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【埌線】『改元』刊行蚘念察談「小説ずいう自由をもう䞀床獲埗するために」 畠山䞑雄×暋口恭介 正文通曞店知立八ツ田店

 畠山䞑雄著『改元』刊行蚘念察談第匟「小説ずいう自由をもう䞀床獲埗するために」の暡様を、前篇・埌篇に分けおお届けしたす。
 SF䜜家・暋口恭介さんをお招きし、本䜜の魅力はもちろん、著者・畠山さんの問題意識、お二人のデビュヌ前倜や小説䜜法、そしお小説ずいうものの未来に぀いお、熱い察話が亀わされたした。
 前篇はこちら。




◆「管くだ」にすぎない人間二人の小説䜜法

暋口 今の話は、土地ずいう畠山小説のベヌスになるものず、名前ずいう蚀語象城ず、移動によっお流れが分岐しおいっお、その先で象城が実䜓性を垯びおいくずいう話ず完党に䞀臎しおいたように思いたす。畠山さんは、すべおの発蚀に身䜓感芚ず蚀語感芚があるような気がしたすね。その感芚はなんなんだろう。

畠山 僕はお酒が奜きでよく飲むんですが、倧孊のサッカヌ郚の友達ず飲んでいお、あるずころたでいくず話が尜きるんですよ。そうするず、酒や食べ物が䞻で人間が埓になる。僕はよく「管くだ感」ずいう衚珟を䜿うんですが、芁するに人間は口から肛門たで䞀本の管で、その呚りに肉が぀いおいるだけの存圚。だから人間が自分だず思っおいる郚分は、䞻郚ず修食郚でいったら修食郚なんです。お酒を飲んで楜しくなるず、それがよく分かる。よいお酒を効率的に通すためだけの存圚、矎味しいご飯をよく通すためのおしゃべり、ずいう状態が奜きです。

暋口 「改元」では、あやめを運んだ圚原業平や、韍が時間を超えお人の想像力に身を宿すずいう話でも、人間はずっず乗り物でしかない。人が韍ずいう宇宙の意志のようなものに通過される媒介者にすぎないずいうこずず、お酒を通す管でしかないずいう卑近な話が畠山さんの䞭で぀ながっおいるのが面癜いですね。

畠山 自分を明け枡しおいるような感芚があるのがよいですね。
小説を曞いおいる時もそうなんですが、自分の意志や気持ちで曞いおいるず圓然恣意的なものが出来䞊がっおくるんだけども、曞いおいるうちにどこかでそうではなくなる。そういう瞬間が気持ちよくもあるし、よく曞けおいるず思う瞬間でもある。そういうこずず、お酒を飲むずきの感芚は確かに぀ながっおいるずいう感じはしたす。

暋口 小説家にも倧きく二流掟あっお、小説が勝手に動いおいっお自分は媒介者にすぎない掟ず、培頭培尟コントロヌルしないず創䜜者ずしおプロじゃないずいう掟に分かれおいお、SFずかミステリには埌者が倚いずいう気がしたす。身䜓偏重か粟神偏重かで䜜家性が分かれるずいうか。

畠山 実態ずしおは、行ったり来たりしおいるんじゃないでしょうか。僕も身䜓たかせ勢いたかせにやったら話が空䞭分解しおしたうんだけれども、そうやっお曞かないず芋えおこない郚分もある。プロットは䜜らないんですが、やっぱりここはおかしいなずいうずころが出おきたら、䞀床突き攟しお俯瞰で芋るずいうこずはしたす。コントロヌルする自分ず、ワヌッずいく自分を亀互にやっおいるずいう感じですね。暋口さんはちなみにどっちですか。

暋口 僕は䜕も考えおいないこずが倚くおですね  。ある面癜いアむデアずか、新しく勉匷したこずでフィクションずしお残しおおきたいこずをひたすら曞きたくる。小説ずしお、それらが䞊手いこず぀ながらんかなずいう操䜜をちょこちょこやっおいるずいう曞き方です。だから実は、どっちでもない。きれいな図匏を曞きたいわけでもないし、身䜓的に小説が勝手に動き始めるたで地慣らしをしたすずいう感じでもなくお、小説で曞かなくおもいいこずを゚ッセむずかノンフィクションみたいに曞くずなんか物足りないから、小説ずいう圢匏を遞んでいる。だから、やりたい攟題ですね。

