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構造が限界をこえた先に見えるもの① - 複製から声は聞こえるのか VRシスティーナ礼拝堂

数あるnoteの中からおいでいただきありがとうございます。

今回はミケランジェロ
「システィーナ礼拝堂」VR作品と
尾形光琳
「杜若図屏風」の
共通点について
まとめてみたいと思います。

一見、まったく別の国、
別の時代に生まれた作品のようですが、
こちらの二つの絵は
どのような声をもっているのでしょうか。


連載(3本立て)

今回は長くなりそうなので
初めから3本立てにさせていただきました。

1,複製から声はきこえるのか-印刷博物館
本物にしかアウラは宿らないのか。
印刷博物館で拝見したVR作品
「システィーナ礼拝堂」について

2,尾形光琳《杜若図屏風》はなぜ膨張するのか

3,ミケランジェロと光琳
― 完璧な構造が生命を抑えきれなくなる時 ―

一見
まったく関係がなさそうな三本ですが
読み終わる頃には
一本の線でつながるように
書いてみたいと思います。

鑑賞レポートは
すでにそれぞれアップさせていただいております。

システィーナ礼拝堂VR@
印刷博物館

杜若図屏風@
根津美術館

こちらも併せて
お読みいただけましたら嬉しいです。

複製画から声は聞こえるのか?


こちらの
「絵の声を聞くアート鑑賞」は
今まで絵から聞こえる声を
取り扱ってきました。

若冲の絵からは
(割と本当に)
声のようなものが
聞こえてくるのですが、

それ以外のほとんどの場合
声というよりは
絵から受け取る
不思議な現象や異変や感覚
というものをそのまま書いてきました。

そのほとんどが、肉筆画です。
複製や印刷ではなく
一点モノの絵、ということになります。

ずっと自分自身
非常に興味があり
不思議に思ってきたことがあります。
「本物からしか、
特別な現象は受け取れないのか?」

複製の種類

複製にもさまざまな種類があります。

  • 版画

  • 画集(印刷)

  • 模写

  • デジタル

さらに細分化させるときりがないのですが。
(ちなみに複製に贋作は
入れませんでした。
複製とはまた違った意味になり
別途違う件となると
考えたからです。)

このうちのどれが
声を
「受け取れて」
どれが
「受け取れないのか」。

この唯一の作品のもつ力
パワーのようなものを
過去の偉人は
すでに説いています


「アウラ」で考えてみる

アウラについて
簡単にまとめておこうと思います。

アウラとは

アウラ(Aura)は、主に哲学者ヴァルター・ベンヤミンが提唱した、芸術作品や自然の風景が持つ「いま、ここ」にある唯一無二の雰囲気や存在感を指す概念です。複製技術(写真や映画)によって失われる「時空を共有する一回性の体験」の権威を意味し、オーラとも呼ばれる独特の気配や、ラテン語では微風・香りも意味します。

