【練馬区長選挙】区立美術館改築問題は何が争点なのか
#練馬区長選挙 が告示されて、選挙期間も折り返し。投票日は4/12(日)、期日前投票も行われているのでぜひ練馬区の皆さんは投票に行きましょう!
今日はその争点となっている練馬区立美術館の改築について調べた内容をまとめてみます。投票の参考にしてください。
76億円から150億円超へ
練馬区立美術館の改築計画が、区長選の争点として注目を集めている発端は、当初約76億円とされていた工事費が、実施設計段階で150億円を超える水準にまで膨らんだことです。
倍増とも言えるインパクトのある数字。なにがあったのでしょうか。
練馬区は2023年の段階で、改築費用を約76億円と説明していました。ところが、2026年の実施設計・コンストラクション・マネジメント(CM)業務(*1)の結果では、建設費は約150〜160億円と見積もりが大幅に上方修正されたとうい経緯です。
コンストラクション・マネジメント(CM:Construction Management)とは、建設プロジェクトにおいて「発注者の立場」に立った専門家(コンストラクション・マネージャー)が、プロジェクト全体または一部をマネジメントする考え方・手法を指すのだそうです。
この場合、専門家は自ら設計や施工を請け負うのではなく、企画・設計・工事の各段階において、コストや品質、スケジュール等を横断的に管理し、発注者が最適な利益を得られるよう支援することが目的です。
建築の専門家によって精緻に見積もった結果、概算を大きく超える計画に見直さざるを得なくなったと言う事ですね。
注意すべきは、76億と150億の両方が完全に同条件の数字ではない点です。
初期の76億円はあくまで基本設計段階の概算であり、緑地整備や一部の付帯費用が含まれていませんでした。一方、150億円超は実施設計後の精査された数値であり、さらに仮設費などを加味すると上振れ余地もあるものとなっています。
つまり、「倍になった」という印象は間違いではないが、厳密には設計段階の違いによる増加も含まれているということです。とはいえ、最終的に区民が負担する規模感としては、当初説明より大幅に拡大していることは否定できません。
参考:
練馬区立美術館・貫井図書館改築等実施設計業務および コンストラクション・マネジメント業務の結果について
なぜここまで増えたのか
費用増の背景には、近年の建設業界の構造的な変化があるようです。
まず、資材価格の高騰と人件費の上昇。加えて、建設業の働き方改革により、工期設定にも余裕が求められるようになったことも影響しています。
これにより、単純な単価上昇だけでなく、全体工程の長期化がコスト増を招いているというのが昨今の建築業界のようです。
さらに重要なのは、事業者側の受注姿勢です。
大手ゼネコンは採算性や施工難易度の観点から案件を選別しており、美術館のような専門性が高く利益率が読みづらい案件は敬遠されやすいとされるのだそうです。
結果として、行政が発注(入札に出)しても受け手がいない、工事をやってくれる会社が見つからないかもしれない可能性が指摘され、実際に練馬区は一度、解体工事の見送りを決定している経緯もあります。
ここで問題は、「高い」だけではなく、そもそも案件として成立するのかというリスクにまで論点が広がっていることです。
工期の問題と現実的な制約
工期についても大きな変化が見られました。
最新の想定では、解体約12か月、本体工事約39か月とされており、全体として長期化が避けられない見通しです。労働力不足や気候条件など、外部要因による不可避な要因があるためこの期間になったようです。
3年くらいずっと工事していることになりますね。
その間も人件費等はかかってきますし、美術品の管理コストもあるはずです。勿論その間、美術館は収益を得られません。
そうなると、もはや現実の制約の中で案件が成立するかという段階へ移行していると言えると思います。
改築か、改修か
もう一つの重要な論点は、「そもそも改築が必要なのか」。
改修で存続することはできないのでしょうか。
現在の美術館は築40年を超えていますが、直ちに使用不能というわけではない。実際、工事見送り後も運用は継続されています。
区のこれまでの検討では、単なる老朽化対応にとどまらない課題が複数指摘されています。
例えば、現在の美術館は収蔵スペースが不足しており、作品の適切な保存環境(温湿度管理など)にも制約があるとされています。