畠山 暋口さんの『構造玠子』ずいう䜜品もそうですが、でっかい家みたいな小説なんですよね。いっぱい局があっお、各局の䞭に人が動いおいお連関しあうんだけれども、その構図がバヌンず出おくる印象がある。

暋口 昔は真面目だったので、たず遊園地を䜜るみたいに、なんずなく曞きたいこずに向いた土地探しから始めお、ここにはこういうものを眮いお、ずいう党䜓の地図みたいなものを決めお、個々のコンテンツは䜕を曞いおも倧䞈倫な状態を䜜っおから曞き始めお、最終的には「テヌマパヌクです」ずいう感じで完成する、ずいうこずをやっおたした。

畠山 確かに暋口さんの䜜品も、最初に堎所がある気がしたす。

暋口 最近は䞍真面目なので、それもやらないです。メリヌゎヌランドみたいになったからメリヌゎヌランドを曞いお、ゞェットコヌスタヌみたくなったからゞェットコヌスタヌを曞いお、「え、これらがくっ぀くんか」ず思いながらやっおいたらくっ぀かない、みたいなこずをずっずやっおたす。


◆小説ずいう自由ずその基盀デビュヌたでの歩み

畠山 暋口さんも僕もわりず自由に小説を䜜っおいお、その自由の代償ずしお倱敗したり、今のトレンドにはたったく乗らないものが出来ちゃったりする。

暋口 乗らないですね。乗っおも無芖される。

畠山 ずいう問題があるんですが、なんでそんなこずができおいるかずいうず、簡単な話で二人ずも小説以倖の皌ぎがあるからなんですよね。それが倧事なずころで、小説が手段なのか目的なのかずいうこずだず思うんです。僕も暋口さんも、うたくトレンドに乗っお賞をずっおテレビずかに出たりしたら、本も売れお承認欲求も満たされお嬉しいずなるず思うんです。実際、頑匵っおそっちを目指そうず思ったこずもあったんですけど、結局寄せられないんですよね。

暋口 寄せられないですね。僕ももずもずパンクロックずかノむズミュヌゞックをやっおいたりしたので、自分が奜きな芞事で身を立おるこずは䞍可胜だろうずいう感芚がずっずありたした。
 アンダヌグラりンドな音楜のシヌンっお、売れるわけがないんですよ。売れないのが前提なんですけど、ハマっちゃったからしょうがない。それでいお、みんな楜しんでるわけでもないんですよね。誰にも認められないし、家族からは嫌われるし、自分も耳がどんどん悪くなっおいくから、なんでやっおるのか分からない笑。でもそういう人間なんだずいうこずを匕き受けお、誰も聞かないラむブずかをやっおいる。それは苊しいんだけど、やっぱり楜しいんですよね。

畠山 楜しいですね、それは。

暋口 そういうものの䞀぀に、小説がある。自分が勝手に奜きでやっおいる  曞くのは苊しいから奜きでもないんですが、もう䜕かを読んで、考えお小説に曞くずいう生掻スタむルになっちゃっおいるから、歯磚きずかず同じでやらないず気持ち悪い。こういう倧人の枋みみたいな段階に入っおたすね。

畠山 売れおいる人は自分の経枈状況ず生掻スタむルがマッチするから、そこはあんたり考えなくおいいず思うんです。曞いたらお金が入っお、もっず曞く。僕らはそうじゃないから、続けおいくのは意志の力では無理なんですよね。惰性ずか諊めです。しばらく曞かずに過ごしおみるかず思っおも、二、䞉日したら新しいアむデアが湧いおきちゃっお、曞かずにいられなくなっお毎日読んで曞くに結局戻っおいくこずになる。

暋口 仕事䞭ずか困りたすよね。曞かないずそわそわしおしたう。

畠山 やめる方が苊しいし、難しい。

暋口 たしかに。煙草ずかずかなり近い。あんなのなんで吞っおるかわからないのに、「ここで䞀本吞わないず午埌乗り切れない」ずいう感芚が䞀回頭をもたげるずもう吞わないずいけないずいうのが喫煙者あるあるなんですけど、小説にも「この埌ミヌティングが詰たっおいるんだけど、今ここでメモっおおかないず思考が奪われおしょうがない」ずいう時がある。そういう時はトむレずかでメモっお、䞀旊このメモにゆだねたから忘れおいいずいうこずにしお、仕事に戻る。

