35年ぶりにポルトガルを訪ねた話⑭ 10日目 ポルトへ:今日も歩きまくったわー
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アルマス礼拝堂
完全にポルトガルの教会に魅了されてしまったY氏を引き連れ、3日目の朝一番はホテルから歩いてすぐの礼拝堂へ。
外壁全面を覆うアズレージョが見事だ。この通りの名前でもあるキリスト教の聖人、聖カタリーナの生涯が描かれているのだという。
入口は常に観光客の出入りが激しいのに、礼拝堂の中はミサの最中で、地元の主に高齢者の方々が大勢集まっている。そして神父さんの先導で皆さんが時折聖歌を口ずさむのだった。
観光客がこんなに訪れるようになって、地元の人には生活を荒らされる感覚がないのだろうか。ふと心配になってしまうが、見たところそんなことには動じる様子もない。開け閉めのたびに入口を通り抜ける隙間風など介せずに一心に祈りをささげている。我々はただ、せめて邪魔することのないよう、そっと出入りするのみだ。



ヨーロッパの他の都市ではオーバーツーリズムに地元民が辟易して、反対のデモが起きたり、観光客が攻撃される例まであると聞く。受け入れた移民との仕事の奪い合いや治安の悪化が、政治の右傾化を招いていることも知られている。これは日本にもすこしずつ見られてきていることだろう。
ポルトガルでも、観光客や移住者の急増は、リスボンやポルトなど大都市の不動産価格の急激な高騰を招いているという。物価も一気に跳ね上がり庶民の懐を苦しませているようだ。元来穏やかなポルトガル人の気質も相まってか、今のところどの場所を訪れても、客として嫌な思いをすることは全くない。それどころか皆気持ちの良い笑顔で迎えてくれ、とても親切に接してくれる。経済的にも一時は深刻な低迷を抱えていたポルトガルが昨今の観光業の振興で潤っている面も十分にあるだろう。
しかし、一旦観光客や移民との大きな衝突が起きたり、物価の高騰がもっと深刻に地元民を悩ませるようになったら、穏やかなポルトガル人も黙ってはいられなくなるに違いない。ポルトガル人のやさしさに甘えてばかりいてはいけない。訪れる私たちにも謙虚な気持ちが求められている気がする。
あちこち散策

2年前に大改装されたそうだ
衛生面の配慮がなされたのだろうが
ステンレスだらけなのでちょっと味気ない









ポルト大聖堂
この旅最後の教会見学です。






やっぱりクレリゴスの塔が見える



優しい色合いだなあ


観光スポットには往々にしてストリートミュージシャンがいて、彼らは意図してかせずにか、その場によく合った楽曲を演奏している。私たちの記憶に残るポルトガルの思い出は、見た目の印象だけではなくて、その場のBGMも一緒に脳に刻まれる。思えばポルトガル人は音楽が大好きで、伝統的な歌を聴かせる場が数多く提供されているのはもちろん、通りすがりの人々が歌を口ずさんでいたり、楽器を鳴らしていたりする場面に出会うことも多い。喋り方だって大げさに言えば歌を歌っているかのような抑揚を伴う。本当はこの国は画像で残すより映像で残すにふさわしい土地なのかもな、と思う。
ボルサ宮殿
ジョルジェからここはぜひ行った方が良い、と推された場所。最近まで使われていた商工会議所だ。
この建物の建設は王室の認可のもと行われたというのに、完全な完成を見る直前にカルロス1世国王が暗殺される。まもなく共和国の宣言が施行されると、この宮殿内に飾られていたカルロス1世の絵画はピストルで破壊されたという。
見学するにはガイドツアーへの参加が必要。一人12ユーロ。





絵画はもちろん芸術だが商業も芸術、
法廷の間も芸術作品であり、その場で行われる裁判もいわば芸術
人間の営みそのものが芸術
そんな気にさせてくれる




ガイドさん曰く「私の思う世界で最も美しい空間」
完成に18年の歳月を要した
今でも要人を迎える際に使用するという
商業の歴史とその歴史の中で備わった格式、そしてそこに注がれる深い敬意が、日本人の商業に対する感覚とはかなり違うのではないかと感じた。思えばポルトガルがかつて大活躍をし財を成したのも、世界各国への航海を通じて行った商業取引によってだった。大航海がポルトガル人のプライドならば、商業もまたポルトガル人をポルトガル人たらしめた重要な活動だ。

