「左翼=カッコいい」の教祖、スーザン・ソンタグが岩波文庫入り ド左翼やないかい!
はあ、スーザン・ソンタグが岩波文庫入りですか。
スーザン・ソンタグ『隠喩としての病/エイズとその隠喩』(岩波文庫)の見本が届きました! 僕の名前も(解説=都甲幸治)と、表紙に入れていただいております。ご興味があれば。
スーザン・ソンタグ『隠喩としての病/エイズとその隠喩』(岩波文庫)の見本が届きました! 僕の名前も(解説=都甲幸治)と、表紙に入れていただいております。ご興味があれば。 pic.twitter.com/igprkEdnKR
— 都甲幸治 (@koji_toko) December 8, 2025
その前日には、岩波書店はチョムスキーの誕生日を祝っていた。
今日はアメリカの言語学者 #ノーム・チョムスキー 97歳の誕生日。生成文法理論の提唱者であり、ことばの創造的側面・普遍的特質・習得の生得性を主張。ことばの研究を通して人間の精神構造の解明に貢献しました。また、反戦平和運動への積極的な関わりでも知られています。☞ https://t.co/akwqBbwHvI pic.twitter.com/ieTj2ksVDm
— 岩波書店 (@Iwanamishoten) December 7, 2025
ド左翼やないかい!
と、とりあえず言っておこう。
岩波書店や岩波文庫が「中立」のような幻想がまだあるようなので。
ド左翼ですから。
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いまスーザン・ソンタグの日本語Wikiを見ると、
「生涯を通じ、アメリカを代表するリベラル派の知識人として、ベトナム戦争やイラク戦争に反対するなど、人権問題についての活発な著述と発言でオピニオンリーダーとして注目を浴びた。」
みたいなキレイゴトしか書いてなくて、改めて驚くけどね。
左翼団体を「市民団体」と書くような偽善・欺瞞が、ここにもある。
英語版のwikiでは、もちろん「リベラル派」なんて、書いていない。
彼女は「左翼 Left」だし、しかも左翼から批判された左翼でもありました。
英語版Wikiには、著名なジャーナリストのトム・ウルフの辛辣な評言も載っています。
「彼女は、抗議集会と見れば顔を出し、深刻ぶった文体で高いところから演説をして、パルチザンレビュー誌の権威で障害者用駐車スペースを確保した人生を送った、ただのライターにすぎない」
(She is) just another scribbler who spent her life signing up for protest meetings and lumbering to the podium encumbered by her prose style, which had a handicapped parking sticker valid at Partisan Review.
まあ、東京新聞の名刺で左翼活動をする望月イソ子を連想しますな。
スーザン・ソンタグは、トム・ウルフのいう「ラディカル・シック radical chic」つまり「カッコいい左翼エリート」の典型であり、そのスタイルを作った一人でした。
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スーザン・ソンタグは、60年代ラディカルの理論家の代表です。
おフランス流のラディカリズムを、アメリカで流行らせました。
ハーヴァードやオックスフォード、そしてソルボンヌで学んだ、というブランド価値にくわえて、若い女性という完璧な魅力を備え、60年代のニューヨークに登場した左翼インテリ、キラキラした左翼アイドルでした。
完全に過去の人というわけではない。
日本の全共闘世代以降の新左翼にも、大きな影響を与えた。そして、その世代の人は、過激派老人としてまだギリギリ生きてるから、今日的にも重要だと思う。
彼女の影響を受けた人は、マスコミにも多かったし、そういう人たちが、まだマスコミに影響力を持っている。
だから、ソンタグが読まれたり、議論されたりするのは結構なことです。
でも、ソンタグへの批判が、いななお多いことも伝えておかないといけない。
岩波文庫に入ったから、もはや揺るぎない「権威」になったように思われると、困るんですね。
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ソンタグの重要さは、思想的中身というより、まさに「スタイル」なんですね。
左翼=かっこいい、みたいな。そういう「スタイル」を広めた人。
思想的な中身はないんだけど、ブランディングがうまかったというか。
左翼の泥臭さとか、生真面目さとかを、払拭してみせた人、と言えるかもしれない。
左翼の新しい、垢抜けた趣味を作った。
そういう意味では、のちの日本の「ニューアカ」にもつながっている。
でも、いまソンタグの影響力や重要性を説明するのは、なかなか難しい。あんまり中身がないだけに。
たとえば、一昨年のクリスマス、バイデン政権のホワイトハウスにドラッグクイーンが登場して、物議をかもしたりしたじゃないですか。
まあ、LGBT礼賛、プライド、レインボー礼賛の流れで。

ああいうのも、もとをたどれば、スーザン・ソンタグと言えなくもない。有名な「キャンピー」についてのエッセーね(1964年の彼女の出世作)。
キャンピーというのは、オカマの文化、過剰に、わざとらしく、派手だったりするやつのことだけど。ソンタグは、そういうオカマの文化を、持ち上げてみせた。
だから、マツコ・デラックスみたいなのが普通に日本のTVに出てるのも、スーザン・ソンタグのおかげかもしれない。
他にも彼女は、ポルノの「批評性」を論じたりする。
スーザン・ソンタグの本の成功について、こんなふうに言った人がいる。
「下品な趣味を、上流の人が褒めると、大成功するものだ」
Nothing succeeds better than highbrow endorsement of lowbrow taste.
保守派の批評家、ロジャー・キンボールは、以下のように述べています。
彼女の素晴らしいトリックは、単に低俗な趣味を支持することだけではなく、真に洗練された人々にとっては、あらゆる知的、芸術的、道徳的価値の区別は、取るに足らない、必須ではない、なくてもいいものだという幻想を作り出すことだった。
Her great trick was not merely to endorse lowbrow taste, but to create the illusion that for the truly sophisticated all intellectual, artistic, and moral distinctions of merit were infra dig, dispensable, de trop.
(Roger Kimball, The Long March, 2001, p89)
保守派から見れば、彼女は道徳や美学の破壊者、撹乱者でした。
全体として、インテリが社会に道徳的・美学的混乱をもたらすことは、資本主義への抗議であり、正義にかなうという考えを実践した人でした。
彼女は、共産主義批判みたいなこともふくめて、いろんなことを言った。
一貫性のある思想家ではなく、その都度、歯切れのよい文体で、カッコいいことを言う。自分の言説に責任を取らない、という意味での、悪い意味での「批評家」でもありました。
あんまり持ち上げすぎないようにお願いします。
<参考>
