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日本アパッチ族/小松左京(ネタバレしない)

これまで「日本沈没」しか読んだことがなかったのだが、フラっと読んだが、いろいろな意味でとんでもない。
徹頭徹尾「人間」が描かれているように感じる。

あらすじやらなんやらには触れないとして、「そんなことあるかよ!」と言うことがバンバンと軽快に起こっていく。会話は大阪弁であり、冒頭からいきなり世界観がバーンと伝わるような描写ではじまる。
読み始めはなんとなく焦げた玉ねぎの色のような町並みを想起させ、悪い冗談のようである。
そうかと思えば無機物を食べてエネルギーを得たり、肉体改造したり、その身体でいかに受胎するかについて、「よくそんな事を思いつくな・・・」みたいなそれっぽい説明が加えられている。すごく、科学者っぽい理屈の捏ね方である。

受胎のメカニズムは、男性精液が強塩基性で、中にコロイド状のフェロ =ニッケル系の塩類が含まれており、女性側が強酸を分泌してこの塩を還元することによって受精する。畢竟するに、男女間の関係などというものは、ごく簡単な化学式で表わされるにすぎないものである。

日本アパッチ族/小松左京 Kindle版P91

特設サイトを見ると、こういうのもちゃんと化学式を書いて検討しているようで、とんでもないんだけどなんとなく納得させられてしまう。

そういう、バカとトンデモの塊かと思いきや、時折非常にズシッとくる描写が挟まれる。科学者のような冷静な視点で世の中を観察し、文学的に描写しているようにも見えて、好き。

ずっとなにもん考えずに読めるのかと思いきやどんどんと人間の汚さ、政治や資本主義の闇みたいなものに正論をぶちかましてきたりする。

「七年半前、私たち、普通の日本人だった。だけど、あなたたち、私たちのこと、アパッチと呼んだ。そう呼ぶのは、私たちにそうレッテルはりたかったからだ。私たち、あなたたちがそうあってほしいと思うようになった。

日本アパッチ族/小松左京 Kindle版P224

主人公サイドは徹頭徹尾、下品なように見えながらも知的である。
差別や迫害に、知恵(を使った暴力)で徹底的に抗おうとする
ある種「持たぬ者の自覚」みたいなものを備えているからこそ、持つ者の傲慢さや慢心を鼻で笑う。

そして最終的に、人類の愚かさ・傲慢さみたいなものを指摘しながら、結局は戦争、差別、迫害みたいなものを批判する
はじめはふざけてるのか?と思わせておきながら、最終的に非常に重たいメッセージを発するので、謝ってしまいそうになる。

進化といい、高等といい、いかなる基準をもってあらわされるかが問題である。その時代を全面的に支配する生物が、かならずしも、もっともすぐれ、もっとも高等な生物であるとは言い得ないことは、われわれのよく知るところである。

日本アパッチ族/小松左京 Kindle版P336

おまけにこれが、一部史実を基に書かれているらしいので、さらにびっくりする。

これを、高校生くらいの時に読んだら「ウケるwww」とか言いながら読めたのかも知れないが、今読むととにかく人間の暴力性みたいなものについて考えてしまう。

それくらい私が大人になったということか、それとも世の中がおかしくなっているのか、わからないけれど。


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