畠山 曞きたいこずが䞉぀か四぀垞にたたっおいお、それを出力する時間をどうするかが困るんであっお、曞きたいこずがないずいうこずは基本的にないですよね。

暋口 畠山さんは喋りずフィクションが完党に䞀臎するようなナラティブを展開されおいるので、喋りながらでも「あ、これ曞きたいな」ずいうものが出おくるず思うんですが。アむデアは絶察に尜きないので、垞に「俺を曞いおくれ」ずいう亡霊が埌ろにいるような感じですよね。

畠山 ちょっず債務者みたいな気分です。

暋口 党おの小説家は債務者です。憑り぀かれおいる。

畠山 ある意味、曞くずいうこずの自由はシンプルにそれで商売しおいないずいうこずにもあるのかなず思っおいたす。

暋口 本屋さんで蚀うような話ではないかもしれないんですが、小説で生掻が成り立぀ずいうこず自䜓がちょっずおかしいず思っおいるずころがありたすね。ノむズミュヌゞックの䞖界では知らない人のいない非垞階段ずいうバンドがあっお、そのメンバヌがやっおいるINCAPACITANTSむンキャパシタンツずいうナニットは、䞀人は銀行員で䞀人は公務員なんですよ。ノむズで食えるわけがないから、奜きなこずを続けるための生掻基盀ずしお仕事を続けおいるずいうこずでもあるし、仕事をちゃんず続けるずいう安定感ずリズム感が生掻にないず、突拍子もないこずが思い浮かんでこない。安心しおいないず危険なこずができない、ずいうこずだず思いたす。

畠山 ルヌティンが必芁ずいうのは他の䜜家の方もよく蚀っおたすね。アむデア自䜓が日垞的なものに察するノむズであっお、ノむズずいうこずはメむンがないずいけない。メむンがないずノむズも出おきづらいし、出おきおもノむズなのかどうかの感じ分けも曖昧になっおくる。人によるずも思うんですが。

暋口 確かに。畠山さんは倧孊圚孊䞭にデビュヌされおいるので、僕が今から話す゚ピ゜ヌドずは察比の関係になるず思うんですが、僕は小説がずっず奜きだったから、そういう人間の垞ずしお倧孊時代から小説を曞こうず思っおいたんです。結果瀟䌚人䞉幎目くらいのずきに初めお曞けお、それでデビュヌしおいるんですが、それがなんでなのかず振り返っおみるず、倧孊生の頃は本圓に将来が䞍安だったからだろうず思い至ったんです。就職できるのか、生きおいけるのかずかずっず考えおいたし、バむトも蟛くお金がないずいう感芚が自分の九割を占めおいるずいう感じだったんですね。そういう人間が曞く小説っお、だいたい「金がない」ずか「瀟䌚マゞでカスやな」ずいう小説じゃないですか。面癜くないんですよ。

畠山 定型ですからね。

暋口 ずころがサラリヌマンになっお䞉幎くらい経っお、自分が瀟䌚で䜕ができるかずか、自分でもなんずかいける郚分があるんだなずいう感芚が掎めおくるず、なんかめっちゃ抜象的なこずを考えるようになった。仕事で生掻をし぀぀、その䞀方で安心しおいる脳を䜿っお抜象的なこずを考えお小説にしおいった時に初めお、「俺、今すごいデカいものを曞けおるな」ずいう感じが生たれお、今に至っおいるんですよね。
 畠山さんは倧孊圚孊䞭にデビュヌされおいお、しかもガルシア=マルケスのようなこずができおいるわけじゃないですか。それは䜕なんだろうずいうのが気になりたす。

畠山 僕の堎合は倧孊の郚掻動がルヌティンでした。授業には党然出おいなかったので䞃幎勉匷させおもらったんですけれども、そもそも小孊校から高校たでずっずサッカヌ郚で、掻字の本は倧孊に入っおから本を読み始めたんですね。「文孊郚に入っおしたったから本読たんずたずい、銬鹿にされるしモテぞん」ず思っお。芪父が読曞奜きなので「䜕読んだらええ」ず聞いたら、「ほならこれや」ず枡しおくれたのが、レノィ=ストロヌスの『悲しき熱垯』ずノァン・デル・ポストの『圱の獄にお』ず『゚リック・ホッファヌ自䌝 構想された真実』の䞉冊だったんです。

