G.K.チェスタトン『ブラウン神父の秘密』

第四作品集に至っても、未だ驚異的なクオリティーを保つ<ブラウン神父>シリーズ。不可解かつ幻想的な殺人の謎「大法律家の鏡」、この世の出来事とは思えぬ状況で発生した金塊消失事件「飛び魚の歌」、常識を超えたユーモアと恐怖の底に必然的動機がひそむ「ヴォードリーの失踪」など珠玉の10編を収録。シリーズの精髄ともいうべき逆説とトリックの凄みが横溢する、唯一無二の名短編集

今作においても、一人二役や、実は別人、という話が多くて、トリックの凄みとやらは、残念ながら僕にはあまり感じられない。

何となく筋も透けて見えてしまう。

でもつまらないかというとそうでもなくて、なんか不思議な味わいがあってつい読み耽ってしまう。

とくに今作では巻末の「マーン城の喪主」で交わされる悪についての議論は、ミステリの範疇を超えて神学的な深みがある。さすがチェスタトン。

その他にも、魔術や超常現象についての厳しい批判なども、キリスト教についての勉強になる。

チェスタトンがいつカソリックに改宗したのかは良く知らないけれど、この作品を書く時にはすでに改宗していたんだろう。そうでなければこんな神学的な深みのある議論は書けない気がする。

そして、だからこそ、「目に見えている世界」「人間が知覚している世界」が、真理とは限らないことを繰り返しチェスタトンは書いているんだろう。

このシリーズは、極めて特殊な、しかし真っ当なキリスト教文学なんじゃないかと思う。

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