【社会背景】文学を読むなら、その国の社会について考えねばならない
戦後を代表する評論家、
吉田健一の『英国の文学』岩波文庫は
こんな冒頭から始まります。
「英国の文学が英国のものである以上、我々は先ずその文学を生じた英国と英国人について考えなければならない。」
なるほど。
そうでしょうね。
至極、もっともな話だ。
イギリスについて知識がなくても
イギリス文学は読めるはずだし、
おもしろく読めるはずですが、
知識がちょっとあると、
もう少し理解度が深まるにちがいない。
深い理解をなしたいなら、
その作品が書かれた時代の
イギリスの歴史や社会や風俗について
知識が必要でしょう。
19世紀にコナン・ドイルが書いた
シャーロックホームズはなぜ
あの時代に生まれ、読まれたのか?
時代は大産業化時代、
ロンドンなどの大都市が
さらに労働者を求め、巨大化し、
街には産業時代前にはなかった
新しいタイプの犯罪が増加した。
そんな社会を背景に
シャーロックホームズの
探偵小説がタイミングよく
読まれていったのです、、、
以前、そんな、出来すぎた
探偵小説の背景を知り、
なるほど〜と唸ったことがあります。
読まれるには、
社会背景などとの絶妙な
タイミングがあるらしい。
おっと、話が逸れ過ぎました。
イギリス文学を読むなら
イギリスの歴史や社会を
知って読んだ方がいい、
という吉田健一の話でしたね。
『嵐が丘』にせよ、
『高慢と偏見』にせよ、
『大いなる遺産』にせよ、
『月と6ペンス』にせよ、
それが中世に書かれたか、
近代に書かれたか、
現代に書かれたかは
知っておくほうがいいでしょう。
さて、ひるがえって。
日本語で書かれた本を読む時、
私たちはその作品が書かれた
日本の歴史や社会、風俗について
よく知り、よく理解しているかしら?
という疑問が湧いてきました。
たしかに、表面的には
よく知っている気がします。
でも、現代は細分化の時代。
作者がどんな「細胞」、
EXCEL風に言えばどんな「セル」にいて
どんな考え方を「常識」として
生きているか?
この多様化社会で、
十分に背景や底流を
知っているでしょうか?
知った気になっているだけ、
ということも
実はたくさんあるのではないかしら?
逆にまた、書く側が
どれくらい、読者の歴史や社会を
知った上で書いているでしょうか?
それもまた、はなはだ、疑問に
なってきました。
そうして、読者の背景や歴史を
よく熟知した書き手こそが
よく読まれる本を
書いていけている気がしますね。
村上春樹や東野圭吾らは
そのあたりを熟知してきたに
ちがいありません。
最近はどうも、怪しいですが。
やはり、
読者も、書き手も、
社会の背景をよく知り、
掴んでいる必要はありますね。