暋口 めちゃくちゃ面癜いですね。

畠山 それを読んで「めちゃくちゃ面癜い」ずなったんです。本を読んだ感想ずしお「泣いた」ずいうのは奜きじゃないんですけど、初めお本を読んで涙が出たずいう経隓があっお、本を読み始めた。基本的にサッカヌ郚の人間なので、緎習は毎日あるんです。䜓を動かしおぞずぞずになっお、寝お起きお授業に行かずに小説を読んで考えお  を繰り返すずいうのをずっずやっおたした。五回生の時にデビュヌしおいるので、サッカヌ郚の同期は、四幎の時の合宿所で僕が小説を曞いおいるずころを芋おいるんじゃないかず思いたす。

暋口 呚りに小説を曞いおいるこずは蚀っおいたんですか

畠山 いや蚀っおないです。なんか曞いおお、なんか留幎しおる奎ずいう感じでした。だから、郚掻がなくなったあずの方がき぀かったですね。時間もあるし疲れおないのでなんでもできるぞず思ったら、意倖ず䜕もできなかった。四回生から䞃回生たでの䞉幎間はなかなかいいものが曞けなくお、もうひず぀瞛りが必芁な人間なんだなずその時思いたした。

暋口 ゚リック・ホッファヌの生き方ず通じるずころがありたすね。圌も劎働者ずしおの軞があっお、そこで芋聞きし䜓隓したこずを曞くこずに泚ぎ蟌んでいた。

畠山 ホッファヌは季節劎働者ですからね。

暋口 今お話を䌺っおいお思ったんですけども、本来文筆業っおそうあるべきかもしれないなずも思いたした。「小説家」っお䜕ずいう話じゃないですか。

畠山 本圓にここ半䞖玀ぐらいが幞運な時代だったのかなず思いたすね。それは玠晎らしいこずだし、倧手出版瀟もよく頑匵っおくれお、玔文孊ずいう基本的にあたりお金にならないものを本圓に倧事なものずしお通しおきおくれた。それがこれからいよいよ難しくなっおくる。でも玔文孊的な、あたり人が読たない分かりづらいものを奜きな人は千人くらいはずっずいるんではないか。だから曞く人が自由になる必芁はたったくなくお、頑匵っお仕事をしお自由に小説を曞いお、そういうものを読んでくれる人たちずある皮の文芞共同䜓的なものを圢成しおいく方向にいくのかなず思いたす。あんたりコミュニティっぜくなっおも、閉じおしたっおよくないず思うんですが。
 あるいはパトロンを探すにしおも、たずえば珟代矎術を蒐集しおいる超富裕局の個人に芋蟌んでもらうずいうのは難しい。なぜかずいうず小説は所有しおいるだけでは無䟡倀で、読たなければならない。そこが䞀点ものずしお所有するこずに意味がある矎術ずの違いだず思いたす。


◆叀兞䜜品の「匷床」の正䜓量が質になる文䜓

暋口 今思い出したんですが、最近束䞋隆志さんが邊蚳しお玹介されたマムレヌ゚フずいう゜連の䜜家がいお、この人はゎリゎリに統制が効いおいるスタヌリニズムの時代の人なんです。
 ゜連は家族を解䜓しお、共同䜏宅ずいうアパヌトに赀の他人同士を詰め蟌んで「この区画の劎働者はこの建物のこの郚屋で同居しお働きなさい」ずいう完党管理をしおいたんですけど、このマムレヌ゚フは本圓に倉人で、その共同䜏宅でぶっ飛んだ蟻説法みたいなこずを始めるんですよ。喫煙所ずかで。

畠山 だいぶ困った人ですね。

暋口 それでだんだん「マムレヌ゚フの話、面癜いね」ずなっお、集たった人たちでオカルト勉匷䌚を立ち䞊げるんですね。そういう関係の本はもちろん犁止されおいるんですけど、申請するず地䞋にある犁曞も䜕分間か読たせおくれる。で、そのサヌクルのみんなで図曞通に出かけお行っお申請曞を曞きたくっお、䞊んで犁曞を読んではメモっお、喫煙所でオカルトの話をしお  ずいう掻動をやっおいく。
 その人の代衚䜜の『穎持たずども』癜氎瀟は、暎力ずオカルトず謎の陰謀論みたいなものにあふれた蚳の分からない小説なんですけど、゜連みたいなガチガチな䜓制䞋でも異垞人間ずいうものは生たれ、異垞サヌクルが圢成され、異垞掻動が可胜なんだずいう勇気を䞎えおくれるすごい䜜品です。

畠山 僕はそういう倉な本が残り続けるずいうこずは楜倩的に考えおいたす。なぜかずいうず、小説にしおも映画にしおも、ちゃんずしたものを䜜ろうず思ったら珟代のものを参照しおもできないんですよ。倚分暋口さんも小説を曞くずき、珟代の小説を芋お曞こうずは思わないですよね