AIによる要約 AIによる出典元表示:https://artscape.jp/artword/5470/

ヴァルター・ベンヤミンは
複製技術によって、
作品が持っていた
「唯一そこに存在することの力」
が失われる、と説いています。
それは

  • 唯一性

  • 距離感

  • 時間性

  • 神聖さ

のようなもので、たとえば

  • 本物の宗教画の前で感じる圧

  • 本物の仏像の気配

  • 絵肌の物質感

  • 時間の蓄積

みたいなもの、でしょうか。
私はこれを
スピリチュアルやオカルトとは
少し違うものとして捉えています。

ベンヤミンは
「芸術には元々
儀式や宗教との結びつきがあった」
と考えていたようです。
つまり、芸術はもともと、

  • 教会

  • 儀礼

  • 呪術

  • 祈り

と深く結びついていて、
芸術は
「近代以前の神秘性への感覚」
が強いものだったということ。

私が絵に感じることや
受け取る現象と併せてひも解くに

ベンヤミンは
「人間がある対象に対して“そう感じてしまう構造”」
そのものを解こうとしていたのだと
私は感じています。


VR作品 システィーナ礼拝堂

ベンヤミンは
「"その力"は、複製には宿らない」と
説いていますが。

実際VR作品はどうでしょうか。

私は今まで
複製否定派。
特に、デジタル否定派でした。
ベンヤミンと同じく
「本物だけが持つ、特別なパワー」は
宿らない、と考えてきました。

「VRシスティーな礼拝堂が想像以上だった」
にも書いていますが、
想像以上に良かった。

ミケランジェロの声

結果からいうと
VRシスティーナでは
ミケランジェロの声は聞こえません。

ミケランジェロは大好きな彫刻家です。
話せるなら、話したい。
彼に少しでも近づきたい
声を聞きたい。

でも残念ながら
アウラでいうところの
「ミケランジェロは
複製やデジタルには
宿らない」のかもしれません。

ただ
質の高い複製には
本物とは別の「何か」が
立ち上がってくる。

構造がたちあがる

印刷博物館の
VRシスティーナ作品は
純度の高い状態で届けられるように
非常に真摯に向き合い
撮影・編集・上映している作品です。

上質なデジタルは
・筆致を極端に拡大して見られること
・俯瞰とズームを自由に行き来できること
・周囲のノイズを切り離した集中空間を作れること

など、本来の鑑賞とは
別の部分が優れている場合があります。

また、
絵の構造 という変わらない部分。
アウラがない分
客観的な視点で
ミケランジェロの絵に近づくことができ
構造をよく見ることができます。

若冲さんの場合も
複製の方が
若冲さんが話しかけてくることがない分
本来の絵の技術や構造を
鑑賞できるかもしれませんね・・・
(どうだろう?今度試してみます)


ミケランジェロの構造は、抑えきれず動き出す

ミケランジェロの
立ち上がってくる構造とは
私はおもに人体の描き方について
受け取ることができました

アダムの創造。

アダムの創造
ウィキペディアより(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:God2-Sistine_Chapel.png)

左のアダムは
まだ魂を与えられる前の
状態と言われています。
力なく垂れる左手。

対して右の神は
力強い指を感じます。

体そのものもそのまま
アダムの体は力無く
そしてねじれ
神は力強い体幹が現れています


下記は
最後の審判
です。

最後の審判
ウィキペディアより(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Last_Judgement_(Michelangelo).jpg)

やはり中心にいるキリストは
神として力強く。
下(地獄)にいくほど
人体は
苦悩に悶えるように捻れ
また、抗えない力に
引っ張られたように捻れています。

ウィキペディア システィーナ礼拝堂 より一部トリミング
左の二人、右の二人、ねじれる人体。
(真ん中の蛇の話ではないです)
誘惑にほだされ、楽園から追放される人間。
そんな人間そのもののもつ苦悩や弱さが
体の「ねじれ」で表現されていると考えます。

ミケランジェロの描く人体は
体の構造そのものが
巨大な力に引きずられる。
そしてミケランジェロの人体は
静止しない

引っ張られ、
捻れ、
伸ばされ、
抗い、
耐えています。

最後の審判 より一部トリミング
引っ張られ、ねじれ、伸ばされ、抗う人体

ミケランジェロの人体は
完璧な構造と肉体美を持ちながら
その内部に収まりきらない力を
抱え込んでいます。

完璧がゆえに力を
絵の中に抑えきれなくなる。

だから人物たちは静止せず
引き裂かれ
伸ばされ
捻れ続ける。
その限界状態そのものが
システィーナ礼拝堂全体を
巨大な運動へ
変えているように感じられるのです

VRデジタルでも感じられること


VRでは、いわゆる「アウラ」は
感じられませんでした。

アウラがつかめないことで
逆に
ミケランジェロの
「構造が限界を迎える人体」が
浮き彫りになりました。

ミケランジェロのゆるぎない
「構造の強さ」は
VRでも失われることなく
受け取ることができたのです。

では、
極限まで強い構造の中では、
他にどんなことが起こるのか。

続きの二本目では
尾形光琳の
杜若図屏風(今度は本物)
の構造限界に迫ってみたいと思います。


質問、聞きたいこと、ご感想等、
お気軽にコメントを書いていただけるとうれしいです。




記事をまとめてみました。
ご興味のある記事がありましたらぜひお読みください!