ポルトガルで食べ物を注文すると出てくるまでドキドキする
一体どんな大きさのものが出てくるのか、果たして食べきれるのか、と
この日もやられた
このタコの大きさったら
しかし、身はふっくらしていて味も最高
添えられたポテトもほうれん草も多すぎるけど
やっぱり美味しい
ポートワインセラーのツアー
このプランもジョルジェからの推薦。私は最近めっきりお酒に弱くなってしまったので、勧められなければ自分からはきっと足が向かなかったことだろう。でもポルトとワインの関係は切っても切り離せない。この経験がなかったらポルトを見てきたと胸を張って言えなかったかもしれない。本当に参加してよかった。
カイシュ・デ・ガイアには数多くのワインセラーが軒を連ねていて、それぞれ観光客相手に酒蔵の見学ツアーを実施している。そのなかでジョルジェのお勧めはこちら1715年創業の老舗フェレイラだ。
もともとイギリス資本の会社が多い中で、フェレイラはこれまで一貫してポルトガル人によって経営されてきたセラーだ。
ツアー参加にはオンラインでの参加予約が必須。一人22ユーロ、3種のワインのテイスティング付き。



ポートワインの原料となるブドウは、ドウロ川上流地域の渓谷で栽培される
摘み取られたブドウから絞り出された汁は、現地で樽に詰められたあと
この地に運ばれてきて熟成される



甘さが強くアルコール度数が高い
原料のブドウや熟成の時間によって
色や味の異なるいくつかの種類に分類される





濃厚な香りだけでも酔ってしまいそう
テイスティングテーブルで同席したのは、アメリカ、インド、プエルトリコからの旅行者の面々。皆一様に、旅を通じてポルトガルの大ファンになったという。理由は皆同じで、①親切な人々②治安の良さ③食べ物のおいしさ。
一方、皆日本への旅行経験もあり、日本も同様の理由で大好きだという。日本の場合、順番でいうと、③-②-①。特に③は抜群だとかで、インド人の青年は、トランジットの東京滞在でも、わざわざ都心まで美食を楽しみに行くらしい。曰く、世界で一番美味しいピザは東京で食べられる!へえ~、そうかなぁ。
個人的には、今の日本の諸相にはちょっと残念な思いをすることの多い日々なのだけれど、この時は少しだけ勇気づけられた気がしたのだった。
セラ・ド・ピラール修道院からポルトの夜景を見る
そして騙される?
ポートワインの深い余韻が残ったまま、小雨のなかをドン・ルイス1世橋のたもとの丘に向かう。ライトアップされた修道院は幻想的な美しさだが、すでに扉は閉じている。

そして、最後にこの丘から見るポルトの夜景を目にもレンズにも焼き付ける。

このあと、また橋を渡ってポルト市街に戻るのだが、最後の夜にして、この旅最初で最後の、がっかり(だが笑える?)体験が生まれる。

修道院近くの乗り場、ジャルディン・ド・モウロ駅からメトロに乗ってドン・ルイス1世橋の対岸に戻ろうと試みるも、ポルトで初めて乗るメトロの券売機に慣れず、もたついてしまう。すると、髪が長くて小柄な初老のおばちゃんがさっと現れ、あれやこれやと教えてくれる。まあ、親切な人、と思い、すっかり甘えて手伝ってもらう。
教えられながら券売機を操作している最中に、メトロが一輛やってきた。
「おばさん、乗らなくていいの?手伝ってもらっちゃって申し訳ないです。どうぞ乗ってください。」
するとおばちゃん、
「いいのいいの、また来るわ。」
そして、無事発券。
「本当にありがとう、助かりました。」
するとおばちゃん。。。
「実は私、メトロに乗りたいんだけど、お金がないの。2.5ユーロ必要なの。」
えー、なんと!おかしくないか~?乗ろうとしてここにいたんじゃないの~?
でも、これだけしっかり手伝ってもらっちゃって、見捨てるわけにもいきません。お金を渡しました。
そして、メトロが来て、私たちが乗車すると、おばちゃんは乗車することはなく、ささっと別の外国人観光客のもとに。
そうかー、やられた~。おばちゃん、こうやって小金を稼いでいるんだ。
でも、要求された金額も悪意とまでは感じさせない微妙な金額。うーん、うまいなあ。
騙された、のか?でも助けてもらったのも事実だし、微妙な感じ。
幸い、ポートワインの酔いが、ま、いっか、と笑える気分にさせてくれたのだった。

さて、ポルト滞在も、ポルトガル滞在も、残り少なくなりました。
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