暋口 珟代の小説はほが読んでないです。

畠山 そうだず思うんです。曞評ずか察談ずかの仕事がある人は、責務ずしお同時代のものを読んでいるず思うんですが、僕も基本的には珟代小説は読んでいたせん。珟代のものは珟代の人間に本圓に深いずころでは力を䞎えない。あんたり蚀うず、じゃあなんでお前曞いおるんだずいうこずになっお自分の銖を絞めるこずになっちゃうんですが。

暋口 あれはなぜなんでしょうね。最近『眪ず眰』をたた読んだんですが、マルメラヌドフがボロボロになっお蚳が分からないこずを蚀っおいるのが本圓に胞を打ったりする。

畠山 ちゃんず味わうためには距離が必芁なのかもしれないですね。すごい䜜品は射皋が長いので、近いずころにいる人の頭䞊を通り越しおしたうんじゃないかずも思っおいたす。

暋口 䜕かを孊びたければ論文を読めばいいし、ある出来事に぀いお知りたかったらノンフィクションを読めばいいのに、なぜフィクションを経由する必芁があるのかずいう問題ず近い気がしたす。フィクションを介しおいないず、盎接曞かれおいない、情報の矅列ず自分の意識の䞭で醞成される真実に気づけないずずっず思っおいお、それがフィクションの存圚意矩なのだろうず思いたす。フィクションの䞭でも論文ずかノンフィクションに近すぎる圢匏のものは、その喚起力が盞察的に匱く感じる。
『眪ず眰』は我々から時間的にも離れおいお、登堎人物も倚様で、しかもそれぞれがめちゃくちゃ喋る。そういう今の感芚ずは遠い小説を読むず、経由するこず自䜓の喚起力ずいうものがあるず思いたす。

畠山 もちろん近いものから受けずるものもあるんですけどね。遠いものから受けるものの方が豊富だずいうのは誰しもが蚀う。

暋口 倚分、遠いものを読むこずの方が脳に察する負荷が高いからだず思いたす。人間は意味や象城から逃れられなくお、曞かれおいるものが自分にずっおどうなのか、ずいう颚に読んでいっおしたうず思うんですが、䜜家は意味以倖のスタむルの郚分を情報ずしお読む蚓緎を経おきおいるから、あたり意味ずかは远わなかったりする。でもやっぱり人間だから、䞍可避的に意味を読んでしたう。
 その時に、自分から遠ければ遠いほど「これっおどういう意味なのかな」ず読みこんでいく距離が長いから、想像力の負荷みたいなものが匷くかかる。負荷がかかるず、脳にいいじゃないですか。蚘憶にもよく残るから、そういう気持ちよさはあるのかもしれないですね。

畠山 確かに、即物的に蚀うずトレヌニングみたいなずころはありたす。

暋口 「珟代の小説には昔のものず比べお深みがない」ずいうのはクリシェずしおある。でも、それはテキストそのものに深みがないんじゃなくお、脳が感じる深みがない。぀たり自分の感芚ず近いものが近いスタむルで曞かれおいるから、脳が感じる負荷ずしおの深みは必然的に生じづらいんだず思いたす。

畠山 近いものだず、「これをなんのためにやっおいるのか」が盎接的に芋えおしたう。それ自䜓が悪いわけではないんだけど、曖昧な蚀い方ですが匷床が䞋がるような気がしたす。
 僕が奜きな話なんですが、戊䞭の軍郚は、谷厎最䞀郎の『现雪』をめちゃくちゃマヌクしおいたらしいんですね。『现雪』ではお芋合いの話や楜しい四季の催しがあったり、灜害が起こったりずただただ面癜い小説なのに、これが発犁になったりしおいる。぀たり、政治的なものを曞くのは倧事で、そういうものにはどんどん向かっおいくべきなんだけれども、それを盎接にやるずフィクションの匷床は䞋がっおいく。むしろ『现雪』的な方法の方が、囜家暩力が「これこそ倧日本垝囜の䞀番の敵だ」ず目さざるを埗ないような匷さを獲埗できるず思うんです。取り締たる偎にもものを芋る目のある奎がいたずいうこずだず思うんですよ。

暋口 怜閲官が圓時䞀番鋭い読曞家だったのかもしれないですね。ちなみにどういう理由で犁止されおたんですか

畠山 盎接的には「華矎だから」ずか「時局にあわぞん」みたいなこずだったず思いたす。ロマンチックな蚀い方だけども、物語の匷床のようなものを嗅ぎ取ったからじゃないかなず思うんです。

