ミシェル・フランコ『ドリームズ』アメリカとメキシコ、独占欲を巡る恋
2025年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。ミシェル・フランコ長編九作目。同じコンペにはダーグ・ヨハン・ハウゲルードの『Dreams』という作品も選出されたことで、こちらが副題を付けて差別化するという不思議な事態になっていた。アメリカとメキシコの国境に放置されたコンテナトラック。夜になって"助けて!"という叫び声と共にトラックが揺れ始める。すると、彼らの越境を手引したであろう人々が扉を開け、出てきたヨロヨロの不法移民たちから有り金を巻き上げようとする。そんな地獄絵図を、まるで誰からも見えていないかのようにすり抜けた青年は、いきなり何かを目指すように歩き始め、サンフランシスコの高級住宅街のとある家に辿り着く。家主の女は侵入した彼を発見するが、そのままセックスし始める。一体何が起こっているのか?という序盤の神秘的な雰囲気は最後まで超えられなかったが、実にフランコらしい変な映画だった。越境した男の名前はフェルナンド、家主の女はジェニファーと言い、金持ち娘である彼女がメキシコに設立したバレエ劇団に来た新進気鋭の若手ダンサーで愛人がフェルナンドという関係だった。物語は独占欲をテーマとしているようで、互いに追われると逃げ追われなくなると追い始めるという面倒な関係を描いている。いきなり別荘に二人で行ったかと思えば、ジェニファーが知り合いを見つけて帰ろうと言い出すと、フェルナンドも愛想を尽かしたかのようにメッセージだけを残して去り、ジェニファーはメキシコシティの別邸で彼を待つが来ず、アメリカに戻って仕事に復帰するとサンフランシスコの劇場入口で踊っているのを発見し…というような追いかけっこをずっとしているのだ。金持ちアメリカ人女と若いメキシコ人男という絶妙なパワーバランスは常に危うく変化し続け、どちらもが優位を取ろうとする不健康な関係性は暴力的なラストへと転がり込む(後述)。この関係性は、実際の国家の関係性をも表象しうるのかもしれない。フェルナンドを演じているのはイザック・ヘルナンデスは実際にバレエダンサーということで、素人目にもバレエのシーンは本当に実力があるように見えるのだが、そこまで実力があるのなら別にジェニファーの愛人業に拘らなくても良いのではと思わせてしまうのが難点。普通にメキシコで注目されて渡米するでも渡欧するでも可能性があるだろう。そういったところに設定臭さが滲み出てしまうのもフランコの弱みか。
以下、結末のネタバレを含む
お互いの独占欲が行き着く先は…というラストはちと凡庸というか、想定の範囲内というところで、ミシェル・フランコの変な真面目さが悪い意味で際立ってしまったように思える。フェルナンドをあの状態にしても尚、独占したいと思えるという狂気まで持ち込んでほしかったけど、色々バックストーリーを用意してしまったせいで、なんだか不完全燃焼気味に終わってしまった。
・作品データ
原題:Dreams
上映時間:95分
監督:Michel Franco
製作:2025年
・評価:70点
・ベルリン映画祭2025 その他の作品
★コンペティション部門選出作品
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