🗒️ 頼もしい甘ったれ
8歳の息子と、少し遠出をした。
私は今朝少し体調が悪かったのだけど、約束していたし
このくらいは大丈夫、と思って出かけた。
無事に目的を果たして、ちょっと寄り道していこうか、と
近くの商業施設を目指そうとしたとき、嫌な感触がぞわりと伝った。
あ……やばい。
そう、予定外の生理が来てしまったのだった。
どうしようかと思ったけど、変に隠すより、
直接言った方が手っ取り早い。
ごめん、ちょっとおかあさん、急に生理が来ちゃって
ナプキン忘れたからどっかで買いたい。
コンビニあったら寄っていい?
恥も身も蓋もなく、そのまんま言った。
オブラートに包めない、婉曲できない、ザ・ダメな大人。
「いいよ〜」
まぁ、普段から生理については伝えてあるので、そんなもんか。
「あすこにコンビニあるんじゃない?」
商業ビルの中にめざとくコンビニを見つけて、たっと走っていく。
後ろから腹痛を引きずってのろのろと店内に入ると、
彼は棚を探して、事務用品の前で難しい顔をしていた。
あぁ、ナプキンを探してくれていたんだね。
食べ物じゃない棚は見つけられたけど、
事務用品と衛生用品の棚の見分けはつかなかった感じか。
ありがとう、こっちにあるよ、大丈夫。
「あー、そっちか、あって良かった!
じゃ、おかあさんちょっと買っててね」
どこか行ってしまった。
お菓子の棚でも見に行ったかな。
まぁ今日は特別だから、後でなんか買ってあげるか。
レジで会計を済ませたら、ビルの中を息子が走ってきた。
「こっち!」
いきなり手を引かれる。
なに、今それどころじゃないんだけど。てかどこに行ってたの。
「こっちトイレあった!」
え? 今トイレ探してくれてたの?
「コンビニの中に無かったからさ、だってすぐ行きたいでしょ?」
何当たり前のこと言ってんの? くらいの勢いで答えると
「はい、その荷物ちょうだい。ここで待ってる」
私の手荷物をさっと引き取って、トイレ前の壁に寄った。
ちょっと、驚きで母は胸がいっぱいですよ……。
トイレの個室でナプキンを付けながら、
!と?が脳内を渦巻いている。
え、いつのまに?
誰がそんな知識を…って私か。照🫣
いやしかしそんなモテムーブ教えてない……自分で理解して考えたの?
どゆこと!?
心を落ち着けてから、トイレから出て、
改めて聞いてみた。
ありがとう……すごく助かった。
でもよくトイレ探してくれたね!?
「え、だって買ったやつ付けないと大変でしょ?
トイレ行かないと付けられないでしょ?」
そうだけど、こんなこと初めてだったのに
すごく早く助けてくれたから、びっくりしちゃって。
ほんとありがとう。
「おなか痛くない? クスリ飲むならお茶いる?」
大丈夫、しんどくなったら早めに言うね。
今は平気だから、ゆっくり寄り道してこ。
急には走れないから、飛び出したり危ないことはしないでね。
「しないよぉー! ふらふらしたら、ぼくにつかまっていいからね」
若干、心配の仕方がお節介オカン風なのは、私のせいだな。
知ってること、繋ぎ合わせて、考えてくれたんだ。
毎月私がめまいを起こしやすくなるのも、覚えてるんだ。
すごいなぁ。
生理中の情緒もあって、なんだかジーンとしてしまった。
わーぉ。泣きそう。なにこれ。
知らんうちにぐんぐん大きくなるんだなぁ。
駄々をこねることもなく、ショッピングを楽しんで、
その日のおでかけは、穏やかに過ぎた。
「今日、たのしかったねぇ!」
布団の中から、ニコニコの顔で言う。
たのしかったね! 行けて良かった。
そしてあんな素敵な振る舞いを見られて良かった!
「ねぇ、おかあさん」
んー?
「ギューして。ぼくねるまで、ここにいて、手つないでてぇ」
まだ、甘ったれなのにね!
まだまだ甘ったれで、いいのにね。

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