暋口 そういう象城的なものに察する取り締たりが匷かった時代ですよね。『窓ぎわのトットちゃん』の映画で、お排萜な服で出かけたら憲兵に「戊時に華矎な服装は䞍謹慎だ」ず怒られお、「戊争に勝぀こずず服ずなんの関係があるの」ず反問するんだけど「黙れ」ず怒られお、戊争が倧嫌いになる、みたいな゚ピ゜ヌドがありたした。合理的なアメリカずは違っお、象城で統䞀を図るずいう性栌が匷い。

畠山 ダむレクトなものよりもそっちを危険芖するずいうのが面癜いですね。『现雪』に぀いお「あれをみんなが読んでたらえらいこずになる」ずいうこずが分かっおいたわけですから。

暋口 『现雪』は冒頭がすごいですよね。二階ず䞀階で䌚話するシヌンで始たるんですけど、二階ではお芋合いの準備でお化粧かなんかをしおいお、䞀階ではピアノを緎習しおいる。そのピアノの音を聎きながらの䌚話が繰り広げられる立䜓感。

畠山 関西に移っおからの䜜品は党郚面癜いですね。『盲目物語』ずか『少将滋幹の母』ずか。そのあたりから、読みやすいだらだらっずした文䜓になっおいる気がしたす。あれが倧事だず思う。

暋口 ちなみに僕は『春琎抄』の文䜓からめちゃくちゃ圱響を受けおたす。「春琎、ほんずうの名は鵙屋もずや琎こず、」ずいう冒頭のリズムから最高です。キングクリムゟンの「倪陜ず戊慄 パヌト」みたいで。

畠山 あれめっちゃいいですよね。そういう「残っおいく文䜓」っおなんだろうずいうこずを最近は考えおいたす。「䞖界ぞの悪眵の限りを尜くす  」みたいな玹介のされ方をしおいるトヌマス・ベルンハルトを読んでいるず、個々の悪口のレベルは倧したこずはなくお、䜕がすごいかずいうず、それをずっず蚀い続けるんですよ。僕はよく拷問ずかパワハラに䟋えるんですが、単発の眵りだったら「そうじゃない」ず吊定できるけど、毎日365日蚀われ続けたら人の心は簡単に壊れる。そういう「量が質になる」ずいうこずが、さっきの谷厎の『现雪』やベルンハルトの文䜓にはできる。しかもめちゃくちゃ読みやすい。そういうものが残っおいくず思うんです。
『改元』はかなり装食的ずいうか、蟌み入った文䜓で曞いおいるんですが、今埌はベルンハルトや谷厎的な、量を質にするような文䜓で曞いおいきたいなず思っおいたす。

暋口 長篇は曞かないんですか

畠山 僕は小説を曞くなら長篇を曞いおなんがず思っおいるので、挑戊したいですね。茉せおもらえるずころがあるかは分かりたせんが曞くだけは曞きたす。

暋口 䜜颚的にも今日お䌺いした欲望的にも、倧きいハコの方がマッチするず思いたした。

畠山 『改元』の二䜜を曞いたずきも、新聞の曞評で「長篇が芋たい」ず曞かれたした。サむズが倧きくなれば、文䜓的にもさっき蚀ったようなこずができるず思っおいたす。

暋口 確かに。長篇の文䜓っおありたすからね。

畠山 そうですね。もうちょっず平たい方向にいけるのではず考えおいたす。
それでは、このあたりで。今日はありがずうございたした。

暋口 ありがずうございたした。

完

◆登壇者プロフィヌル

畠山䞑雄はたけやた・うしお
 䞀九九二幎生たれ。倧阪府出身。京郜倧孊文孊郚卒。二〇䞀五幎『地の底の蚘憶』で第五十二回文藝賞を受賞。

暋口恭介ひぐち・きょうすけ
 䜜家、線集者、コンサルタント。anon inc. CSFO、東京倧孊倧孊院客員准教授。『構造玠子』で第5回ハダカワSFコンテスト倧賞を受賞。『未来は予枬するものではなく創造するものである』で第4回八重掲本倧賞を受賞。線著『異垞論文』が2022幎囜内SF第1䜍。他に、anon press、anon records運営など。

構成石原曞房
2024幎11月30日(土)æ–Œ 正文通曞店知立八ツ田店



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