G.K.チェスタトン『ブラウン神父の知恵』
逆説の論理の魔術師チェスタトンを代表する名シリーズの第二集。トリックの凄みでは、名作揃いの巨匠チェスタトン作品のなかでもトップクラスに位置する「通路の人影」、仮装舞踏会を舞台に神父の心理試験反対論を織りまぜた「機械のあやまち」など、いずれ劣らぬ名作12編を収録。とても名探偵とは思えない外見のブラウン神父が明かす奇妙な事件の真相は、読む者の度肝を抜く!
『童心』に比べると、少し食い足りない。提示される謎がどうももう一つ輝きに欠ける印象。
何処かのサイトでも指摘されていたように(どこで見かけたのか忘れたのでリンクできないけれど)、別人に思われた二人が実は同一人物だった、みたいな話がいくつかあって、やや既視感も覚えつつ読み進めることになる。
とは言え、つまらないことはなくて、クイクイと読める。
冒頭の「グラス氏の失踪」が愉快で愉しい。バカミスとも言える真相だけれども、人の死なないこういうほのぼのした話も良いもんだ。
チェスタトンの紡ぐ物語は犯罪を巡るものなのだけれど、単純な善悪二元論ではなくて、誰の心にも悪の種は潜んでいるということ、罪というものの源泉が人間の精神にあるということが、さらりと描かれている。
そのあっさりとした筆致が良い。
