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【朗読】大下宇陀児『偽悪病患者』5/5 (最終回)

ほぼ週一で青空文庫作品の朗読をしています。
今回は大下宇陀児うだる『偽悪病患者』、最終回の朗読です。


【登場人物】

兄: 喬子きょうこの兄。リウマチスで療養中。妹を心配し過ぎると、妹夫婦に被害妄想狂と言われる
漆戸うるしど喬子きょうこ: 妹。美貌の佐治佐助に興味を持ち始めていると兄に告白
漆戸: 喬子の夫であり、喬子の兄とは同級生だった。療養中で回復傾向にあったが射殺された
佐治さじ佐助: 喬子の兄と夫とは同級生だった美貌の男。様々な悪事を案出し悪ぶるクセがあり、兄は偽悪病患者と呼ぶ
最賀さいが: 無口でブッキラ棒な漆戸の事業上のパートナー。前年に奥さんを亡くした
お竹: 一か月ほど前に東京に出て来たばかりの新人女中


【これまでの『偽悪病患者』】

近頃、兄と夫の同期生だった美貌の男、佐治佐助が喬子の夫を訪ねに来ていた。
学生時代の佐治は様々な悪事を案出したが、実際に行動に移したことはないため、兄は佐治を偽悪病患者と呼ぶ。
佐治は「いつか最高の悪事を働きたい」と発言をしていたことから、兄は喬子に接近しないように言うが、喬子は既に佐治に対して興味を持っていることを自白。
そんな自分を監視するため、喬子は夫の事業パートナーである最賀に同居を依頼。
しばらく喬子からの手紙が途絶えていたが、夫が他界したこと、そのときの様子が綴られた手紙が届き。。


【CM】

BGM: PeriTune (ペリチューン)
https://peritune.com/

効果音: 効果音工房
https://umipla.com/


【朗読】

stand.fm

YouTube (字幕付き)


【語彙】

毫末ごうまつ: 毛や筆の先。転じて、極めて小さいもの・こと
畢竟ひっきょう: つまるところ、要するに
窓框まどがまち: 窓枠
憫然びんぜん: 可哀そう、気の毒
匕首あいくち: つばのない短刀のこと。元々は柄と鞘の口がぴったり合うことから「合口あいくち」だったが、中国語の「匕首ひしゅ」(日本語の合口とは用法や形状が微妙に異なる)も同様の読み方をするようになった
旬日じゅんじつ: 10日間、又は約10日間。上旬、中旬、下旬はここから来ている


【解説】

〇 スタンダールの『赤と黒』: 

フランスの小説家、評論家であるスタンダール(本名はMarie Henri Beyle / 1783-1842)による、実際に起きた事件を題材にした長編小説。

〈『赤と黒』あらすじ〉
貧しいけれど美しく聡明な青年ジュリアンは、その才気を買われ町長の子供たちの家庭教師になるも奥さんと泥沼不倫。
神学校に逃げた後、その才気から大貴族ラ・モール侯爵の秘書として働くことに。
すると侯爵令嬢と激しい恋に落ち、令嬢は妊娠。
侯爵はかつてジュリアンが働いていたレーナル家(『偽悪病患者』ではレナールの表記)に身元確認をすると、「ジュリアンは良家の妻や娘を誘惑して出世の踏み台にしている」という返事がきて侯爵マジおこ。
侯爵令嬢との結婚が取りやめになったことで逆ギレしたジュリアンは、レーナル夫人殺害を目論むも失敗して死刑宣告を受ける。
侯爵令嬢もレーナル夫人も未だ彼を愛していることを知り、ジュリアンは刑を受け入れる。


〇 喬子による事件当日までのこと

・喬子は佐治に興味を持ち始めていた
・佐治は「昔の自分に戻るために、簡単に落ちない女が欲しい」と言っていた
・自分を監視してもらうため、最賀に同居してもらっていた
・佐治からも求愛されたが、純潔は守った
・夫に佐治への気持ちを正直に告白しても、佐治の出入りを許していた
・事件当夜八時半頃、家には喬子、夫、新入り女中のお竹の3人だけだった
・夫は寝室、竹は台所、喬子は電話をかけようとしていたところで原因不明の停電
・暗闇の中で竹は蝋燭探し、喬子の電話はなかなか通じずにイラついていたところで銃声
・電気の引き込み線の蓋がなぜか開いていたが、何とか女二人でスイッチを入れ直す
・明るくなってみると夫は殺害されていて、中庭に面した窓は開いていた
・ピストルは夫の枕元の抽斗ひきだしにいつもあったが、中庭の山茶花さざんかの根本に棄てられていた
・最賀は3日ほど旅行中
・佐治は、喬子と密会するために上野公園の科学博物館前のベンチにひとりでいたと証言しているが喬子は待ち合わせた事実はないと主張


