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デイの倒産が過去最多、でも訪問介護は減っている。明暗を分けたのは単価じゃない

「介護の倒産が過去最多」というニュースを見て、自分のデイサービスも危ないのかと身構えた経営者は多いはずだ。だが数字を一段細かく見ると、話はむしろ逆を向く。

同じ2026年前半、デイの倒産は過去最多に増えた一方で、訪問介護の倒産はむしろ減った。これは介護全体の倒産ラッシュではなく、種別ごとの明暗反転だ。そして両者を分けたのは、基本報酬の単価ではなかった。

デイの倒産が過去最多、でも訪問介護は減った

東京商工リサーチ(TSR)の集計では、2026年1〜5月のデイサービス(通所介護)の倒産は27件。前年同期の16件から68.7%増え、これまでの上半期の最多だった25件(2024年・2025年)をすでに上回った。

ところが同じ期間、訪問介護の倒産は31件で、前年同期より18.4%減っている。減少は5年ぶりだ。

倒れたデイの顔ぶれもはっきりしている。

  • 9割超(27件中25件)が従業員10人未満の小規模事業所

  • 倒産原因は売上不振が18件、赤字の累積が5件で、業績不振が8割を超える

つまり「介護が一斉に沈んでいる」のではない。デイは沈み、訪問介護は浮いた。船が浮くか沈むかを決める喫水線、つまり固定費を吸収できる体力の上に残れたかどうかで、明暗が割れている。

なぜデイは沈み、訪問介護は浮いたのか

ここで多くの人がつまずく。2024年度の介護報酬改定(全体改定率プラス1.59%)では、訪問介護の基本報酬は引き下げられ、通所介護は引き上げられた。単価だけ見れば、デイのほうが有利だったはずだ。

それでもデイが沈んだのは、単価以外の力が効いたからだ。理由は二つあります。

  1. 訪問介護は処遇改善の追い風を受けた

    • TSRは、訪問介護の倒産減少をヘルパーの待遇改善・賃上げ支援の効果と説明している。人を確保できた事業所が踏みとどまった

  2. デイは固有の固定費から逃げられない

    • 送迎車のガソリン代、建物の光熱費、入浴設備の維持費。利用者が少し減っても、これらは下がらず、物価高がそのまま収支を削る

訪問介護に固定費がないわけではない。だが、建物と送迎という重い固定費を抱えるデイは、売上が落ちたときの逃げ場が少ない。倒産原因の最多が「売上不振」に集中したのは、その表れだ。

うちのデイは危険水域か——4つの分岐線

では、自分のデイはどの位置にいるのか。倒れた27件と厚生労働省の経営実態調査を重ねると、危険水域の輪郭が見えてくる。

危険水域に近いほど当てはまる分岐線は、次の4つです。

  1. 収支差率が1.5%以下

    • 通所介護の平均収支差率(令和4年度)は1.5%で、全サービス平均の2.4%を下回る薄利だ。ここが赤字に振れていると、物価高の一押しで戻せない

  2. 従業員が10人未満

    • 倒産の9割超がこの規模。少人数だと一人の退職や送迎車一台の故障が、そのまま運営を止めかねない

  3. 直近の落ち込みが「売上不振」型

    • 加算の取り損ねや一時要因ではなく、利用者数そのものが減っているなら、構造的な集客競争に巻き込まれている

  4. 固有の固定費を単独で吸収できない

    • 送迎・光熱・設備費を、ほかの拠点や事業と分け合えない単独運営は、固定費の逃げ場がない

ここで誤解しやすいのが「小規模だから赤字で潰れる」という読みだ。これは正確ではない。

同じ小規模でも、地域密着型通所介護の平均収支差率は3.6%で、通所介護の平均より高い黒字だ。分岐線は事業所の大きさそのものではなく、固定費を呑み込めるかどうかにある。

2027改定で基本報酬が上がれば、零細デイは救われるか

残る望みは2027年度の報酬改定だ。基本報酬が底上げされれば、薄利のデイも息を吹き返すのではないか。そう期待する声は強い。

だが、ここで一度立ち止まりたい。

MITSUKETA編集部の見立てはこうだ。2027年度改定で基本報酬を底上げしても、零細・単独デイの退出はそう簡単には止まらない。効くのは単価そのものではなく、固定費を吸収する体力と、賃上げの原資をどう配るかだ。

根拠は、いま起きている訪問介護とデイの対比そのものにある。単価の上下と生き死には、すでに一度ねじれている。

  • 訪問介護: 基本報酬を引き下げられても、処遇改善の原資が回って倒産は減った

  • 通所介護: 基本報酬を引き上げられても、倒産は増えた

この答え合わせは、2026年末から2027年初のTSR通年集計と、2027年度改定の底上げ幅・処遇改善加算の設計を見ればできる。底上げが入った後もデイの倒産が下がらなければ、単価論では救えないことがはっきりする。

待つべきは改定ではなく、喫水線の測定

整理すると、2026年前半の介護倒産は全体のラッシュではなく、デイと訪問介護の明暗反転だった。そしてデイの生死を分けたのは、報酬の単価ではなく、固有の固定費を吸収できる体力と賃上げの原資だ。

だから、いま経営者がすべきことは、改定の発表を待つことではない。自分の船の喫水線、つまり固定費に対してどれだけ売上の余力があるかを、先に測ることだ。

  • 直近の収支差率が1.5%を上回っているか

  • 利用者数の減少が一時的か、構造的か

  • 送迎・光熱の固定費を、ほかの拠点や事業と分け合えないか

この3つに自信を持って答えられないなら、危険水域は他人事ではない。

家族にとっては、どの規模・どんな収支のデイが続くのかが、預け先の安定に直結する。自治体にとっては、零細デイの退出が地域の通所基盤をどこまで細らせるかの問題になる。


参考リンク

持ち帰りは3点に絞れる。

  • 制度の骨格: 2026年前半の倒産はデイ増・訪問介護減の明暗反転で、介護全体のラッシュではない

  • 数値の意味: デイ倒産27件の9割超が10人未満。通所の平均収支差率1.5%は薄利だが、地域密着型は3.6%の黒字で「小規模イコール即赤字」ではない

  • 残った問い: 2027年度改定の基本報酬底上げが、単価では救えない退出を止められるか


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