シン・アナキズム 重田園江
書店でそのタイトルを目にして、ふと手に取って見たところ、かなり面白そうだったので、母校の図書館で借りて読んでみたが、期待以上の面白さ。アナキズムについて書かれた本に対して男女の別に関して云々するのも野暮かもしれないが、女性によるアナキズムの著述というのは、かなり珍しいのではないか。しかも、著者は僕と同年生まれ(学年的には著者の方が一つ上)で、その文体やスタンスに僕の同郷であるブレイディみかこにかなり近いものを感じた。
それはともかくとして、本書でも言及されている斎藤幸平をはじめとする幾人かの識者が人新世という言葉を用いて、少数の先進国によるエネルギー及び人力の多大な搾取、そしてそれが及ぼす甚大な被害について警鐘を鳴らしているのにもかかわらず、なかなかその危機感が人々の間で共有されないということに改めて嘆息せざるを得ない。
とりわけ衝撃的だったのは、養鶏場の現場。よく昨今の教育現場を揶揄して、あそこは結局ブロイラーを養成しているだけなんだ的なことを言ってきたが、実際にブロイラーを育てている現状はそんな生やさしいものではなかった。狭い場所にひたすら鶏を押し込め、無理やりに卵を産ませる。鶏の健康状態、ひいてはそこで働く人たちへの配慮は皆無と言っても過言ではない状況。あれでは鳥インフルエンザその他の感染症がいつ発生してもおかしくない。こうした状況を知らずして、卵の値段の高騰を常々恨めしく思っている我が身をちょっと反省した次第。
また、常々日本ほど国家が国民のことを考えていない国はないのではないか…と思ってきたが、程度の差はあれ、他の国も結構似たり寄ったりだということにも驚愕。とりわけ第二章で告発されているモンサントと米国国家の癒着、そして彼らの抑圧によって、アメリカの農家がどれだけ理不尽な状況に押しやられているかには、愕然とさせられる。
その他読みどころ、言及すべきところはまだまだあるが、未消化な部分も多く、一気に書くことはできない。これは手元に置いて繰り返し読む価値があるかも。(2025年12月1日読了)