〇 自動交換式電話:

かつては電話局に電話し、そこで待機する交換手によって手作業で電話回線を繋いでいました。
しかし1923年の関東大震災での壊滅的な打撃により、交換手を介さない自動交換機の導入が進められ、1926年に東京都京橋電話局が初の自動交換局として開局しました。

この作品は1936年に発表されているので、交換手による手動と自動交換機とが混在していた時代だと推測されます。
作中で兄はこのように言います。

その電話は自動交換式だ。文字盤がついていて、文字盤を読んで廻さねばならない。交換手に電話番号を告げるわけに行かない。

大下宇陀児『偽悪病患者』より

「廻さねば」とあるので、ダイヤル式だと分かりますね。
以前は交換手に電話するのが当たり前だったけれど、大都市を中心にどんどん自動交換式に切り替わっていた時代です。

以前は交換手に相手先電話番号を伝えるだけで良かったので暗闇でも問題はありませんでしたが、自動交換式では自分でダイヤルを回さなければいけないため、暗闇ではできないだろうというのが兄の意見です。


【あとがき】

犯人はまさかの妹でした😱
何となくそう思ってた、と言う方もいるのかな。

佐治さん

あれだけ佐治さんが怪しいような口ぶりしてたのに?!
タイトル『偽悪病患者』の回収は??!
と、思ったのは私だけではないハズ!

で、思い出したのが作品の初めの方に出て来たKという兄のご学友です。
佐治さんの悪だくみを鵜呑みにして実際に行動に移し、ヘマをして捕まった人です。

もしかして、佐治さんが相変わらず自分の想像上の悪だくみを嬉々として漆戸さんに語っていて、それを聞いた妹が実行してしまったとか?
佐治さんはやっぱり変わらず偽悪病患者で、周囲の心の弱い人間が勝手にそそのかされて悪事に手を染めていく、みたいな話だったりする???(゚Д゚;)マサカ!
そんで佐治さんは、いつかの最高の悪事を夢見るだけで。

なんて考えると、佐治さん、罪作りな男です。。

喬子について

朗読するにあたって、妹は本当に悩みました。

兄と頻繁に文通しているところや、兄と仲の良い友人と結婚したことから、喬子は兄やその友人たちから常に守られ、とても可愛がられてきたんだろうと思います。
そして恐らくは兄に似て聡明な女性なのでしょう。

手紙の中で彼女は自分のことを「喬子」と名前で呼びます。
AIさんに尋ねてみますと、親族に対してなら、当時は既婚女性でも当時の書簡では結構見かける呼称なのだそうです。
ただしそこにはやはり甘えが見えます。

ということで。。
兄のように聡明で、
周囲から可愛がられて育ち、
それに甘え、
多くが自分の思い通りにいっていた、
精神的には幼い女性、として演じてみました。

あまりに分かりやすいと兄にバレてしまいますので、泣きの演技は真に迫るように。
でも自分の筋道通りに兄を導きたくて仕方ないので、切り替えは早く。
佐治さんに関しては実際はあまり興味がないので、やや淡泊めに。
最賀さんとの関係は一番隠したいはずなので、最賀さんに関する話はやや早口に。
自分ではうまく胡麻化しているつもりで、陰でほくそ笑んでいるような。

でも兄はその違和感にことごとく気づきます。
やばいやばい、もうちょっとお涙頂戴しとかなきゃ!みたいな感じで。

難しかったけど楽しかったです( *´艸`)ムフ

変革派・大下宇陀児

大下宇陀児さんは、江戸川乱歩と同時代を生きた探偵小説家です。
ですが本格派でなく、『変革派』と呼ばれてます。

これは、巧妙なトリックの独創性や謎解きの面白さを追求する本格派に対して、宇陀児さんはトリックは二の次で、それらを用いた人間像を描くことに注力したためです。

なので私も、この喬子という人間像を理解することに努めました。

それでいくと実は江戸川乱歩も変革派に分類されているんですが、乱歩さん自身はそれを不満に思ってたそうです( *´艸`)ププ


皆さまはこの作品、どう読んだでしょうか?


次回は別の作品を読みます。
短編かな、続き物かな、どうしようかな。。
よろしければまたお付き合いください✨


良かったらご意見、ご感想をお願いします。
他にも、リクエスト・おススメの作品などがありましたら、ぜひ教えてください😆

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