はじめに01 -絵の声を聴く、アート鑑賞について- 好きな画家さん一覧
https://note.com/killamaru/n/n0cb504116a87
書き始めた経緯やこのNoteの説明など

はじめに02 -アートの声を聴く鑑賞について-
https://note.com/killamaru/n/n3b42879699f8
「はじめに」の続きですが、私のNoteの中では、♡率が高くて、ありがたいです。

はじめに03 -審美眼は何年で身につくもの?
https://note.com/killamaru/n/ne9792bc439fe

<ドイツ旅2026>
ドイツから戻ってきました -2026.01.13 近況報告-
https://note.com/killamaru/n/nce677f79afbc

デューラーと話したくて家に2回おしかけた話 - デューラーズハウス -
https://note.com/killamaru/n/n681100d72660

フェルメール報告会 - ドイツ旅で鑑賞した絵のレポート -
https://note.com/killamaru/n/n9509726b7b11

フェルメールに隠された法則 - 嫌いだったフェルメールが好きになれた秘密 - [ディープ]
https://note.com/killamaru/n/nab3fbbd02386

<若冲>
若冲からはじめて呼ばれた話 -泉屋博古館東京-
https://note.com/killamaru/n/n79a61287feed

若冲は、今日も私を呼ぶかしら - 三井記念美術館「円山応挙」展 -
https://note.com/killamaru/n/na07051e46676

若冲は、もう1人の天才にためらう、の話 - 東京藝大美術館 -相国寺展
https://note.com/killamaru/n/n85b940e93ef9

<ゴッホ>
[ディープ]ゴッホのひまわりって、おいしいの? - 西洋美術館 ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
https://note.com/killamaru/n/n69330619f156

「あなたはどんな鑑賞タイプ?」と「ゴッホの死相」について ゴッホ展 -東京都美術館-
https://note.com/killamaru/n/na3e315c32ca0

ゴッホ美術館(アムステルダム)に行ってきた -美術館レビュー(絵多め)-
https://note.com/killamaru/n/n4e65dea66a63

おいしそうな絵はここにも(ピエール・ボナール) -「ひまわり」異変の後日談-
https://note.com/killamaru/n/n32920ae6c2de

<美術展>
ブラックホールを作りだせる画家 -仙厓展@出光美術館- [ディープ]
https://note.com/killamaru/n/n576fe4a903b7

絵から音がしない理由 -ユトリロ展(SOMPO美術館)-
https://note.com/killamaru/n/nd086f4b57077

定家にきゅんきゅん -国宝熊野御幸記と藤原定家展レポート(三井記念美術館)-
https://note.com/killamaru/n/ne15a8591b9e4

伊勢物語展 -根津美術館- 岩佐又兵衛に感じるもの
https://note.com/killamaru/n/n522358cdf891

僧侶の背中には、実は何があったのか -特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」-
https://note.com/killamaru/n/nb87fb034c08e

マチュピチュの展示じゃない?!けど、興味深い -マチュピチュ展-
https://note.com/killamaru/n/n5dd9d6de4666



<岡本太郎とウォーホル>
岡本太郎の絵をめくってバックヤードをのぞいた話[ディープ] - ウォーホルの続き -
https://note.com/killamaru/n/ndd21dc5e0255

アンディ・ウォーホル「SERIAL PORTRAITS」展(ルイヴィトン) - 岡本太郎のために力をお借りします -
https://note.com/killamaru/n/ndd1a969b04ba

<ランキング>
[異変の起こった美術展ランキング]2025年行った美術展の中から)
https://note.com/killamaru/n/n853c88ce272c



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