陽菜……東山って、地元でしょ? 友達とか、たくさんいるよね……」
「……うん。どうしよう、美来。私、あの子たちの髪を奪わなきゃいけない。泣き叫ぶあの子たちの顔を、どんな目で見ればいいの?」
私は震える拳を、自分の迷彩服の膝に押し当てた。
「……覚悟を決めるしかないよ、陽菜。私たちはもう、守られる側の女の子じゃない。……あの子たちを兵士として迎える側の、軍人なんだから」
美来の言葉は正論だった。
けれど、その正論が今はひどく冷たく感じられた。
その夜、宿舎のベッドに入っても、一睡もできなかった。
暗闇の中で、整備されたバリカンの金属的な重みを指先でなぞる。
成人式のために伸ばし、おしゃれを楽しんできた同級生たちの髪。それを、私がこの手で。
(私は兵士だ。心を鬼にしなきゃいけない。……やるんだ。それが私の任務なんだから)
自分に言い聞かせるほど、涙が溢れそうになった。
第2章:理髪係の苦悩
三月初旬。
東山市市民体育館は、かつて私が中学の大会でシャトルを追いかけ、歓声を浴びた場所だった。
しかし、今日この場所に満ちているのは、熱気ではなく、凍り付くような沈黙と、時折漏れ聞こえる押し殺したような啜り泣きだった。
館内には、今年二十歳を迎える東山市の若者たちが整然と集まった。
色とりどりの私服、丁寧に整えられた髪、流行のメイク。
この子達はそれぞれの大学生活や仕事を謳歌する「自由な若者」だ。けど、もしかしたらそんな自由を失う子も出てくる…
そして、壇上に立つ迷彩服の上官がマイクを握った瞬間、その場の空気は一変する。
「これより、徴兵選考会を執り行います。読み上げる番号順にくじを引きなさい。『徴兵』の文字が出た者は、直ちに左手の断髪席へ移動。軍規に基づき、その場で頭髪を丸刈りとする」
悲鳴のようなざわめきが波のように広がった。
私は上官の横で、バリカンを手に持ちながら、直立不動で立っていた。

背筋を伸ばし、視線は一点を見つめる。
私の頭は、数日前に美来と互いに手入れをしたばかりの、五分刈りだ。
その無機質な姿は、集まった若者たちにとって「逃れられない運命」の象徴のように映っているに違いない。
見渡せば、見覚えのある中学時代の同級生もちらほら見かけた。
(……やりづらいな)
私は複雑な心境になりながら、不安そうに並んでいる同級生達を見ていた。

そして、くじ引きが始まった。
一列に並んだ若者たちが、震える手で抽選箱に手を入れる。

「徴兵免除」を引き当てた者は、その場でへなへなと座り込み、神に感謝するように涙を流す。
「やったぁ!徴兵免除!」
「大学生でいられる!!」
女子たちは抱き合い喜んでいた。

まだ順番が若者は少し恨めしそうな表情を見せていた。
だが、無情にも「徴兵」の宣告は下される。
「徴兵です。断髪席に移動しなさい。」
最初に私の席に案内されてきたのは、中学の同級生だった伊藤智己くんだった。
どっちかというとクラスでも大人しい子だった。
「……座ってください」
私は感情を殺した声で告げた。
彼は絶望で焦点の合わない瞳を泳がせ、私の坊主頭を見て一瞬息を呑んだが、それがかつてのクラスメイトだと気づく余裕はなかった。
私は彼の首に白いケープを巻き、バリカンのスイッチを入れた。
ブォオオオン……。
静かな館内に響き渡る、けたたましいモーター音。
私は迷いなく、彼の額に刃を当てた。柔らかな髪が、帯状になって床に落ちる。
彼は唇を噛み締め、膝の上で拳を固く握っていた。一掻きごとに、彼の「日常」が削ぎ落とされていく。

10分後、そこには軍人としての第一歩を踏み出した、一人の丸坊主の青年が残された。
作業をこなしながら、私は無意識に列を走査していた。
そして、見てしまった。
不安に顔を歪ませ、列の最前列に並ぶ、懐かしい面影を。
「あれは……由香里!?」

浜名由香里。
小学校時代、母が戦場へ行き不在で孤独だった私を、誰よりも心配し、支えてくれた親友。
いつも下校時に一緒に帰っては、お互いの家に行った遊んだ仲だった。

中学からは学校が別になり、私たちが離れ離れになっても、時折連絡を取り合い、私の誕生日には必ずメッセージをくれた。
彼女は今、肩まで届く柔らかなセミロングを緩くカールさせたオシャレな女子大生だ。
大学で栄養学を学んでいると言っていた彼女は、きっと素敵なキャンパスライフを送っているはずだった。
「次、浜名由香里さん。」
(お願い、由香里。引かないで。免除を引いて……!)
由香里が震える指で取り出した紙を、立ち会いの兵士が冷酷に読み上げる。
「浜名由香里さん、徴兵!」
「……っ、う、嘘でしょ……!いやっ、嫌ぁぁーーー!」

由香里はその場に崩れ落ちた。
周りの友人が悲鳴を上げ、彼女の肩を抱くが、兵士が無情にも彼女を引き離す。
私の心臓が、早鐘のように打ち鳴らされる。
(私が刈るの? 私があの由香里を……?)
兵士に連れられ、由香里が私の目の前の椅子に座らされた。
彼女は顔を上げ、涙で滲んだ視線の先に私を捉えた。
その瞬間、すぐに私だと気づき、彼女の瞳に驚愕の色が走った。
「陽菜……!? 嘘、陽菜なの? 陽菜だよね!?助けて、陽菜! 私、徴兵なんて嫌だよ、坊主になんてなりたくないよぉ!」

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