【第2章】スター・ウォーズとロッキーの調べ 〜裏方から見た“成功者”たちのチープな手品〜
■ まえがき
本作品は、筆者がこれまでの人生で遭遇してきた数々のカルト、マルチ商法、新宗教との関わりを、当時の記憶を基に書き起こした実話エッセイです。ただし、関係者のプライバシー保護および法的な配慮のため、大手の団体名を除き、個人の特定に繋がる具体的な支部名、個人名、地名、ホテル名などはすべて偽名への変更やボカし(抽象化)を行っております。特定の個人や組織を誹謗中傷する意図は一切なく、あくまで一個人の視点から見た集団心理の観察記録としてお楽しみください。
前回の記事の最後に「次回はシャブとアムウェイ」と予告しておりましたが、楽しみにされていた方、申し訳ありません。かなり強烈なエピソードのため、もう少しだけ時間を置いてじっくりお届けしたいと思います。
というのも、私の人生のタイムラインを正確に振り返ると、あの元暴走族の後輩と出会う少し前――大学生時代のアルバイトの中に、私の「カルト・マルチ撃破・回避能力」のすべての原点となった、決定的な体験があったからです。
今回は時系列に沿って、まずは私が世の中の「仕掛けの裏側」を見破る目を手に入れることになった、とあるシティホテルでの出来事からお話しさせてください。
あれは私がまだ、大学生のころの話だ。
当時、私は某私鉄沿線にある地域最大級の老舗シティホテルで、ブライダルや宴会、セミナーやスクールの音響・照明を担当するアルバイトをしていた。
ホテルの調光室(音響・照明ブース)というのは、実はその空間で最も冷静に、かつ客観的に全体を観察できる「絶対的な特等席」である。なぜなら、ステージ上で繰り広げられるドラマチックな演出のすべては、私の手元にある音響ミキサーのフェーダーや、照明のスイッチ一つでコントロールされているからだ。
当時、そのホテルでは、大手マルチ商法「ニュースキン」の特定の大規模グループが、頻繁にスクールや表彰パーティーを開催していた。
一般の参加者たちは、きらびやかな会場と「成功者の熱い言葉」に目を輝かせ、時には涙を流して感動していた。しかし、舞台裏の私から見れば、彼らが乗せられているのは「使い古された安い手品」に過ぎなかった。
何しろ、彼らの演出マニュアルはあまりにもベタだった。
そのグループのトップである「No.1」の人間が登場するとき、音響ブースの私は、あらかじめ指定された『スター・ウォーズのメインテーマ』を大音量で流すことになっていた。あの壮大なイントロと共にスポットライトを浴びて現れるリーダーを、信者たちは熱狂的な拍手で迎える。
そして「No.2」が登場するときのBGMは、決まって『ロッキーのテーマ』だった。これまた、挫折から這い上がる男の哀愁と闘志をかき立てる、お約束の選曲である。
ステージ上の彼らがどれだけ「夢」や「仲間との絆」を熱弁しようが、私にとっては「はい、ここでBGMフェードイン」「ここでスポットライト切り替え」と、指示書(台本)通りに指先を動かすだけの作業でしかない。一般の会員たちが「すごい!感動した!」と熱狂しているその感情の波そのものが、私の手元のフェーダーによって作られた「人工物」であることを、私は物理的に理解していた。
このバイトを長く続けたおかげで、私は下手にセミナーに通う会員よりも、彼らの製品や勧誘システム、そして「空間の巻き込み方」に詳しくなってしまった。
何より大きかったのは、「世の中の熱狂やカリスマ性なんてものは、裏側の仕掛けを知ってしまえば、ただのチープな演出に過ぎない」という、冷徹な裏方の視点を大学生の時点で手に入れてしまったことだ。
この時に培った「演出のタネ明かしを見抜く目」が、その後の私の人生に次々と襲いかかる、アムウェイ、L&Gといった化け物マルチや投資詐欺の手口を、すべて「撃破」「回避」していくための最強の武器になるとは、この時はまだ知る由もなかった――。
【次回予告】
ホテルの音響ブースという特等席から、マルチの仕掛けを冷ややかに見破る目を手に入れた大学生の私。
しかし、社会は広い。
私の人生には、この演出の裏側を知っていてもなお、背筋が凍りつくような「人間の脆さ」を見せつけられる瞬間が訪れます。
次回こそ、満を持してお届けします。
少年院に3回入り、どうしても覚醒剤(シャブ)を辞められなかった元暴走族の後輩。彼がマルチ商法「アムウェイ」のミーティングで大号泣し、一瞬でシャブを辞め、音楽の魂まで塗りつぶされていった驚愕の一部始終。
第3章:『シャブとアムウェイ 〜脳内報酬系の上書きという、恐るべき救済のパラドックス〜』
近日公開予定です。お楽しみに。
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👇第3章の記事はこちら👇
