読書感想文「ハリガネムシ」吉村萬壱
なんだろう…カミュと西村賢太先生の作風を足して2で割って、村上龍をエッセンスに加えたような謎の質感がある。
さらっと感想を書いていこう。
化けの皮
人間一皮剝けば醜悪で怠惰で性欲に塗れた本性が隠れてるよ。
という場面をとにかく繰り返し描写する。
しかもその皮が捲れるのは一瞬で、普通の感覚をしていた次の文章で欲情したり激昂したり、と思えば次の文章では直ぐに醒めてしまう。いきり立っては賢者タイムに陥るのがとにかく早い。
所詮行きつくところまで暴走しきれはしない理性を忠実に再現していて、むず痒くもあるが、非常にリアルな人間の感情の移り変わりを表していると思う。
物語としては「ハリガネムシ」も「岬行」も同じような題材ではある。
ハリガネムシの主人公は高校の倫理教師、岬行では30代のニートであるが、同じように売春婦という媒介と出会い、性欲を剝き出しにしつつも、現実的な目線に直ぐに戻ってきて、社会的な施工体験のようなものは何事も成せない。
小説内の内容としてハリガネムシの方がタイトルの一致感があり、物語としてもメリハリと特徴が際立つため、芥川賞をとるならハリガネムシの方だったのだろう。
登場人物の印象
主人公も危うい情緒の持ち主ではあるのだが、ハリガネムシの中に出てくるサチコもまぁまぁやばい奴である。昔からクスリはやっていて、子供を2人施設に預け、おそらく境界知能であろう。
主人公はその相手をまるで動物や虫でも扱うように接し、でも欲情し、そうするうちに自分の中にある動物的な本能を研ぎ澄ませていく。
ちっとも救いが無い話ではあるのだが、品行方正で生活の芯を持っている小市民として生きたいが、人間は所詮動物だからこんなもんさ。
人間は碌なもんじゃないから安心しなよ。
というメッセージさえ受け取れてしまう。
物語自体に何か安心感がある。そんな不思議なお話でした。
最後に
まぁ分類としてはエログロとカテゴライズされそうな作品ではあるものの、読み進めるのは苦ではなかった。
ちょっとドSと変態チックな世界観なので女性には全くおすすめできないものの、同作者の「臣女」も購入済みなのでいずれ読んでみようと思う。
次に読む本「ハリガネムシ」→「し」→「ジェノサイド」高野和明