また、大規模な企画展に対応できる展示空間や動線が十分ではなく、来館者サービスや回遊性の面でも改善余地があるそうです。
さらに、バリアフリー対応についても、既存建物の構造上、段差解消などには限界があり、全面的に対応するとなると大規模な改変が必要。加えて、図書館機能との一体整備による複合施設化を検討しており、単体の改修では実現が難しいと整理されています。
こうした点から区は、部分的な修繕や設備更新では課題の根本的な解決には至らず、結果的に機能制約を残したままコストを投じることになるとして、「改修ではなく改築が必要」と判断してきた経緯があります。
ここで問われているのは、単なる老朽化対応ではなく、「将来にどのレベルの文化施設を持つべきか」という政策判断でもあると思います。
改築反対派の主張は、大きくコストに焦点が当たっているようですが、もし改築を否定するのであれば、現実的に「どの機能を削り、どの水準で満足するのか」という具体的な代替案が求められます。
この部分は、まだ十分に議論が深まっているのか、調べていて疑問な点でした。
練馬区長選挙は3人の候補者が出馬。
そのなかで、
・尾島こうへい候補は改築の推進、
・吉田健一候補は明確に「150 億円以上の練馬区立美術館の改築計画は中止」を政策に掲げています。
練馬区の財政状況と未来
練馬区の財政状況を考えると、かなり現在まで潤ってきたようです。財政調整基金(自由に使える区の貯金)は、令和7年度で約562億円。その他の基金を合わせると1200億円以上あるようで、財政規模からすれば十分です。
しかし、この先5年後、10年後には必ずしもそうではなく、東京都でも人口減少が加速していき、併せて高齢化率も高まります。
2040年には区の歳出の7割が社会保障費となり、その金額は年々上がっていきます。ふるさと納税は年間51億円が地方へ流出するなど、潤沢にあった基金の取り崩しも発生していくと予想されます。
とは言え、このまま時間が過ぎていくと建築費用は将来的にも上昇していくと考えられますので、美術館という文化を守るためには早めに手を打つことも一つ手ではあると思います。
私としては、改築・改修ではなく何か第三の案がないのかなというところです。皆さんはどう思われますか?
この一点での判断というのは難しく、他の政策と合わせて、この点を判断した方が良いのではないかとも思います。全体を通した候補者の比較に関して、詳しくは青柳みつやさん動画で解説されています。
中立で分かりやすい語り口になっていますので、練馬区民の皆さまはぜひ投票先の参考として頂ければと思います。
また、確実なのは各候補の一次情報です。
演説動画や、直接本人の街頭演説に足を運ぶことをお勧めしたいと思います。
4/8(木)20:30からは、討論会もYouTubeで配信されるようです。内容ももちろんの事、候補者の議論する力や、各政策テーマの問いにどのように答えるのか、その思考の瞬発力など能力的なところで「練馬区長」として相応しい人物であるかを確認できる良い機会だと思っています。
練馬区の今後4年の命運を握るこの選挙、
ぜひ職場やご家族などで口コミで広めて投票率を上げ、区民全体でリーダーを選んでほしいと願っています。
追記:来館者数の比較
練馬区の公表資料によると、近年の来館者数は年間約7〜8万人規模で推移しています。コロナ前には10万人前後の年もありましたが、現在は回復途上という状況です。
一見すると、この数字は決して少なくありません。全国の公立美術館の中には年間3万人未満の施設も多く、練馬区立美術館はその中では中規模に位置づけられます。
一方で、この数字を練馬区の人口約74万人と比較すると、単純計算では来館者数は人口の約1割に相当します。しかし、この中には同じ人が複数回来館するケースや、区外からの来訪者も含まれています。そうした点を踏まえると、実際に利用している区民の割合はさらに低くなると考えられます。
インバウンドの利用客数は情報が見つかりませんでした。この施設は、「広く区民全体が日常的に利用するインフラ」というよりも、特定の関心層に支えられた文化施設としての性格が強いのではないかと思われます。
例えば板橋区立美術館も同程度の来館者数であり、人口比で見てもほぼ同水準です。
改築等によって、何か別の存在意義を生み出せたなら活路はあるのかもしれません。
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